序列5位とのお出掛け中!?
『駄目だよ!』
義姉のエルヴィの声が部屋いっぱいに響く。
王立学院キンガルムに入学した俺、レヴァン・アルフォレイは義姉さんについ先程誘われた学区外への外出の許可を貰おうとしていた
『レヴァくん!駄目だよ』
二度言われてしまった。
少し怒ったように見せるセルヴィはレヴァンにそう告げる
『で、でも』
『はあ、だから言ったのにい。メギツネには気をつけて。って、もーーーどうしてこうなっちゃったのおおお』
どうやらエルヴィは学区外に行く事も気に入らないが、最も気に入らないのが序列6位の女性アリシアと序列10位の女性サレンがどちらとも女だと言うことらしい。
『行くなら、ハルマスやセルヴェやアルヴェンに頼めばいいのに!それならお義姉ちゃん許可してあげるのにいいいいいい~』
そう言いながらエルヴィはベッドの上を転がっていた。
『なんで?なんで、女の子なのよおおおおおお』
相変わらずのブラコンであるこの、義姉。
『成り行きって言うか』
『成り行き?レヴァくんは成り行きで女の子を侍らせるの?』
特に侍らせたりはしていないのだが、エルヴィにはそう見えてしまうらしい。
『な、何もしないから!』
『レヴァくんが何もしなくてもあの女狐が何かするんだよ!お義姉ちゃんeyeにはそう移っているの!』
何なのだろう。お義姉ちゃんeyeって。
そう思ったレヴァンは思わず苦笑いをしてしまう。
『な、ならどうしたら行かせてくれるんだ??』
『何が有っても行かせるわけがな、』
そう言いかけた所でエルヴィは少し考えるような体制をする
『そうねえ。お義姉ちゃんのお願いを一つ聞いてくれるなら考えてあげるよ』
『お願い?』
『そうそう♪お義姉ちゃんの細やかなお願い』
嫌な予感はするがこれを断れば恐らく行けなくなるのでとりあえず聞く事にする。
『お願いって言うのはお義姉ちゃんと一緒に寝て欲しいなあ。っていうお願い』
やはり。こんなことだろうと思った。しかしレヴァンは一日一緒に寝る位ならと思いそのお願いを了承する
『分かった!いいよ!』
『やったあ!お義姉ちゃんと一緒に一週間も寝てくれるんだあ~♪』
ん?ん?ん?
俺の聞き間違いかな?
一週間って聞こえたけど耳がおかしいんだろうな。きっと
『義姉さん?一週間って聞こえたんだけど』
『うん!誰も一日とは言ってないよ?』
このブラコンは。。。
まあ、一緒にお風呂等よりはましか。と思い了承した
『わかった。』
そう言うと義姉さんは張り切ってお風呂へと向かった
そんな義姉を見てレヴァンは一つため息をついた
『ふう。まあ、なんとか許可は貰えたか』
だが、一週間抱き枕にされると考えたら少し憂鬱になった
次の日、目を覚めると案の定レヴァンはエルヴィの抱き枕にされていた。
『はあ、思ったより大変だな。これは』
レヴァンはエルヴィの豊満な胸元に顔を埋められながらそう呟いた。
レヴァンが目を覚まして10分程してエルヴィが目を覚ました。
『んー、おはよお~。レヴァくん!』
朝一番の挨拶が義姉から送られる
『お、おはよう。義姉さん。後、あの、苦しい』
起きてから10分ほど胸に押し付けられていたレヴァンはそう告げる
『あ、ごめんね?レヴァくん。苦しかったね』
そう言ってエルヴィはレヴァンの顔を抱き寄せてる自身の胸から離した
『ふう』
顔を離されたレヴァンは一息をついた。
『んーーーー、今日から一週間レヴァくんと一緒のベッドで寝れるなんて、頑張れるなあ!』
そんな事をウキウキと口走る義姉を横目にレヴァンはポツリと理性持つかな。と呟いた
昨日と同じ様にエルヴィと教室に行きホームルームを終えると教室から何人かが退出する。正確に言うと退出したのはハルマス、セルヴェ、レルバリスだった。
『じゃあ、レヴァくん。私も仕事があるから行くね。くれぐれも、くれぐれもメギツネには気をつけるんだよ!』
そう言って耳打ちをするエルヴィにレヴァンは大丈夫だと返しておく。
エルヴィが教室を出て行って現在教室に残っているのは、リリアナ、アルヴェン、サレン、そしてアリシアに自身を入れた四人だけだった。
レヴァンはふとリリアナの方を見た
昨日は退出してたのにな。と思い少し近付いてみる
リリアナの目は開いていたがスースーと寝息の様な音が聞こえてくる。
どうやら本当に寝ているようだ。
そんなリリアナを見てレヴァンはふと思った
(リリアナって、本当に可愛いな)
するとリリアナから寝息が消える。
(起きたか?)
ふと心の中で思うとリリアナが口を開いた
『ああ、ケビンくん。おはようございます』
『ケビン!?誰だそれ!俺の名前はレヴァンだ!!』
思わず突っ込みを入れる
『ふむ、4点ですね』
下がったああああああ
前回の11点から7点も降格したああああ
『まだまだですね』
そう言うとリリアナはまだ小さな胸を少し張る
『って痛った!何すんだ!』
リリアナはレヴァンに蹴りを入れていた
『今、失礼な事を考えましたよね?』
うん。心当たりはあるからとりあえず謝罪をしておこう
『ごめんなさい!』
そう言うとリリアナはため息をついて、口を開いた。
『仕方ないですね』
どうやら許してもらえた様だ
と安堵の息を吐く
『なんでまた今日は教室にいるんだ?』
『何ですか?私が教室にいたら何か不都合でもあるんですか?』
また、不機嫌にしてしまった様だ。
『ごめんごめん』
『反省の色が見えません』
これはまた手厳しい!
