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第1話 ほんとうにおかしな猫を拾ってしまいました。

お久しぶりです。新連載を開始します!

週一投稿を予定しています。

めざせランキング入り!


世界観を参考にしたかもしれないもの

『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』

『マリア様がみてる』

その他、異世界系

 クリスタル女学園はジュエル王国の名門校です。クリスタルとは王家の名前で、今から2代前の国王様の時代に設立されました。魔法科学の発展する王都の森の中で、勇者様からもたらされた女子教育の概念の先駆けとなり世界で活躍する女性人材を育成しています。


 しかしそんな学校でも今は夏休みです。幼少科から高等科までほとんどの生徒は実家、あるいは避暑地で過ごしています。


「〜♪」


 私の名前はノワール。黒髪が目立つクリスタル女学園の高等科2年です。珍しい居残り組です。そもそも色々とあって帰る家がありません。しかし特にする事も無く、今は高等科寮の横の長椅子から、園芸部が管理している花壇を、ただぼーっと眺めています。小さいながらも見事な花壇です。


ガサガサッ!

 すると森から音が聞こえてきました。


「シャー!」


 森からは黒い猫が走ってきました。抱えるのにちょうど良いサイズです。


「ガァ!ガァ!」


  その後ろからはカラスが出てきました。これはいけません。


「【ウィンド】!」


 私は初級風魔法の【ウィンド】を簡易詠唱で放ちます。【ウィンド】は長い魔法言語の前文がついた通常詠唱なら初等科で習う魔法です。


「ガァー!」

 風に煽られたカラスは退散していきました。ここの生徒は基本的にカラスを追い払うので、カラスも魔法で大怪我を食らう前に逃げます。さて猫ちゃんは…


「ニャ、ニャァ〜」


バタンキュー。

 そんな効果音の聞こえそうなかっこうで倒れていました。よほど森の中を逃げ回ったのでしょうか。


「【この者に大きな傷への回復と癒しを授けよ。ファーストエイド】」


 上級回復魔法の【ファーストエイド】を掛けます。この魔法は簡単に言うと限定的な【ヒール】です。初級回復魔法の【ヒール】は良くも悪くも全部直してしまうので魔力効率が悪い上、余計な所も治してしまうので後の治療に影響を及ぼしてしまう可能性があります。


 言うのは簡単ですが行うのは簡単ではありません。魔法の行使ごとに対象とそれに合った詠唱が違うので、高い魔法言語と生物の知識が必要だからです。


 回復魔法にはしばしばこのような魔法があるので、高等科2年生で回復魔法基礎と回復魔法の授業を受けるには相応の点数が求められます。まあ私は授業料の免除される特待生ですから、それぐらいは余裕です。嘘です猛勉強しました。一時期、学園の図書館にこもっていたのもあります。


 とにかく猫ちゃんを急いで部屋に運びましょう。


 私の部屋は北棟4階の中央。高等科寮は8階建てで北棟南棟にわかれていて、1階が浴場や食堂(南棟)か玄関(北棟)と連絡通路、5階が遊戯室と連絡通路など、2〜4と6〜8が学生の部屋で1階層に15部屋あります。各部屋に2人ずつ住むので360人まで入れることになります。北棟と南棟の間には中庭もあります。


 部屋には大きな窓があり、2つの机が並んでいます。両端にはベッドがあってその手前には私から見て左側(私のベッドの方)にクローゼット、右側(同居人のベッドの方)に本棚があります。猫ちゃんは布にくるんで私の机(私から見て左側の机)の上に乗せています。宿題に怪我つくのは覚悟しています。


 切り傷だらけでしたが大きな怪我は無く、身体の細かい傷などを修復する中級回復魔法【トリートメント】で治せる範囲でした。もしひどかったら校舎の保健室に連れて行くつもりでした。私はまだ上級回復魔法の【ハイヒール】は使えないんですよね。


 魔法のランクは高等>上級>中級>下級であり学園では上級まで教われます。高等はそれぞれの分野を専門的に学ぶ人が習得・研究・開発するもので振れ幅が大きいです。高等魔法の中には免許が必要なものや禁術に指定されているものさえあります。復習はこれぐらいで。


