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魔法の家の落ちこぼれが、聖騎士叙勲を蹴ってまで、奇蹟を以て破滅の運命から誰かを救える魔法使いになろうとする話  作者: 鯣 肴
第二章 第三節 異質な世界の普通の日常

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霊樹様お焚き上げ Ⅱ

「ええと。確か、君の名は。沙羅サラ、というのだったかな?」


 学園長が、薄赤髪の少女に尋ねると、こくん、と頷いた。


「君は何か憶えているのかな?」


 薄赤髪の少女はぶんぶん、と頭を横に振った。


「ふぅ。消えたようだね。君の役割は。成程成程。大体わかったよ。君に課されたのは、善き友人としての立場だろう。今は、ね。将来は分からない。けれども、きっと、自由度は高いし、君の意思にも大きく左右されるだろう。つまり、君は自由の身だ。おめでとう」


 パチパチパチと、学園長はそう、拍手しながら、一人で勝手に合点している様子。


 それを見て戸惑いを浮かべる薄赤髪の少女に、学園長は優しく言った。


「一先ずは、わたしが君の面倒を見てあげることとしよう。代わりに。あの子らと仲良くやって欲しい」


 と、少年と青藍せいらんの二人を指差す。


 このひんやりした場所で、少年へと、自身のローブを取って、貸そうとして、それを遠慮して、で、どうぞ、いいや、どうぞ、の無限押し問答を繰り返す、青藍せいらん


「やっぱり、恋人ですよねぇ」


 と、おっとりとした声でいながら、目を輝かせながら、年頃の女の子らしい気分の盛り上がり方をさせる沙羅に、


「残念ながら、少年の側の情緒生成が間に合っていないんだ。まっ、時間の問題だろうがね」


 そう、微笑ましそうに説明した。






「少年。青藍せいらんと一緒に、先に帰っておいておくれ。あと、私を待つ客がいるかもしれないが、相手をする必要はないよ。もし食らいついてくるようであれば、こう伝えてくれるといい。『契約は破らないよ。約束とは違うのだから。少しくらい忍耐を覚えないと、願いが叶ったとて、そのうち愛想をつかされるよ』と」


 何か意味深だし、問いただしたくもあった少年だが、青藍せいらんに袖引かれたので、素直に帰っていった。


 そんな二人の姿が見えなくなるまで学園長が手を振って。そして。


「さて。誤魔化してあげたよ。それでだけれども。本当に厄介な役割を任されたね。知識も力も血肉も与えてやるから、()()()()()()、だなんてねぇ」


「まあ。破ろうと思えば多分破れるでしょうし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」


「まあ、彼は良い男であるには違いないからねぇ。弟子の執着に勝てる自信があるなら本気でやってみるといいよ。そうでないなら、悪いことはいわないから、やめておきたまえ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()? ま、一応忠告はした訳だけれども、好きにすればいいさ。結局は君次第なのだからね」


 と、微笑ましく学園長は好き放題言う。


「どうしようか考えるところから。まず、そこから始めるつもりです」


 迷いも言いよどみもなく、沙羅サラはそう言ってのけた。憂いの無い、晴れやかな表情で。


(きっと、それくらいの速度が、丁度いい)


 もう、憂いを抱えて、怯える必要なんてどこにもない。彼女自身を縛るものは、もはや、無いも同然なのだから。

霊樹様お焚き上げ FINISH

NEXT → 死なない世界の修行の仕方

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他にも色々描いてます。
長編から連載中のものを1つ、
完結済のものを2つピックアップしましたので、
作風合いそうならどうぞ。

【連載中】綺眼少女コレクトル ~左目を潰され、魔物の眼を嵌められて魔法が使えるようになったエルフの少女が成り上がる話~

【完結済】"せいすい"って、なあに?

【完結済】てさぐりあるき
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