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ネクロファンタジア──リア充のイチャイチャを見てヒトに絶望した俺はネクロマンサーとして転生! 7

 立ち上る砂煙、周囲に飛び散った土と礫。

 爆発の中心は土が丸見えになりぼこぼこの穴を幾つも作っている。


 暫くすると砂煙が落ち着いていき、一つの影が浮かび上がった。


 「……足元を狙うとはやるではないか、坊主」


 石畳を破裂させた。イメージしたものはビル等をダイナマイトで爆破する時のそれだ。

 その影から声が聞こえてきた。信じられないことにマルシェのものだ。

 顔にあたる部位が若干苦痛によってか歪んでいたが、依然としてそこに立っていた。


 「儂に魔術は通用せん。この体は魂を糧に全ての悪意を飲み込む闇だ」


 マルシェ……ジジイはそう言うと手を前に突き出し、闇魔法の連弾を放ってくる。弾速が余りにも速かった。動き出す前にそれが俺を貫通する。

 鈍痛が走る。後ろで悲鳴が上がる。


 以前、魔法使いたちの集中砲火を受けた時ほどではないが、十分な痛みだ。

 前を見れば唖然としているジジイとシャルロット達と取り巻き。周りには混乱、茫然とする群衆。後ろでは数人が地に倒れている。ラファエルはその体躯故か命中しなかったようだ、しかし、ブロンシュは太股を押さえ地べたに座り込んでいる。スカートには血がべたりと付着している。


 「……!! な、なんてことだ! 透過魔法の使い手だったのか!? そんな! あり得ない!」

 「マルシェ!? 何をしているのですか!? あの子はレオン王との縁談があるのですよ! あの子に何かあれば私の立場が……」

 「ブロンシュ! クソッ! 卑怯者め! 小癪な手を! やはり私が戦っていれば……」


 ざわざわ ざわざわ


 各々が様々に反応している。群衆の事はどうでもいいが、ジジイの言い訳と倅のクソガキの言いよう、ババアの身勝手さ全てに限界だった。

 沈黙を守ってきた俺が口を開く。


 「お前最悪な奴だな、ジジイ。てめえが無能だから一般人死んでんだろうが。あと、無能の倅のクソガキ!文句あるなら出てこいや!そこで見てるてめえが一番卑怯者でザコなんだよ!」


 ババアには触れなかったが後でクソな性格も含めて〈教育〉してやろうと思った。

 俺は啖呵を言い切ると共に屍と化した兵士たちと先程の〈誤射〉で死んだ町人に意識を向け、ジジイを襲うように仕向ける。


 「ぐぬぬ……! この……」


 ジジイが悔しさから口を食いしばらせていたが、次にはまた唖然とした表情に戻り、開いた口が塞がらない。なんと滑稽なジジイだろう。


 立ち上がった屍たちが全速力でジジイに向かっていく。

 群衆は悲鳴を上げ、広場から四散した。ババアは固まっており取り巻きは逃げ出す者とその場で臨戦態勢をとる者とがいる。


 俺は亡者がジジイに向かって攻撃を始めるのを見届けると後方のラファエルとブロンシュの様子を確認する。彼らは広場の隅の方に移動している。ラファエルがそれを手伝ったようだ、服に血がついている。今はラファエルが何か塗り薬らしきものを取り出してブロンシュの──スカートの下の太股に触れている。

 彼女の表情が歪んだのを俺は見逃さなかった。何かに怯えているような表情だ。苦痛によるものだけではないなと感じた。


 そこに駆け寄ってくる者がいた。ルノワールだ。

 彼は駆け寄るとブロンシュに話しかけラファエルから塗り薬を奪い取ろうとする。

 ラファエルの治療の手が彼女から離れると〈不思議な事〉に無理はしているが病が治ったかのような笑顔をルノワールに向ける。


 ああ、恋の病。醜さは不治の病。


 「クソガキ!話は終わってねえんだよ」


 俺は傍らでうめいている瀕死の兵士三人の頭上に岩を落とし確実に息の根を止める。

 そして、新たに〈生まれた〉亡者三名をクソガキの確保に向かわせる。


 視線をジジイに戻す。

 何人か取り巻きが加勢しつつ亡者たちと戦っている。

 ジジイが亡者の腕を闇魔法で消滅させたり、取り巻きの戦士が斧で頭を跳ね飛ばしたりしているがその度に新しくその部位が再生する。

 取り巻きが一人一人倒れていく。その度にそいつらも、もう一度このデスマッチに〈敗者復活〉させてやった。

 詰まる所、キリがない。


 視線を再びクソガキに戻す。


 「おい!離せ!なんだこいつら!」


 剣を亡者に突き刺すが逆に身動きがとれなくなり片腕を掴まれる格好となっている。そこにもう二人の亡者が脚ともう片方の腕を押さえて床に押し倒す。

 流石、元兵士だ。取り押さえは得意と見える。


 「……いいご身分だな、クソガキ。あんだけ大事抜かして女の元に泣きつきに行くのか? 戦えや!」


 「な、なに言いやがる! 男なら剣で勝負しろ!」


 このクソガキ、何言ってやがるのか。卑怯だとか男ならだとか言うやつにろくな奴はいない。そういう輩は大抵自分の都合のよくなるようにしたいがために言うのが常だ。

 元の世界で殺したクラスメイトを思い出す。


 ふむ……しかし俺自身が武器を握ってこいつを殺すのもいいな。それこそあの時みたいに。


 「いいぜ。そうしよう」


 俺はそう言うとクソガキを取り押さえている亡者兵士の腰に刺さっていた剣を抜き、掴む。


 「じゃあ俺から先攻な」


 俺はそう言うと剣をクソガキの耳の上にあて、そのまま振り下ろした。

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