『まあ、これ以上は時間の無駄なので許しておきます』
『俺とのやり取りを時間の無駄とか言うな!』
マイ・エンジェル・リリアナに言われると心が引き裂かれる様な思いだった。
泣きそうだ。
『勝手に私を貴方の天使にしないで貰えますか?』
そうだった。心の声が聞こえるんだったな。
(それなら食らえ!天使天使天使天使天使天使天使天使天使)
必殺奥義天使連呼。
どうだ?見たか!
そう思いつつリリアナを見ると聞こえてる筈なのに無視されていた。
『それより私が何故教室に入るかと言う話でしたね。』
レヴァンは華麗にスルーされて少し落ち込む。
『うん。そう』
少しだけ不貞腐れたようにそう返答する
『何を不貞腐れてるんですか?大人気ないですよ。』
誰のせいだと思ってんだか
『自業自得ですよ!』
あっさりと心を読まれてしまった
『はい。ごめんなさい。』
『最初からそう言えば良いんですよ。お馬鹿さん』
言わせておけば。。
だが、これ以上長引かせてもあれなので何も言わないでおく
『私、少し貴方にお願いがあるんですけど。』
ほう。お願いね
『ここまで俺をこけにしといてお願いね~』
ニヤニヤしながらレヴァンがそう言うとリリアナは真顔で口を開いた
『なら、別の人に頼むとしましょう』
『すみません。調子に乗りました』
せっかくリリアナに頼られたのに機会を逃す所だ。と思いレヴァンは頭を下げた
『わかればいいんです』
あれ?お願いされてるの俺の方だよな。
立場が逆転してしまっている現状にレヴァンは思わず疑問を抱いてしまう。
『あの~、俺がお願いをされるんですよね?』
レヴァンは思わず聞いてしまった
『はい。そうですね。私がお願いしていますよ。』
レルバリスはあたかも当たり前の様に話した。
『なら、立場逆じゃないですかね?』
『はい?』
『いや、なんでもありません。』
その威圧にレヴァンは思わず萎縮した。
この貧乳が!
と心の中で叫ぶとリリアナに蹴りを入れられる。
『私が心を読めると知って技とやってますか?』
リリアナに睨まれてレヴァンは首を左右に目一杯ふった。
『次は目を突きます!』
堂々と恐ろしい事を予告され今度こそレヴァンは黙り混んだ。
『それに、私はまだ14歳なのでこれからです。』
『え?14歳なのか?同じ年齢だと思ってた。』
『そうですよ?ちなみに気にますけど同じ年齢に見えるのは私が大人っぽいからですか?』
『お、おう!そうだ』
(偉そうだからだな。でもそれを言うとキレられそうだからな。)
レヴァンは産まれて始めて目潰しをされた。
レヴァンの視力が回復してようやく本題に入る。
『本当に突くなよ。。』
『貴方が悪いんです。』
リリアナは不機嫌そうに告げる。
『まあ、それは、すみません』
とりあえずレヴァンは謝罪をしておいた
『それより、お願いって何なんだ?』
改めて質問する。
ようやく最初の段階に戻ることが出来た。
『そうですね。ここではなんですから少し外に出ましょう。』
そう言うとリリアナはレヴァンを連れて中庭へと向かった
『それでお願いって何なんだ?』
中庭に連れてこられたレヴァンはそうきりだした
『実は、城下町へ行きたいんです。』
どうやらリリアナは城下町に用事がある様だった。
理由は詳しくは余り言えないそうだがリリアナ一人だと子供扱いされ馬車に乗れないそうだ。
城下町まではここから馬車で六時間程度。
リリアナの用事がどれ程かかるかは知らないが恐らく夜に帰ることになるだろう。
『すみません。理由も言わずただ付いてこいなんて。無理なら本当に大丈夫何ですが。』
リリアナは申し訳なさそうにそう口を開く
『どうして俺なんだ?』
レヴァンは率直な疑問を尋ねた
『私、教室では他の人に頼むとは言いましたが、その、貴方以外に頼れる人がいなくてですね。やはり、総括さんの弟と言う立場では無理ですか?』
教室を見てればわかるが
特進クラスの面々は余り仲が良くない様だった。
そして、レヴァンの答えは決まっていた
『分かった。行こうか!』
折角頼ってくれたんだ。
どうにか手伝ってやりたい。
そう思っていた
『え?いいんですか?』
リリアナは目を丸くしていた。相変わらず無表情だが
驚いてるのは何となく分かった。
『おう!折角頼ってくれたんだしな!でもバレないように行かないとな』
バレたらどうなるか。
夜に帰った時の言い訳を考えておかないと。
『ありがとう、ございます』
リリアナは丁寧に頭を下げていた
『おう!じゃあ早速馬車に行こう。』
そう言ってレヴァンはリリアナと共に馬車が通っている街へと向かった。
街へと到着するとそこは賑わいを見せていた。
『馬車は何処にあるんだ?』
レヴァンは街の場所は知っていたが、馬車に乗れる場所は知らなかった
『あそこです!』
リリアナが指差す先には、一人のおじさんが立っていた。
恐らくはあのおじさんに乗車券を貰うのだろう。
『そうか!なら行こう!』
レヴァンはリリアナの手を引いて走る。
おじさんの所まで到着するとリリアナの顔が心無しか赤くなっていたような気がした
『リリアナ顔赤くないか?疲れたか?』
『誰のせいだと思っているんですか!』
何故か怒鳴られた。
俺が走らせた事が原因なのか?それなら謝っておくか。
『別に謝らなくていいですよ。バカ』
どうやらまた心を読まれたようだ。
まあ、謝らなくていいならやめておこう。
それより、馬車に乗らないと
『おじさん。城下町までお願いします。』
そう言ってレヴァンは二枚分の料金を払う。
一応入学時に親からお金は貰っていた為それで払う
『私出しますよ?』
隣でリリアナがそう言ってくるが大丈夫と返しておく
しばらくすると馬車が来てレヴァンとリリアナは乗り込んだ。
馬車の車中レヴァンとリリアナは会話をしていた。
『総括さんってもしかしてレヴァンの事大好きですよね?』