 猫ちゃんに残る問題は同居人がどう思うかです。居残り組の私の同居人は学年代表で、それゆえにかだからこそか厳格な性格です。猫を飼うことはルール違反ではありませんが周りに迷惑をかけるようならマナー違反になります。みたところ首輪も無いのでこの猫ちゃんは野良でしょう。しつけなんてしたことないな〜、なんて困っていると


「ン…ニャアー」


 猫ちゃんが目を覚ましました。猫ちゃんはキョロキョロと周りを確認しています。賢いですね。賢いなら暴れないで欲しいのですが…


『おい、そこの少女よ』


 !?頭の中に声が響いてきました!誰でしょうか。


『ワシじゃワシ!』

「ニャー、ニャ!」


 えっと…


「もしかして、この声って猫ちゃんですか?」


 我ながらちょっと何言ってい

るのかわかりません。混乱していて。


『そうじゃ』


 私はおかしな猫を拾ってしまいました。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

100年近く昔

 ある偉大なる賢者が小さなベッドの上でまさに長い命の旅路を終えようとしていた。


「お前たち、最後の言葉を遺す」

「あなた…」

「親父!」

「クライン様」

 

 老賢者を囲んでいるのは気品を感じさせる老婆、30歳近い男性、細身の女性、赤ん坊の計4人だ。


「おまえ…いや、アンジェ。出会ってから迷惑ばかりかけたな。すまなかった。しかし身勝手だが言わせてもらう。おまえのおかげでとても充実した人生だった」

「マーク。戻ってきてくれてありがとう。お前はワシとアンジェの宝だ。直接の親子じゃなくてもだ」

「エマ。長くマークとの結婚を認め無くてすまなかった。お前が遠い村からやってきた時の事、覚えておるぞ。お前はワシらの娘だ」

「アクシス。生まれてきてくれてありがとう。呪われた血に惑わされず、ワシらの分まで健康に生きていてくれ」

「…それとシロ、人間の都合で縛り止めてすまなかった。これからも達者でな」


 次があるなら、猫のような人生も良いのではないか。そう考えながら、ジュエル王国で大逆の子爵家の子から魔法副相まで上り詰めた男は最後の息を吸った。



『そして、気づいたら森の中にいたわけじゃ』


 この猫ちゃん、どこまで信用していいのでしょうか。クラインという賢者は実際にいましたし、出てきた人名も聞き覚えがあります。そもそもアクシスさんはこの学園の理事長です。


「1つ質問します。それだけの魔法技術があるのならなぜカラスを追い払わなかったのですか?」


 初級闇魔法の【マインド】と高等闇魔法の【テレパシー】では難易度が違いすぎます。【テレパシー】が使えるのに【マインド】が使えないということがあるのでしょうか。


『それはじゃな、最初は【ウィンド】を使ったんじゃが…猫の魔力が少なすぎてショボい威力しか出せず、更に魔力切れ寸前になったんじゃ』


 なるほど。魔力というのは空気中に存在するのを肺から吸収し体中に貯めておくものです。猫の体ならそれが少なくても無理はありません。


「でしたら、なぜ【テレパシー】は使えるのですか?」

『ワシは精神魔法一本で賢者になった男じゃ。魔力消費を最低まで落としておるわ』


 そういえば【テレパシー】の魔力をぜんぜん感じませんね。


 それと賢者になるには『賢者または賢者認定会を構成する国のうち3つ以上の推薦』、『十分に熟練した技能とそれを示す実績』、『人類に対する貢献』が必要です。今は比較的平和な世の中なので研究者系の魔法使いが多いですが、150年以上昔の魔王が健在だった頃には軍人や戦闘系の魔法使いも多かったと聴きます。


 それにしてもどうしましょう。猫ちゃんを否定できる要素は存在しません。


 ほんとうにおかしな猫を拾ってしまいました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] むずかしいところもありましたが、ノワールちゃんが猫に転生した賢者様を助けたところが良かったです。これからノワールちゃんと猫賢者様の絆がもっと深まると良いですね。 [気になる点] 確認ですが…
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