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第3話 こうして、1日が終わりました。

2821/7/24 後書きを大きく修正。

視点:ノワール


サッサッ

 先生に怒られるギリギリのスピードでスプーンを進めます。正直、学年代表のセルシウスがいなければ怒られていたかもしれません。それはそれとして食堂部の生徒達の料理は本日も美味なり。部員も夏休みなのでボリュームは少なめですが今日に限っては嬉しい限りです。


「「ごちそうさまでした」」


 あら、ごちそうさまのタイミングが被りました。ラッキーです。この『ごちそうさま』という文化は勇者様から伝えられた物です。このようなものは他にも多くあります。


「ノワールさん」


 立ち上がると話しかけられました。生物部のアティラ=アメジスト先輩です。長い紫の髪が本日も美しいです。


「アティラ様ご機嫌よう。お早い帰りですね」


 アティラ先輩は夏休みの間は実家のアメジスト侯爵家に帰っていたはずです。


「実験用のマウスの様子を見に来たの。そしたらノワールさんが珍しくお昼に遅刻したからどうしたのかなと」


「ああ、今朝に猫を拾ってしまいまして、その世話をして遅れてしまいました」


 シャーちゃんによると、元賢者であるとこは内緒にして欲しいそうです。


「猫?いいわね。こんど見せていただこうかしら」


「ええ、お待ちしております」


 平民の私ですが、何年も貴族に混じっていると社交辞令も慣れてきました。もちろん部活ではこんなやり取りしませんよ?


−少し雑談−


「それではアティラ様、お先に失礼します」


「ええ。さようなら」



 セルシウスは食堂のドアの近くで待ってくれていました。一緒に部屋まで行きます。私は足が遅いので、というよりセルシウスの足が速いので、セルシウスはいつも私に合わせてくれます。


「ただいま〜。あれ?シャーちゃんは?」


「どこへ行ったのでしょうか」


 部屋に帰るとシャーちゃんが消えていました。まあそのうち帰ってくるでしょう。


「んじゃ二人で勉強するか」


 自慢になりますが私は特待生だけあって座学は学年で1,2位を争い、セルシウスも上位に入ります。しかしそれを維持するのが簡単かと言えばそうでもありません。なので私達は、よくこうして勉強をしています。もちろん内容は違ったりしますが。


 私は魔法言語の勉強をしています。魔法言語がある程度使えると、既存の魔法をその場に応じてアレンジすることができます。さらに使えるとその場に応じて最適な魔法を作ることさえできます。


 セルシウスは物理の勉強をしているようです。クリスタル女学園では、取っている授業によっては他の分野の授業も受けます。例えば彼女の扱う氷魔法−液体(水)とエネルギー(熱量)の操作−は物理も受けます。同じ理由で私も生物を受けています。


間もなく

『俺だ。開けてくれ』


 シャーちゃんが帰ってきたのでドアを開けてあげました。少しショボンとしています。


「どこへ行っていたのですか?」


『ちょっと図書館に行こうとしたんだが、猫だから入れなかった』


 なるほど。図書館に猫が入ろうとすれば止められますわな。


「でしたら、私が今度借りてきます」


 図書館では1人10冊を1週間(8日間)借りられます。絵本や小説から専門書まであります。一部の物は貸出禁止ですが。


『かたじけない。風魔法で毛は落とさないようにするからそこは安心してくれ』


 それは助かります。


「で、なんで落ち込んでいるんだ?」


 セルシウスも勉強の手を止めて話しかけてきました。


『…アクシスが、ボケてた』


 アクシスさんは名目上はこの学園の理事長で、戸籍上は賢者クラインの孫に当たります。御年100歳を超えておられるので、生きているだけでも奇跡でしょう。


「あー、まあ生きていただけいいじゃないか」


『それもそうだけどな』


 子孫がボケていたなんて普通は経験しない事なので何も言えません。


「そうです。ポットさんには正体がバレなかったのですか?」


 彼女は猫の獣人ですし、学園とその周辺の猫を掌握しているとの噂もあります。


『もちろん1瞬でバレたよ。んで学園に居たいならお得意の闇魔法を教えてってお願いされたから、ここ100年の研究を調べようとしたんだ』


 これには少し眉をひそめます。得意な魔法というのはその人の切り札であり、教師でもない限り簡単に教えるものではありません。


『あ、怒らないでくれ。キャッツアイ家なんだからしょうがない』


「どういう事ですか?」


『んー、これって話してもいいのかな〜。まあいっか』


 いつの間にかセルシウスがお水を用意してくれました。少し長くなりそうです。


『今から…130年と少し前だな。獣人王国を我が国に併合させた事は教科書で習っただろ。あれは最初は獣人王国を滅ぼす予定だったんだ。それを勇者キョウスケが止めたんだ。キョウスケによると、地理と動物を含む住民を味方につけた獣人達がゲリラ化すると…ゲリラってのは異世界の言葉で、臨機応変に小規模な戦闘を繰り広げる…なんだ言葉が浸透してんのか。そのゲリラ化した獣人達と戦えば他が手薄になって他国に攻められるって話だ。でもまあ、当時は戦後ということもあって人類至上主義が強かったから反対も強かったんだが、当時の国王の決断と戦後復興に金がいるってんで平和的に併合する事になった。でも不満を持つやつも多かったから、獣人達は少しでも強くある必要があるんだ。少なくとも俺のときはそうだった』


 なるほど。要約すると獣人達にゲリラ化されたら困るから平和的に併合したけど、風当たりが強いので獣人達は手札を増やし続ける必要があるんですね。それはキャッツアイ男爵家も例外では無いと。


『だからまあ、ポットちゃんを責めないでやってくれ』


「分かった。しかし1つ質問していいか?」


 セルシウスは疑問があるようです。


「ゲリラってのは今は浸透してるけど、当時は全く新しい概念だったんだろう?」


『そうだな』


「だったら獣人達が知っているはずは無いけど、獣人達がそれをするのなら誰かが教えた事になる。しかもそれは勇者だ。誰が獣人達にゲリラと言う概念を教えたんだ?」


 彼女は演繹的(数学的)な思考が得意ないわゆる一を聞いて十を知るタイプです。


『…そうだな。ジュエル王国に150年ぐらい前に召喚された勇者は何人だったって習ってい

る?』


「4人だ」


『そうか。それじゃ俺は多分何も言えない』


 すると、シャーちゃんは黙ってしまいました。

 それからシャーちゃんは私が借りてきた精神魔法の本を読み、私とセルシウスは2人で勉強をして過ごしました。



 ナイトルーティンを終えて喋りながら寝た私達ですが、私は少し眠れませんでした。ふと耳を澄ませば、屋上から優しく幻想的な歌声が聞こえてきます。これは音楽魔法を勉強しているオーロラさんの歌声で、3年生です。音楽魔法は志望する人も、そもそも技術を持つ人も少なく毎年数人しか受けられません。


 シャーちゃんはセルシウスが用意したバスケットから出て机の上にいます。少し。本当に少しだけ泣いていましたが、見なかったことにしましょう。彼もまた混乱しているのでしょうし。


 こうして、1日が終わりました。

アティラ=アメジスト/女/魔法科/高等科3年生/生物部/アメジスト侯爵家

生物魔法

無魔法

魔石工学

魔法理論


オーロラ=スノーフレーク/女/芸術科/高等科3年生/合唱部/平民(スノーフレーク商会)

音楽ⅲ

音楽文化

音楽魔法

魔法理論


アティラは使い魔を重点的に学んでいる。理由は追々

オーロラは音楽魔法を取っているので魔法理論も取れる。また音楽魔法は一部に風魔法を含む

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