唐突にそう切り出されてレヴァンは戸惑う。
『ど、どうしていきなりそんな事を?』
思わずそう返してしまう
『いえ、ホームルームの時に総括さんの心の声が聞こえてきたんですけど』
これは、不味い。とレヴァンは思ってしまった。
『ずっとレヴァくんと連呼していました』
うわあああああああああああ
バレたああああああああああ
義姉さんの威厳があああああ
『やはり、そうなんですね』
しまった。心の声読まれるんだった。
『その、誰にも言わないで欲しいんだけど』
レヴァンは恐る恐るそう口を開く
『言いませんよ。それにしても凄いですよね。あれほどレヴァンが好きだなんて』
レヴァンは心の中で激しく同意をした
『だよな!やっぱあそこまでは異常だよな!』
やっぱりあれは俺だけじゃなかった。
『レヴァンはシスコンでは無いんですか?』
『んー、どうだろうな。』
正直自分では分かりにくい
『なら簡単なテストをしましょう』
リリアナが手をポンと叩きそう提案してくる
『テスト?』
『はい!少し質問します!』
そんなことで分かるのか?
と疑問を抱くも知りたい気持ちはある為レヴァンは了承した。
『では、総括さんに恋人が出来たらどう思いますか?』
『良い人だったらいいと思う!』
『総括さんにキスをせがまれたらどうします?』
『それは断るな。流石に義姉さんの唇は奪えないから。』
『なるほど。まあ、シスコンでは無さそうですね』
どうやら俺はシスコンでは無いようだった。
『まあ、あんなに綺麗な人にグイグイとせがまれたらいつかは堕ちそうですけど。』
『ああ、確かに義姉さんは綺麗だよなあ!』
リリアナはこいつも体外シスコンなのかも知れないと思っていた。
レヴァンはふと目を覚ました
どうやら少し寝ていた様だ。
目が覚めると少し先に城下町が見えてくる。
ふと横を見るとリリアナが方に頭を乗せてスースーと寝息をたてながら目を閉じていた
(こいつ。黙ってたら本当に可愛いな。天使の様だ。)
普段は無表情なのに寝顔が可愛すぎる。
レヴァンはリリアナの頭を軽く撫でた
『ん、』
少し気持ち良さそうに声をあげつつ眠るリリアナにレヴァンは軽く悶えていた。
(可愛すぎる)
城下町に到着するとリリアナが目を覚ましていた
『寝てしまってた様ですね』
そう言って軽く伸びをした
『ああ、ぐっすり寝ていたな』
『もしかして、寝顔、見ました?』
リリアナは少しジト目でレヴァンを睨んだ
『そ、そりゃ、人の肩で寝てたら見えるだろう』
『あ、私、肩借りてたんですね。それはありがとうございました』
リリアナは丁寧に頭を下げてくる
『いえいえ』
そう言いつつレヴァンは先程のリリアナの寝顔を思い浮かべる
(可愛かったなあ)
『思い出さないで下さい!』
心を読まれてレヴァンは軽めのパンチを貰った。
『それで?確か用事があるんだったよな』
少し歩きながらレヴァンとリリアナは軽く話をしていた
『はい。ある方にお会いしたいのですが』
そう言ってリリアナは少し気まずいようにレヴァンを見る
『あ、ああ!知られたく無いんだったよな?なら、俺適当に見て回っておくから!』
『此方が頼んでおいて本当に、すみません』
レヴァンは丁寧に頭を下げるリリアナに大丈夫だと返答をしておいた。
リリアナは俺との会話を終えるとそそくさと何処かに向かって走っていった。
正直、どんな用事かは気になるがここで付いていったら頼ってくれたリリアナを裏切ることになる。と思いレヴァンはリリアナが走っていった方向とは逆の方向へと進み始めた
『にしても始めてきたけど凄い賑わいだな。』
城下町には様々な人々が賑わっていた。
『うお、何あれ!旨そう!』
ふと見ると視線の先には焼き鳥の様な物が焼かれていた
『んーー、いい匂いだな。よし!食うか』
そう言ってその屋台へ向かおうとすると一人の少女とぶつかった
『いたっ』
『ふにゃ』
思わず声が出てしまう。
その少女は勢いに負け変な声を出しながら尻餅を付いていた
『だ、大丈夫か?』
レヴァンは思わず手を差し伸べた
『あ、ありがとうございます。だ、だ、だ、大丈夫です』
少女は緊張した趣でレヴァンに向き直り手を掴んだ
『悪いな。少し臭いにつられてしまって』
我ながら恥ずかしい
いい匂いにつられて前を見ていなかったなんて
『わ、私の方こそすみましぇん。』
あ、噛んだ
『あぅ』
その少女は照れ臭そうに頬を赤らめた。
『それじゃあ失礼します』
そう言って立ち去ろうとした瞬間
グーーーーーー
少女の腹の虫がうなり声をあげた
『あ、あ、』
物凄く顔を赤くして少女は俯いてしまう
『お腹減ってるのか?』
レヴァンは思わずそう問いかける
『い、いえいえ全然』
グーーーーーー
そう言いかけた所で再び少女のお腹が鳴る
『はは、よし!少し待っててくれ』
そう言って走ったレヴァンは屋台で鶏串を2本買って戻ってくる
『ほら!』
レヴァンは鶏串を1本少女に差し出した。
『い、いえいえ、初対面の方にそんなの』
グーーーーーー
またまた少女のお腹が鳴る
『お腹の方は良い返事だな』
レヴァンは笑いながら少女の手に鶏串を渡した
『あ、ありがとうございましゅ』
あ、また噛んだ。
少女は再び顔を赤らめた
そう言って俺は先に鶏串を口にする
『何これ!旨すぎる』
タレに濃厚に絡むような味わい。外はパリパリ中はジューシー噛む度に味と言う味が滲み出てくる。例えるならそう
『神だ!』
レヴァンはつい口に出して叫んでしまう。
『やば、声に出てた』
少し恥ずかしくなり慌てて口を塞ぐ。
目の前の少女は少しキョトンとしていたが、その後すぐに笑い始めた
『あはははははは』
『わ、笑うなよ!』
恥ずかしくなり思わずそう突っ込む
目の前の少女は笑いながら口を開く
『だって、神って。ふふ、これは神じゃなくてジュリバードの肉ですよ』
知ってるよ!
