デート・クロス・デート・クローズド・サークル・レイク ~宙のコロッセウス~ Ⅰ
「ライト……どうしてこんなことになってるの……? ……。わたしの……せいだけど……」
「君のせいじゃないし、私のせいでもない。誰のせいでもない。ただの巡りあわせに過ぎない……。ガリアス殿に、ゲリィ殿。そして、御二方はそれぞれのお相手と見受けられるが? 私はウィル・オ・ライトという。どうか、宜しく、頼む……」
少年を、あんちゃんと呼んでいたのがガリアス。にいちゃんと呼んでいたのがゲリィ。
そんな二人が、少年の向こう側、少年から見てそれぞれ左側と右側の正面に座っている。少年の右隣には青藍が座っており、少年の左側に何故か、ガリアスの連れが。そして、青藍の右側に何故か、ゲリィの連れが。
そこは、北部エリア中央。アトラクション・宙のコロッセウス。その控室の一室であり、ここにいる六人チームに割り当てられた、円卓を備えた一室である。
黄色い照明が、埃っぽい、石の部屋を明るく照らす。
円卓以外には、数セットの簡易なベッドや、火元と水元を備えた意外と充実した調理設備があるくらい。
「別にいいのよ。報酬は用意されている訳だし。負けたとしても十分だし。そゆことで。わたしはシューイット。ただのシューイットよ。宜しくね」
「こちらこそ宜しく頼む」
と、少年は、差し出された手を握った。
「わたしは不満かなぁ。だから、貸し1で。ここって結構トラブルの種が蒔かれてるから、わたしらに何かあったら、ボクの力貸してくれないかな? 呑んでくれるならお姉さんはそれで満足するよ?」
「言われなくとも、恩は返すつもりだ。何も起こらなかったら、その時はその時で、声を掛けてくれるといい。渡せるものを渡そうと思う。今のうちに幾つか候補を準備しておく」
「うんうん。気が回るねぇ。わたしはシンシャ。赫のシンシャ。じゃ、改めてライト君。宜しく~」
「お前ら随分、素直に食い下がったな。絶対もっと何か得ようとゴネると思ってたのに……」
「何よガリアス! 水差さないでよ!」
「酷くね……?」
「俺は信じてたぜぇ。シューイットのことも、シンシャのことも」
「うわ、お前ぇズりぃぞ! ゲリィ!」
「何はともあれ、皆さん、納得して頂いた、ということでいいんでしょうか……?」
立ち上がり、心底申し訳なさそうに、そう言って、頭を深く下げたのは、青藍。
何故か、その衣装は、黒のフリフリのレースのゴスロリチックなものであり、連ねられた、十字と鉄檻の一部のような意匠の髪留めは、何故か、頭を一周して、冠のようになっている。そして、肩から下は袖が無く露出していて、それでいて、手先には、黒い手袋。何故か、指先は貫通している。そして、靴は踵が高い、黒のグラディエーターサンダル。スカートは膝より上と、彼女の最初のそれよりもだいぶ短く、それ故に、ガーターベルトの紐が見えている。しかし、その色は、黒と、少年に反射で見えてしまったときのとは別である。
「うおっ! 青藍! 不味い不味い! 座るんだ!」
一瞬固まって、動き出した少年に、すぐさま、座らされる青藍。
「後ろに誰もいないから問題無いでしょ? ライト。見えるとしたら、貴方だけよ?」
生暖かい視線が四人から向けられる。
少年はバツが悪そうに、
「申し訳ない。取り乱した……」
と、謝罪し、座る。
「ちょっとライトに進行を任せるのが怖くなってきたのだけれど……」
「私としては、君に任せる方が怖…―」
「なによ……」
「ごめん……でも、私がやるよ、青藍」
「できるの……?」
「ああ。やってみせるよ。昔取った杵柄だ」
「あぁ、ゴホンゴホンッ!」
「っ!」
「っ! ……」
「二人の世界に入っている暇は無いでしょう? 立てないと、戦略」
「だな」
「俺としては時が来るまでゆっくりのんびりしてる方がいいと思うが。付け焼き刃なんてもんは無い方がましだ」
「ゲリィ」
「はい」