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夜明けの食糧調達


 朝、横転した電車の中で目が覚める。

 両端にある扉は潰れていて開かず、出入り口は上にしかない。

 ゾンビか魔物が上から落ちて来てもわかるように着地点に硝子の破片を巻いておいた。

 なにかが進入すれば音でわかる。

 それでもあまりよくは眠れなかったけど。


「夢じゃなかったか」


 目が覚めたらベッドの上におて、いつもの日常が始まる。

 そんなことを期待していたけど、そうはならなかった。


「よっ」


 つり革や座席を足場に上の出入り口に手を掛ける。


「濡れてる……」


 上にあがって見渡した街は相変わらず酷い有様だ。

 でも幸いなことに雨が降ったようで、火の手は消えていた。


「さて、どうするか……」


 周囲を警戒しつつ今後のことを考える。

 生きるために必要なことを。


「とりあえず……」


 腹の虫がなる。


「飯だな」


 電車から降りて街へと繰り出した。


§


「たしかこっちにコンビニが……あった」


 駆け寄ると中から音がし、ひっそりと中の様子を伺う。

 棚に隠れてここからじゃ見えないが、何かが動いているのは確かだ。

 身を乗り出して見て見ると、化け物が弁当を漁っているのが見えた。


「くそっ、あいつ」


 あの様子だと棚にあるのは全滅だ。

 パンはどうだ? インスタント食品は?

 色んなことを考えるが、とりあえず化け物をどうにかしないと。


「出て行くのを待つか? いや」


 これだけ食い物があるんだ。

 出て行くころには食い尽くされてる。


「やるしかないか」


 開きっぱなしの自動ドアからひっそりと侵入し、死角を通って魔物に近づく。

 幸い、数は一匹だけ。弁当に夢中でまだ気付かれてない。

 音を立てないように慎重に近づき、そして両手に稲妻を纏わせた。


「喰らえ」


 両手で毛むくじゃらな背中を掴んで感電させる。

 激しく痙攣した化け物は声にもならない声を上げて絶命した。


「はぁ……上手くいった」


 額を流れる汗を拭い、一息を付く。


「それじゃあ、えーっと」


 棚に目を向けると、高い位置にあるおにぎりは無事なようだった。


「まず、こいつからだな」


 視線を感電死した死体に戻し、両足を持って外へと運ぶ。

 それから店内に戻ってかごを取り目に付いた商品を手に取った。


「スナック菓子、ゼリー、インスタント食品。あぁ、いや、待った」


 かごに入れた商品の賞味期限を確認する。


「賞味期限の短い奴からじゃないと」


 おにぎり、パン、乳製品。


「アイスは……溶けてるな」


 電気が来てないから凍った状態を維持できない。


「とりあえず、これくらいか?」


 賞味期限の短いものを中心に、インスタント食品も少々。

 あとは飲み物だ。


「ジュースにお茶……いや、ミネラルウォーターだな」


 二リットルのミネラルを幾つか棚から取り出してレジへ。

 宿泊施設で使わなかった五千円札を置き、裏に回ってレジ袋に商品を詰める。


「おも」


 両手にレジ袋を携えて、コンビニを後にした。


§


 おにぎりの包装を破り、かぶり付く。

 口の中に酸っぱい味が広がった。


「おかかがよかったなぁ」


 生憎、売り切れていた。

 あるいは化け物が喰ったのかも。


「これからどうなるんだろ」


 目の前に広がる壊れた街並みは二度と元に戻らないような気がしてくる。

 この雑居ビルもいつ倒壊するかわからないくらい亀裂だらけだ。

 硝子も割れて風が頬を撫でてくる。

 窓の外から視線をうちへと向けると、乾いた血の跡が目立つ。

 ここでも化け物が暴れ回ったみたいで、あらゆるものが壊れていた。

 相変わらず、死体はない。


「これがなくなったらまた取りに行こう。それでしばらく食いつなげるはず」


 コンビニに商品がなくなったら?

 その先のことは考えないことにした。


「クラスの連中、どうしてるかなぁ。先生も」


 上手く逃げ切れただろうか?

 すくなくとも一人はもう手遅れだけど。


「はぁ……」


 深いため息をついていると無傷のテレビがあるのに気付く。

 最後の一口を口の中に放り投げ、椅子から立ち上がった。


「いけるか?」


 テレビに手をやり、低出力の稲妻を流す。

 すると暗い画面に光が灯り、砂嵐が映し出された。


「ダメか。そうだよな。携帯も圏外だし」


 携帯端末を取り出してため息をつく。


「未だに何が起こってるのか、なにもわからない」


 わかることと言えば、日常がひっくり返ったことくらい。


「俺もいつこうなるか……」


 足下にある血の跡を見て危機感が募る。


「この力をもっと使いこなせるようにならないと」


 右手にだけ稲妻を纏い、携帯端末を充電した。

 何がどこまで出来るのか知ろう。

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