例えてみただけだよ!
『そ、そんなに笑うなら食べてみろよ!』
『はい!いただきます!』
そう言って少女は鶏串を口にした
『わあ、おいひいです』
ほのぼのした笑顔でリリアナが微笑んだ
『な?神だろ?』
『はい!神ですね!』
二人でそんなやり取りをして笑顔を見せあった
『ははは、そう言えば名前は?』
『ふふ、私はアイラと言います』
その少女は名を名乗ると軽く微笑んだ
『アイラか!俺はレヴァン。よろしくな!』
『はい!よろしくお願いします!私の事はアイラと呼んでください』
少女は一礼をする
『分かったよ。アイラ!なら、俺の事はレヴァンと呼んでくれ!』
『呼び捨ては少し失礼な気もするのでレヴァンさんと呼ばせて貰いますね!』
なんて、礼儀正しい子なんだ
何処ぞのロリ金髪にも見習ってほしいな。
感動しつつレヴァンは割と本気でそう思っていた。
『それより、何か用事あったんじゃないのか?』
さっき急いでいた様に見えたけど。
『あ、そうでした!忘れてました!』
少女はハッと思い出した様にアタフタとし始めた
『早く行った方がいいんじゃないのか?』
『は、はい!失礼しますね』
そう言いつつ少女は走って行く。その後ろ姿を見ていると
『フニャ』
少女は思いきり転んでいた
『だ、だ、大丈夫でふ』
何も聞いていないのに噛みながらそう話すアイラに思わずレヴァンは微笑んだ。
『その場所まで送っていこうか?』
『い、いえいえ。迷惑になるんで大丈夫でしゅ』
この子凄い噛むな
『そうか?』
『は、はい!では、失礼します』
そう言って振り返って走っていったアイラの後ろ姿を見ていると再び
『ぐにゃ』
変な奇声を発しながら転んでいた。
『すみません。一緒に来てもらって』
最終的に俺はアイラを目的地まで送ることにした
『気にしないでくれ』
俺はあくまで冷静にそう切り返した
『それにしてもいいのか?俺が付いていっても』
自分から提案しておきながら少し不安になる
『はい!大丈夫だと思います!』
アイラは凄く可愛らしい笑顔を向けてくる、
リリアナに負けず劣らずの天使か
『ならいいんだが』
そもそも用事の内容すら知らないんだけどな、俺
『もう少しで約束の場所なので!』
約束と言うことは誰かと会うと言う事か
『誰かと会う約束なのか?』
『はい!』
『ますます俺が行っていいのか分からないな』
『大丈夫ですよ!』
天使の様な笑顔を向けてくるな。悶えてしまいそうだ
『その方は昔、森で怪我をしてた私を助けてくれて。さらにそれから毎月一度は会いに来てくれるんです!』
ほお、優しい人間もいるもんだ。
『それは、いい人だな!どんな人なんだ?』
『はい!綺麗な金色の髪をしていて、お人形さん見たいな顔立ちをしている方なんです』
へえ、そんな人間がマイ・エンジェル・リリアナ以外にもいるんだな。まさか、同一人物では無いよな
『俺もその子に良く似た友達がいるよ』
『へえ、奇遇ですね!その方レヴァンさんと同じ制服を着ているんで知り合いかも知れませんよ!』
ん?俺と同じ制服を着ている?
こんな昼過ぎに俺と同じ制服を着て城下町にいるって事は
『あ、あの方です!』
走って行くアイラの先には
俺の頭の中に浮かんだ人物と同じ人物が立っていた。
怒りのオーラを発しながら
『な、何故、レヴァンがここにいるのですか?』
うん。その疑問は最もだ
とりあえず落ち着こう
よし!冷静に冷静にだぞ!
『よ、よお!奇遇だな!リリアナ』
『そうですね。奇遇ですね。レヴァン』
よし。ちゃんと返せた!
