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魔法の家の落ちこぼれが、聖騎士叙勲を蹴ってまで、奇蹟を以て破滅の運命から誰かを救える魔法使いになろうとする話  作者: 鯣 肴
第二章 第四節 奇運奇縁の帳 一日目

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デート・クロス・デート・クローズド・サークル・レイク ~宙のコロッセウス~ Ⅶ

青藍せいらんちゃん、すっごぉい! だけど~、私も凄いよ~! ふふぅん! 残ぁん念。石化エンド!」


 ビキッ、カチンコチン!


 押し寄せ続ける汚泥をしのぐ、青紫の障壁の先。二体は、一瞬にして石化した。


「隠したかった訳じゃないんだけどぉ、やくいからね~」


 シンシャはそう、目を閉じながら、青藍せいらんに、微笑んだ。


 スタッ。


 少年が空を蹴り、方向転換して、着地してきた。


「こんな明るい石眼持ち、見たことがな…―。成程。巧いな」


 心底そう、少年が疲れた反応をする。


 すると、不意に現れた、無詠唱かつ、不可視の爆発の魔法。


「なっ……!」


 シンシャが驚きの表情を浮かべ、その名の通りの辰砂シンシャの色に濃く濃く染まった瞳を見開いてしまい、しまった、と目をつぶり逸らそうとするも、視界の端に映った少年も、少年の彼女も、石化の兆しがまるで無いことに安堵あんどした。それどころか、爆発は、起こりで、無効化されていた。


 そう。斬られて、いた。少年のその剣によって。


 少年は、敵に少しばかり感心していた。つまりそれは、敵のそれに、シンシャより、数瞬早く、気付いていた、ということ。


「やらせねぇぜぇ! ほらぁあああ! シンシャあああああ! 気ぃ抜くな!」


 そう、ゲリィが、しっかり仕事をしていた。不可視の壁で、四方ではなく、油断なく六方を囲って、敵の再開の初動を封じていた。


「無駄だぜ。ただ閉じ込めたんじゃあなくて、封印魔法だからな、それ。破りたければ膂力りょりょくが要るぜぇぇ! いいのかぁあああ? そのままでよぉぉおおお! 魔力が切れれば、身代わりもくそも無ぇよなぁあああああああ!」


 立っているのは、二体。変わら―…否! 今度は、額の宝石が黒、茶色。


(一見何だかの規則性があるように見えるが……定かではない……。そもそも、色に応じた属性の魔法、のみを使えるという訳でも無さそうだ。色自体、関係無いかもしれない。そもそも、皆さんが知っているこいつらが、こいつらの包み隠されていない状態の正体とも限らない。こいつらが皆さんのデータを持っているか……。聞くだけの時間も無い……。順序も出鱈目でたらめ。理屈も穴だらけ。酷いものだ。この場に立つまで、怒涛どとうの展開。予想外。これはいよいよ、思索は一旦止めるか? 止めるべきか?)


「おっ! そっか。あんがとなぁ!」


 その、子供っぽく、軽くふざけた、男というより、男の子な声に反応した。四人。そう。相手を知っている筈の四人。つまり!


 ガコンッ! ピキッ、ペキッ、ギリリリリリ、ガシャァアアンンンンン!


 結界と、固まった泥壁。それらがまとめて、罅割ひびわれてゆく。溢れ、漏れ出す、色の無い魔力。既に中は、見えない。透明、しかし、異様なほど濃く、満たし、あふれ、こぼれ、この抑え込みが効かなくなるのはもう時間の問題。


「まじかぁ……」


 ゲリィは、額にてのひらを当て、項垂れた。


りないわねぇ……。あんたのそれ、別に強くも何とも無いじゃない。あんたがやたら好きなだけで。しゃあない! 彼女たるわたしが、いっつも通り、尻ぬぐいしたげるわ~」


 シンシャが、元のような輝きある色に瞳を戻し、取ってつけたような恋人ムーブをかます。


(え? 悪ふざけか? いやしかし……)


 少年はその唐突さに困惑するが、答え合わせの時を待つ必要は無かった。


「「いちゃいちゃするなあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"――」」


 声が、二つ。少年と、そして、陰気臭い、発音の微妙にはっきりしない、どもり気味の、濁った少女の声。


「もしかして……子供……か……?」


 少年がそう思わず、零す。


「「おいおいそれは、」」


「あんちゃんたちもだろぉぉ?」

「にいちゃんたちもだろう?」

「ライト君たちもよね。今更よ?」

青藍せいらんちゃんたちもでしょ~」


「先ほどのは誘いか? シンシャさん」


「まあね~。前々から当たりはつけてたし。正体隠してるって。でもさ~、本性丸出し。笑っちゃうよねぇ~。だけど、まさか、子供だとは思わなかったけど~?」


「いいや、本当に子供、とは限らないだろう。肉体が幼いまま、若しくは、成長が歪み止まっている可能性だって拭えないだろう? あおりには弱そうなのは確かだが」

 

「残酷な真実を突き付けるのはやめたげましょ~」


「その辺でやめとけって……」


「あんただって~、私がいなかったら、どっちかってったら、あっち側でしょうが!」


「ぐぬぬ……」


「「や"め"ろ"っ"て"ぇぇぇ、い"っ"て"ん"だろ"ぉ"が"ぁ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"――」」


 魔力が、柱のように、たちのぼった。

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他にも色々描いてます。
長編から連載中のものを1つ、
完結済のものを2つピックアップしましたので、
作風合いそうならどうぞ。

【連載中】綺眼少女コレクトル ~左目を潰され、魔物の眼を嵌められて魔法が使えるようになったエルフの少女が成り上がる話~

【完結済】"せいすい"って、なあに?

【完結済】てさぐりあるき
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