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ネクロファンタジア──リア充のイチャイチャを見てヒトに絶望した俺はネクロマンサーとして転生! 8

 「ギャー!」

 「セイジさん! 何をしてらっしゃるのですか!!」

 「……」

 「クッ! クソ! 孫に……ルノワールに手を出すな!」


 口々に反応がある。俺は彼のスマートで美しいご尊顔の無駄を一つの省いただけなのだが。


 ルノワールは左側の耳をかばうようこちらから背け、呻き声を上げている。


 「ひ、卑怯だぞ!」


 声に震えがある。怒りと恐怖両方だろう。


 「卑怯? 安心しろ。 後攻は皆に愛されしルノワール君、君の番だ」


 俺はそう言うと亡者にルノワールの片腕を解放させ彼に自分の持っていた剣を持たせる。


 「どこでもいいぞ。目でも鼻でも、それこそ耳でもな……俺たち男にとっての急所でもいいぞ」


 ニヤニヤと彼に語りかける。


 「ふざけるな!」


 はあ。どうやら自分の立場が分かっていないらしい。


 「ふざけてんのはてめえだよ! クソガキ!」


 俺は叫ぶ。


 「てめえの判断で戦場で女に駆け寄ったんじゃねえか! 敵に捕まって、文句垂れてんじゃねえぞ!  俺がその気ならてめえは死体になって俺に操られてんだよ! てめえも愛しのおじいちゃんと戦わせてやろうか!」


 ルノワールに凄む。彼は片耳を押さえ震えながら俺を睨みつけてくる。


 「おら! 後攻やるのかやらねえのかはっきりしろや!……それとも、パスすんのか? 次はどこ切られてえんだ?」


 俺は屍と化した兵士の一人からもう一振りの剣を受け取る。


 「い、いやぁぁ! セイジさん、もうその辺でおやめになって下さい!」


 俺は少し黙って思考する。そして、冷静にこう答えた。


 「……ブロンシュさん。そもそもなのですが貴女の母親が俺にいちゃもんをつけてきたことが事の発端。そうではありませんか?」


 「……そ、そうですね。その通りだとおもいますわ……何がお望みでしょう? お金でしたら何とかなると思いますわ。」


 「……金か。まあ多少はあった方が便利だから頂くが、そんなもんより貴女の母親及びその取り巻きで俺に危害を加えてきた爺さんの処罰及び謝罪……そしてそこの不愉快なクソガキの俺に対する接見禁止を要求したい」


 そこに口を挟む者が一人。ブロンシュの義母、シャルロットだ。


 「ブロンシュ! 何を勝手なことを! 私は謝罪、ましてや処罰など認めませんよ!」


 しかし、ブロンシュがその美しい顔を歪ませて反駁する。


 「お義母様!! これ以上この方に失礼を働くのならば私はこの場で命を絶ちます!!」


 彼女はルノワールが落としていた彼の剣を拾うと首元に沿わせた。首元にスッと細い赤線が浮かんでくる。そこからタラリと血が滴る。


 「や、やめなさい! ブロンシュ! あ、貴女にこれ以上傷が付けばレオン王に何と言えばいいのか……! 分かりました、ブロンシュ! 貴女の言う通りにします!」


 ババアは観念したようだ。ブロンシュはホッと息をつく。


 大した娘だと思った。無論、その心配は俺に向けられたものではなく、あいつに向けられたものだろうが。


 「……では、話がまとまったようなので」


 俺は操っていた亡者を解放する。


 ルノワールを拘束していた亡者が本物の屍と化す。屍がくずおれる瞬間それの虚ろな目と彼は目を合わせてしまう。ルノワールはビクリとし、後ろに飛びのいた。

 ジジイの方に目を向ける。既に彼以外の取り巻きは一人残らず亡者と化すか、屍となっていた。ジジイ本人は影から本来の姿に戻るとフラフラと床に膝を着いた。威勢のいい啖呵を切っていただけある、タフだ。


 「……それじゃあ、取り敢えず謝罪からしてもらおうか。両名」


 淡々と俺は言う。ババアの目が引くつく。


 「……シャルロット様。まず、私から彼に謝罪させて頂きます。……異国よりの魔法使い殿、あなたに対し挑戦的な態度をとり、命令とはいえ危害を加えたこと、誠に申し訳ない。私に出来る事……私が一生をかけて収集してきた貴重な霊薬、魔法素材を献上させて頂く。どうか、私、いや、ブロンシュだけでも見逃して下され!」


 老人が地に頭をつけて謝罪した。土下座ってやつだ。この世界、この地域にもある謝罪形式なのだなあと感心して見ていた。


 「……別に貴方のお孫さんに危害を加えるつもりはありませんよ。ただ、不愉快ですので私に近づかせないで頂きたい。……ないとは思いますがもし破られた場合には本日の続きをさせて頂きます」


 ブロンシュとルノワールが青ざめる。

 いい気味だ、ルノワール君。


 「さて、そこの……シャ? なんだったっけ? まあいいや。ババア! おめえも謝罪しろよ!」


 シャルロットことババア(わざと名前を呼ばなかった)の眉間に青筋ができる。


 「……こっ、この! ……クッ……ごほん! わ、私がわ、悪かったわ。し、市長代理として賠償はさせて頂きます……お、お、お許し下さいま、ませ」


 流石に謝罪するだけの知性はあったらしいが普通の謝罪はできないらしい。黒い思考が頭をよぎる。……良いだろう。こいつにはチャンスをやろう。


 「……それでは処罰の方、両名、言い渡させて頂きます」


 「な、処罰は賠償金では無いのか!? こ、この黙っておればっ……」


 シャルロットが文句を言う。俺は彼女を見つめる。彼女が俺の視線に気付く。彼女は目をすぐに逸らせ、ビクッと身を震わせる。

 俺は口元をニヤリと歪ませる。

 可愛いじゃないか。そう来なくちゃな。


 「いいですかね? それではまずマルシェとかいう魔法使い、お前は何もしなくていい。異論はあるか?」


 マルシェが呆然としている。彼の中では想像するのもおぞましい自身の未来が見えていたのだろう。

 いいんだよ、ご老人。〈貴方〉はね。


 「い、いいえございません」


 「そうか」


 一息つく。


 「……それでは次に市長代理シャルロット、貴方の処罰です」


 「は、はい!」


 何か知らないがこの女、少し元気になったようだ。ビビッていたのに目に希望が宿っているように思える。老人に寛大な処置をしたから自身にも──と期待しているのだろうか。

 そうだな、期待にはおお応えしなくてはな。


 「……貴方にはラファエルと一夜を共にして頂きます。生娘じゃないんだ、この言葉の意味……お分かりですね?」


 シャルロット──哀れな女。その表情が笑みを帯びたまま固まる。

 数舜の後、絶望と恐怖、嫌悪を〈雌〉は顔に表現していた。ああ、これだ。堪らない。

 生物的にプログラミングされた絶望、恐怖、嫌悪そこから来る絶対の拒絶──君はその人類の心の壁を越えようとしているのだ。誇りを持ちたまえ。


 雌は生理的反応──人間がストレスを感じると分泌されるホルモンの過剰分泌──それに伴うものとしての一連の身体的連動を起こした。


 詰まる所、泣き出し、その場に嘔吐した。

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