『あれ?レヴァンさんとお姉さんお知り合いですか?』
首をかしげるアイラに俺は一言こう言った
『おう!リリアナは俺の天使』
回し蹴りが俺の横腹に飛んできた。
『ぐおおおおおおおお』
『アイラの前で気持ちの悪い事を口走らないで下さい。蹴りますよ?』
いや、もう蹴ったじゃん!
『レヴァンさん。だ、大丈夫ですか?』
アイラが心配して悶える俺に駆け寄ってくる。
うん。天使だ!何処ぞの貧乳も見習えバーカ!
『せいっ』
『がふっ』
思いきり踵落としが飛んできた。はじめて食らう踵落としの威力に変な奇声が出てしまった。
『私が心を読めると忘れているんですか?』
俺、何回心を読まれただろう
いい加減学習しないと体がもたない。
『すみませんでした』
俺は三つ指を付いて謝った
『まあ、いいです。それよりどうしてレヴァンとアイラが?』
ようやく最初の質問に戻った
『レヴァンさんがお腹を空かせてる私に鶏串を買ってくださったんです!』
『ナンパですか』
何故そうなる??
今、天使アイラが説明してた内容を聞いてなかったのか?
『俺がお腹を空かせてるアイラに鶏串を買ってやったんだって!!』
俺は思わず声をあげてしまう
『要するにナンパですよね』
『え?ナンパ何ですか?』
おいおい。ついにアイラまで便乗してどうする?
『ナンパじゃねええええ』
過去一番の声で叫んでやった!俺が二人を見ると、二人は、、、引いていた
『うるさいですよ。』
『め、迷惑になると思います』
二人に痛烈批判されもう、俺の心はズタズタだ。
『まあ、とりあえずレヴァンは置いときましょう。アイラ元気でしたか?』
『はい!お姉さんも元気ですか?』
『私は元気ですよ』
二人は楽しそうにやり取りしている、俺はと言うと地面で拗ねている。
『少し大きくなりましたか?』
『そうなんです!身長が少し伸びたんです!』
『ミアおばさんは良くしてくれていますか?』
『はい!とても優しくしていただいてます!』
『なら、良かったです!』
ミアおばさんはアイラが下宿している家のおばさんの様だ。後々聞いた話だがどうやらアイラには親がいないらしい
『とりあえずご飯でも行きましょうか』
『はい!』
『レヴァンも早くしてください!』
いじけている俺にリリアナが声をかけてくる
『俺も、いいのか?』
『知られてしまったからもういいです。早くしてください』
そう言って先を行くリリアナとアイラに後ろから付いていく事にする。
『まさかレヴァンさんとお姉さんが同じ学院だったなんて!びっくりです!』
軽く歩いて喫茶店の様な場所に入った俺たちはそのお店で話し込んでいた。
『私の方が先輩ですけどね』
『俺の方が大人だけどな』
机越しにリリアナに足を思いっきり踏まれた。
座りの配置はアイラとリリアナが並んで座ってリリアナの対面に俺が座っていた
『いってえ!』
『余計な事を言わないで下さい』
足が未だにジンジンする。
折れてないだろうな
『仲が良いですね!』
笑顔でそう口を開く天使。
今の状況を見て何処にそう感じた?
『な、仲良くないですよ!』
リリアナが声をあげた
流石にそこまで否定されると俺傷付くんだけど。
『でも、お姉さんがそんなに楽しそうにしているのは始めてみますよ!』
え?無表情だけど。。。
『余計な事を言わないで下さい』
リリアナはアイラに軽くチョップをした
『いたっ、えへへ、ごめんなさい』
舌を軽く出して謝罪するアイラ。何故これ程可愛いのだろうか。
『アイラで変な事を考えたら殺します!』
何やら恐ろしい事を口走るリリアナに思わず俺は縮こまった
『ふう、美味しかったです』
ご飯を食べ終わったアイラがお腹を擦りながらそう口を開いていた。一々可愛い
『アイラ!レヴァンにお礼を言ってくださいね!』
『ご馳走さまです!』
どうやらいつの間にか俺が奢る話になっている。
まあ、別に良いけど
『私少しおトイレに行ってきますね!』
少し照れ臭そうに立ち上がるリリアナに俺は口を開いた
『一人で大丈夫か?』
ただ純粋に心配して聞いた筈だったのに。
『この!変態!』
今までで一番強く足を踏まれた。本当に純粋に心配しただけなのに。
『ふふ、リリアナさん落ち着いて下さい!大丈夫ですよ』
アイラはリリアナを宥めつつそう返答してきた。
やはりこの子は天使だ
アイラが立ち去って直ぐ
リリアナが睨みながら口を開く
『アイラに変な事を言わないで下さい。』
『違う!あれは本当に心配して』
『まあいいです。それよりも偶然って怖いですね』
恐らく偶然俺とアイラが出会って偶然アイラがリリアナの用事の招待だった。と言うことだろう。
『あ、ああ。でも本当に偶然何だぞ?』
アタフタしながら俺がそう言うとリリアナはため息を一つ吐いてから口を開く
『わかってますよ。そもそもレヴァンがそんなに意地らしい人だったら口を利きませんし!』
良かったあああああああ
意地らしく無かったお陰で
嫌われなかったああああああ
俺は心の底から安堵した
『レヴァンは本当に興味深いですね。』
そう発言したリリアナが妙に大人っぽく見えて不覚にもドキッとした。
アイラがトイレに立って20分ほどが経過した。
まだ帰ってこないアイラに俺とアイラは不安を隠せずにいた。
『遅すぎるな』
俺は思わず二人の間に流れていた沈黙を破ってしまう。
『私少し見てきます。』
そう言ってリリアナはトイレがある方向へと向かっていく
それから五分もしない内にリリアナが走って帰ってくる。
『ど、どうしたんだ?アイラは?』
『居ないんです。周辺も探しましたが何処にも』
嘘、だろ?
