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次の目標へ


 新しく咲希が仲間に加わり、拠点は賑やかになった。

 陰湿な空気を吹き飛ばすようなからっとした明るい性格は、そこにいるだけで雰囲気をよくしてくれる。


「ほら、ミカン。お手!」

「わん!」

「あぁ、もう。おすわりじゃなくてー!」


 現在はミカンに芸を覚えさようと奮闘中だ。

 あまり上手くはいってない様子だけど。


「あっ、どこいくんだよー」


 咲希の相手に飽きたのかミカンは凜々の側に移動して甘えた声を出す。


「よっと。よしよし」


 抱きかかえられたミカンは、目を薄めて気持ちよさそうにしていた。


「ミカンのお気に入りは凜々かー」

「なついてくれてるみたい」

「いいなー」


 そう言いつつ凜々の隣りに咲希は座り、ミカンに構う。

 酷く思い詰めていた凜々だったけど、ここ数日は元の調子に戻りつつある。

 アニマルセラピーという奴なのか、ミカンの存在がここに来て功を奏していた。


「あ、そうだ。イヅナ―! 朝ご飯なにー?」

「味噌汁と焼き魚ー」


 そう返事をしつつ水で戻したワカメを切る。

 まな板の感触を包丁越しに感じた。


§


 鉄パイプを握り締め、繰り出される一振りを何とか防ぐ。


「その調子!」


 続けざまに打ち込まれる鉄パイプになんとか反応して身を守る。


「速度を上げるぞ!」


 宣言通り、攻撃が速くなり対応に追われた。

 そのうち処理が追いつかずに脇腹に良いのをくらう。


「ぐえぇ」

「あ、悪い! イヅナ。大丈夫か?」

「あ、あぁ、なんとかな……」


 脇腹を押さえつつ、鉄パイプを杖代わりにする。

 相手をしていた咲希は申し訳なさそうな表情をしていた。


「ちょっとびっくりしただけだ。毛布も巻いてあるし、平気平気」


 咲希の持つ鉄パイプは攻撃力が落とされている。

 まぁ、それでも痛みがじんわり残るくらいには強い殴打になるが。


「そっか。でも、無理するなよ? 武術は一日で習得できないからな」

「積み重ねが大事ってことだろ? わかってる」


 氷の魔物の一件があって、咲希に戦い方の指南をしてもらうことにした。

 咲希は幾つかの武術を習得しているようで、いまは基礎的なことを習っている。

 ボコボコにされているが得物の振るい方に慣れてきた。


「んー、でも気になることがあってさ」

「気になること?」

「ほら、氷の魔物と戦った時だよ。イヅナ、素人とは思えないような動きをしてたんだよなぁ」

「あぁ、あれか」


 繰り出される氷の爪をすべて躱した、あの時のこと。


「でも、今はてんでダメダメだし」

「……そんなに?」

「素人丸出し」

「そりゃ、素人だし」


 殴り合いの喧嘩もしたことがない。


「あれが出来れば幾つか段階をすっ飛ばせるんだけど」

「んー……」


 あの時はとにかく必死で、目に見えるすべてに反応できていた。

 目で見て、動き、回避する。

 ただそれだけを意識して実行した。

 普段と違っていたのは稲妻を纏っていたことくらい。


「……咲希。もう一本頼む」

「いいぜ」


 咲希が毛布つきの鉄パイプを構える。

 それもそれに合わせて構えて稲妻を纏う。

 瞬間、繰り出された一撃を弾く。


「お?」


 繰り出される攻撃に反応し、目にした順に潰す。


「へぇ。速くするぞ!」


 目に見えて、攻撃の速度が上がる。

 先ほどの俺ならもう対応しきれないほどだ。

 それでも今の俺はそれに反応し、すべてを叩き落とす。


「わおっ! 凄いじゃないか!」


 ある程度打ち合ってから、稲妻を引っ込める。

 あの時と同じ感覚を掴んだ。


「まるで別人の動きだったぞ! なんて言うか、機敏でさ。どういう理屈なんだ?」

「さぁ? 俺にもよくわからない。稲妻で電気信号の速度が上がってるとか?」


 咲希が小首を傾げる。


「反応速度が上がってるってこと」

「あー」

「二人とも。ご飯が出来ましたよー」


 迷路の角からひょっこり凜々が顔を見せる。


「あぁ、いま行く」


 サバゲーの練習場である迷路を抜けて、テーブルについた。


§


「イヅナが接近戦もいけるってわかったことだし、まともな武器が必要だよ」


 昼食後、皿を洗いつつ咲希は言う。


「まともな武器って言えば……金属バットとかか? あと包丁」

「そんなのダメダメ。やっぱり武器と言えば剣か刀でしょ。あたしはナイフだけど」

「剣か刀……日本のどこを探せば見付かるんだ? それ」


 戦国時代じゃあるまいし。

 ゲームみたいに畑から取れそうなくらい大量にあるわけでもない。

 あるとすれば博物館か?


「在処を知ってるぞ、あたし」

「マジ?」

「あ、もしかして刀匠の?」

「そうそう! 凜々に百点満点!」

「刀匠?」

「あぁ。結構、名の知れた人でさー。このナイフも特注で作ってもらったんだよねー」


 ナイフが空中でくるくる回る。


「その人の工房がこの近くにあるからさ。行けば剣や刀の一振りくらい見付かるよ」

「なるほど……」


 刀匠の工房か。

 考えたこともなかった。

 というか、この街に刀鍛冶の職人がいたんだ。

 こういうことでもない限り一生知らずにいただろうな。


「行くなら案内するぜ。あたしも砥石が欲しいし」

「そうだな。じゃあ、明日の朝に出発でどうだ? 二人とも」

「大丈夫です」

「ガッテン! 凜々、準備しようぜ」

「うん。行こっか」


 皿洗いを終えて、俺たちは明日に備えて準備をする。

 凜々の友達捜しは一旦休み、次の目標は武器探しだ。


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