荒れ果てた秋
お久しゅうございます。
書いて投稿しようとして、秋の小説だからやっぱり秋に出そう!と思って忘れていました←
羊雲が浮かぶ秋空の下。
例年ならそろそろ収穫の時期で、畑は黄金色になっているはずである。
しかし、昨年から続く蝗害の影響で、今年はまず種籾からして少なく、辛うじて育っていた稲穂も食い荒らされた。
一面黒い土が広がる畑を前に殆どの村民が絶望する中、一人黙々と鍬で土を掘り返す青年がいた。
「ちょっと、なにやってるのよ!」
話を聞きつけた青年の幼馴染が近寄って聞くが、青年は答えない。
「いい、今更耕したって無駄なの! 全部飛蝗が食べちゃうんだから。分かったらさっさと......って、なにやってるの!?」
途中で鍬を投げ捨て、手で土を掘り返し始めた青年に、幼馴染は目を剥いた。
暫く青年を間近で見ていた彼女は、その動きに何かを探しているのだと閃いた。
手伝うわ、と傍に座り込んで土に手を伸ばす。しかしその手が土に触れる直前、青年ががしっと彼女の手首を掴んだ。
「手を出さないで。汚れるし、これは、俺が見つけないといけないんだ」
いつになく凛とした青年の言葉に、幼馴染は頬を赤らめた。心なしか、掴まれた手首が熱い。掴まれた時に付いた黒土を払うように手首を摩っていると、あった! と軽やかな声がした。見れば、青年が蜂蜜を固めたような石を摘んで天に翳している。
「何、それ?」
「これは琥珀石だよ。その中でもこれは珍しくて、ほら、花が入っているのが見えるかい? これは今の花ではなくて、遠い遠い昔に咲いていたものが、そのまま閉じ込められているんだ。素敵だろう?」
先刻とは打って変わってへにゃりとした笑みを浮かべる青年に、幼馴染はそうね、と柔らかに笑み返す。
「でも、どうしてこんなところにこの石が?」
「あぁ、それは......君に結婚を申し込もうと思ったら、村長にこの畑に埋めたから掘り出してこいって言われたんだ。見つけたら、結婚を許してやるってね」
無事見つけられて良かったよ、と青年が穏やかに微笑む一方で、彼女は別の意味で赤面していた。
「お父様ったら、なんて無理難題を......!」
ふるふると震える彼女の拳を、青年はそっと包み込んだ。
「過酷なこんな時期に、と思うかもしれない。けれど、こんな時期だからこそ、夫婦として共に苦難を乗り越えていきたいんだ。俺と、結婚してもらえませんか」
「......はい」
この後二人が村長をどう説得したのか。それはまた別のお話。
タグの「ラブコメの成り損ない」の解説:ランダムにお題生成+ジャンル指定 の形式で出るタイプのものを利用→そもそもコメディ書けないのに過酷な世界でラブコメってどうやるの→なんとか書いたけどコメディどこいった