どうやらリリアナが付いた頃にはアイラの姿は何処にも無かった様だった。
『拐われた、とか?』
どうしても不安を隠せずに俺は口を開く。
嫌な汗が体に流れるのが分かった。
『そんな、まさか』
リリアナも何時もの無表情が少し崩れるほどに困惑していた。
『行こう!』
そう言って俺とリリアナは外に飛び出した。
お金は机の上に置いておいた
お釣りを貰っている暇では無かった
外に出るとやはり様々な人々が行き交っていた。
『こんな中から探すのか』
少し挫けそうになるが挫けている暇では無かった。
『拉致だとすればこんな人々が行き交う中どうやって連れ出したんだ?』
『恐らくは魔術でしょうね』
魔術。リリアナが言うには魔術の中には隠蔽、透化と言った悪用に使用できるような魔法も存在するようだ。
『何でアイラ何だ!』
『あの子顔立ちは綺麗ですからね。恐らくは奴隷商人に売るためではないでしょうか』
至って冷静に話すリリアナだったが手を見ると血が滲むほど強く握っていた。
恐らくは本気で怒っているのだろう。
『リリアナはあっちを、俺はこっちを探すから!』
『わかりました!』
そう言って俺は北へリリアナは南へと走り出した
アイラがトイレに立って少しした頃。
トイレを終えたアイラは手を洗っていた
『ふふ、面白い人ですね!レヴァンさん』
リリアナは少し微笑んで手を洗い終える
『早く戻りましょうかね』
そう言ってトイレから出ようとすると目の前に一人の男が立っていた
『だ、誰ですか?』
『なるほど。あの胡散臭い商人が欲しがるわけだな。』
そう言うとその男はアイラに近付く
『や、やめてください!』
『隠蔽。』
男がそういった刹那、アイラの姿は誰にも認識されなくなってしまう。
『今のお前は誰にも認識されない。大人しく付いてくれば痛い思いはしないぞ?』
『嫌です!』
『昏倒』
その男性にアイラは抵抗しようと試みるも何やらまた魔法を唱えられてアイラは意識を失った。
『ふ、どうせ、奴隷として売られるのだ。あの商人に渡す前に少し可愛がってやるか』
そう言うと男性はアイラを担いで立ち去って行く。
リリアナは焦っていた
『私が、しっかり見ていなかったせいで。』
走りながらふとアイラとの出会いを思い出していた。
リリアナがアイラと出会ったのは四年ほど前。
まだリリアナが10歳の頃だ
小さい頃から魔法を扱う事に優れていたリリアナは一人で森を散歩していた
リリアナが散歩していた森は魔獣が出るものの、その魔獣
に遅れを取らないほどの実力をリリアナは持っていた。
『ふう』
リリアナは一息付いた。
目の前には風の魔法。ウィンドで切り裂かれた魔獣ヴェアウルフが倒れていた。
『やはりこの森は魔獣が多いですね』
リリアナに親は無くリリアナはミアおばさんと呼ばれるパン屋のおばさんの家に下宿していた。現在は散歩がてら回復効果のあるパンの原料となる薬草を探しに森へと来ていた
『あ、ありました』
魔獣と合間見えた場所から少し歩いた所にリリアナは薬草を見つけた。
それを摘んで帰路を歩いていると魔獣の遠吠えの様な鳴き声を聞いた
『近いですね』
その鳴き声はかなり近くから聞こえていた
少し進むと目の前に魔獣ヴェアウルフがいた。
しかしヴェアウルフが見ていたのはリリアナでは無く一人の少女だった
唸り声をあげるヴェアウルフにその少女は怯えていた
『や、やめてください。来ないでください』
しかしヴェアウルフに通じる訳も無くヴェアウルフは一歩ずつその少女に近寄ってくる
『ウィンド』
リリアナが発した風の刃によりヴェアウルフが切り裂かれる。
『ヒッ』
少女は怯えた様にリリアナを見た。魔法と言う物を始めてみたのだろうか
『大丈夫ですよ』
リリアナは無表情だったが決まって優しい声で呟いた
『私は貴方の味方ですよ』
リリアナは少女の頭を撫でた
『貴方のお名前は?』
『アイラ、です』
その少女はまだ少し怯えていたがしっかりと名前を口にした
『アイラ、ですか。良い名前ですね。私はリリアナと言います。』
『リリアナ、さん』
『アイラ、貴方親は?』
リリアナが訪ねると少女は顔を暗くして口を開いた。
『わからない。です、』
『わからない、ですか?』
『私、親の名前も顔も知らないんです』
どうやらアイラはリリアナと同じ孤児の様だった。
『そう、ですか。なら、私と一緒に来ますか?』
リリアナは1つ提案をした
『リリアナ、さんと?』
『はい。』
そう言うとアイラは無言で頷いた。
『なら、行きましょう』
そう言ってリリアナはアイラの手を握って森の出口へと歩き始めた。
そこからは実にスムーズに話が進んだ。
ミアおばさんはアイラの下宿を快く了承した。
リリアナが二年後には学院の寮に下宿する事になる。
その為か寂しくなると感じていた様でミアおばさんは喜んで受け入れていた。
そしてリリアナとアイラは二年間一緒に暮らした。
リリアナが13になりアイラが10歳になった頃にリリアナが学院に入学する時期になる
そこで1つリリアナとアイラは約束をした
『必ず毎月戻ってきます。そして、貴方に降りかかる火の粉を必ず振り払います。だから安心してください。』
アイラは泣きながらも無言で頷いた。必ず助けると約束をした。
『どうか、無事でいて下さい』
リリアナは再び街を走り出した。
『なにいいいい!まだあの子来ていないのか!?』
街中に男の怒号が響く。
リリアナが立ち止まり声の聞こえる路地裏の方を見るとそこには奴隷商人とおぼしき男が立っていた
『は、はい、すみません』
一人の男が謝罪をしている
『早く探し出せ!買い手はもう決まってるんだ!』
奴隷商人の男は怒りに身を任せてそう叫ぶ
『赤髪の女なんて早々居ない!早く見つけ出せ!』
赤髪の女。アイラと一致する
一人の男が走り出して行った後、リリアナは奴隷商人の元へと向かった。
『ったく。何やってんだ』
その男の肩を叩きリリアナが冷酷な声で口を開いた
『赤髪の女性について少し話を聞かせて貰いますね』
『な!?誰だお前は!』
奴隷商人の男はそう口にするがリリアナは改めて冷酷に吐き捨てる
『手荒な真似はしたくありませんのでなるべく早く話してくださいね』
リリアナはそう口を開いた
レヴァンは街を颯爽と走っていた。
『くそ、何処にいるんだ』
全く検討も付かない。
城下町は只でさえ広く一日で一人の少女を探すのは困難だ
それに隠蔽とか言うややこしい魔法まであると考えたら心が折れそうになる。
俺は自分の頬を叩いた。
余計なことを考えたらダメだ
とにかく今はアイラの安否だ
『急ごう。』
再び走り出そうとすると少し先に不自然な男性が歩いていた、
あいつ、なにか担いでるように見えるのに目には何も見えない
俺は隠蔽の魔法の事を思い出した
まさか、な。そう思って
俺はその男の後をつけた
後をつけると男は人気の無い倉庫の様な場所にたどり着いた。
『ふ、ここらなら大丈夫だろう』
そう言うと男は担いでいた何かを下ろすような仕草を取る
すると、何もなかったそこから気を失ってるアイラの姿が現れた。
あいつ、やっぱり隠蔽の魔法か
『ふふ、良いな女だ。奴隷として売られる前に俺が可愛がってやる』
その男がアイラの服に手をかける直前に俺は飛び出した
『何してんだ、てめえええ』
『がはっ』
完全に不意を突かれた男はレヴァンの拳にクリーンヒットする
『何だ、てめえ』
男は尻餅を付きつつ俺を睨んできた。
『アイラの友達だ』
そう。自分の友達を拉致して只で済ませる訳がない
『へっ、そうかい!なんだ?俺とやるってのか?』
男は立ち上がるとそう口を開いた
『ああ、やってやるよ!』
『おもしれえ。隠蔽』
直後男の姿が消えた
『ゴホッ』
目には見えないが確かに男の拳はレヴァンの腹へと繰り出された
『隠蔽、か。』
その返答はなく次々と繰り出される男の拳をレヴァンは全てもらってしまう
『終わりだ!くそ餓鬼!』
『ガハッ』
最後に思いっきり顎に一撃を食らいレヴァンは倒れた
『へっ、邪魔するからそうなるんだ。てめえは黙ってそこで見とけよ』
そう言って隠蔽を解除し再びアイラの元へと歩き出す男の後ろ頭にレヴァンは思いっきり拳を叩き込んだ
『ガッ』
『ハッ、こんなの、屁でもねえ』
俺は口元の血を拭ってそう叫ぶ
『くそ餓鬼がああああ!昏倒』
そう言われると頭が急にくらくらしてくる。
これも、魔法か。このままじゃ寝ちまいそうだ。
『寝とけ』
男はそう吐き捨てる
レヴァンは自分の頬を思いっきり殴った
『ガッ』
『は?てめえ何してやがる』
驚いた様にその男は口を開いた
『へ、目が覚めた』
『てめえ。隠蔽』
そう言うと男の姿は再び消えまた拳のラッシュが来た
『ガッ、ゲホッゲホッ』
『へ、見えねえだろ』
何とか対抗しようとするがその拳は1つも当たらない
『終わりだあああああああ』
綺麗なアッパーを受ける
男は勝ったと確信した様だ。
俺は倒れそうになるが直前で耐えて目の前に思いっきり拳を叩き込んだ
『ゴホッ』
男は後ろに倒れた
『てめえ、』
『へ、一発、当ててやったぜ』
正直意識が朦朧としてくる
しかし、ここで気を失ったら
アイラが、
『てめえを殺して俺の隠蔽で何処かに捨ててやるよ!』
男は立ち上がり鼻血を拭うとナイフを取り出した
『くそ、が』
『しねええええええええ』
俺は死を覚悟して目を閉じる。
すると聞き覚えのある声が聞こえてきた。
『ヴァくーーーーーーん』
『あ?何だこの声』
男は手を止めた
不味い。レヴァンはそう思っていた。声の正体が分かったからだ
『おい、死にたく無けりゃ今すぐ隠蔽で逃げろよ。無駄だとは思うけど、死ぬぞ』
『は?この餓鬼今更脅しか?』
男はヘラヘラと笑っている
『誰が助けに来た所で俺の隠蔽の前には無力』
『おい。』
男の後ろから凍えそうなほど冷酷な声が聞こえた
『な』
男は思わず距離を取る
『義姉さん』
俺はその声の正体の名前を呼んだ。
『レヴァくんをやったのは貴様か?』
『何だてめえは!』
男は少し焦ったが目の前に現れたのは美人な女だったため
余裕の笑みを再び浮かべる
『何だ女かよ。俺に犯されるのが希望か?』
男はヘラヘラとそう口を開いている
『私の問いに答えろ。レヴァくんをやったのは貴様か?』
俺は焦っていた。
何故なら今の義姉さんは恐らく本気だ。殺しかねない。と
『へへ、そうだが、だからどうした?』
『死ね』
義姉さんの手の平から氷柱の様な物が男に飛ばされる。
その氷柱は男の右肩に刺さる
『ぎ、ぎゃああああああ』
男は思わず悲鳴をあげた
『レヴァくんをボコボコにするとはいい度胸だ。』
議論さんは一歩ずつ男に近付いていく
『隠蔽』
男の姿が消える。
しかし、義姉さんが拳を放つ
すると悲鳴と共に何かが転がっていく
『ば、バカな。俺の隠蔽が』
男の姿が現れる。
『終わりか?』
義姉さんは再び男の元へと歩き始めた
『く、くそ!昏倒』
男は勝ち誇った笑みを浮かべる。しかし義姉さんは平然と歩いている
『ば、バカな』
『バカは貴様だ。私にあの程度の魔法が通用すると思っているのか?』
男の顔が恐怖に変わる
『わ、分かった。謝る、謝るから勘弁してくれ』
男は怯えたようにそう口を開いた。が、義姉さんは止まらない
『黙れ。』
義姉さんが男の首元に蹴りを入れた
『ゴギャ』
奇声を発しながら男が再び飛ばされる。もう、男の意識はなかった。
しかし義姉さんは止まらなかった。
殺してしまう。そう思った俺は義姉さんの腰を抱き止めた
『義姉さん。落ち着いてくれ。頼むから!』
『離せ!アイツはレヴァくんを殺そうとしたんだぞ?』
正直あんな奴が死んでもどうでもいいが義姉さんにそれを実行してほしくはなかった
『義姉さん。俺は義姉さんに人殺し何てして欲しくない!』
『しかし!』
義姉さんは何かを言おうとするが口を閉じた。
『悪かった。冷静では無かった』
義姉さんのその台詞を聞き俺は安堵してその場に崩れ落ちた
『レヴァくん!』
義姉さんが叫ぶが俺の意識は遠ざかっていく。
一方で
『も、もうやめてくれ』
奴隷商人の男が叫んだ。
『は?』
リリアナはギロリと男を睨んだ。
『もう、あの少女には手を出さない。』
リリアナの周りには奴隷商人の男の護衛が転がっていた
死んではいないが意識は失っていた
『一般人を奴隷に無理矢理するなんて、貴方はどうかしていますね。』
リリアナは無表情だったが怒りのオーラが漂っている
どうやら奴隷商人の男がアイラを見付け奴隷として高く売れそうだ!と計画し、裏の職業の男に依頼をしたそうだ。
『それで?アイラは何処にいるんですか?』
『そ、それは俺も知らない!本当だ!』
奴隷商人がたじろいでいる。
すると突然一人の男が飛んできた。
『グホッ』
その男が奴隷商人の顔にクリーンヒットして奴隷商人は倒れた
『土産だ。リリアナ』
リリアナが振り向くとそこにはいる筈の無い学院の総括でありレヴァンの義姉であるエルヴィが立っていた
『そ、総括さん』
思わずリリアナが萎縮する
『派手にやったな。リリアナ』
エルヴィが辺りを見渡してそう口を開いた
『すみません』
『貴様が謝るのはレヴァ君を連れ出した事だ。この男達は遅かれ早かれ裁かれていただろう。』
『アイラは、アイラ、それにレヴァンは!』
リリアナがそう言いかけるがエルヴィが止めた。
『落ち着け。二人とも無事だ。詳しい話は後で聞かせて貰う。いいな?』
そう言うエルヴィにリリアナは無言で頷いた。
『先ずはこの男達を警備隊に引き渡す。』
そう言いエルヴィが連絡してしばらくすると警備隊の人達が突入してきて男達を連れていった
『ご協力感謝致します!』
警備隊の隊長の様な男が敬礼をしつつエルヴィにそう話す
『気にするな』
エルヴィがそう言うと男は、では!と立ち去っていった。
『総括さん。』
リリアナがエルヴィに近寄ってくる
『詳しい話はレヴァ君が起きてからにしよう。』
そう言うエルヴィの心の声はやはりレヴァンの事ばかりだった。
『ここは』
俺はふと目が覚めた。
見えるのは天井、何処かの部屋なのか?
ふと自信の右手に違和感を感じて目を向ける
『義姉さん』
そこには義姉さんがレヴァンの手を握って眠っていた。
外は暗かった。
俺はどの位気を失ってたんだろうか。
『目が覚めましたか?』
ふと声の方向を見いるとリリアナが立っていた
『リリアナ』
『安心してください。六時間程度気を失ってただけなので』
それでも充分ヤバイと思うが。。。
俺は思わず苦笑いをした
『義姉さんとはもう、話したのか?』
『まだですよ。レヴァンが起きてからにする。と言っていたので。』
そうか。良かった。
俺は心を安堵させた
『リリアナが義姉さんと一対一で話すと大変な事になりそうだからな』
そう。義姉さんは俺以外の意見は正直聞かなさそうだ。
『はい。私も正直良かったと思っています』
そんな話をしていると義姉さんが目を擦りながら起きる
『んー、おはよお。』
と呑気に言っていたが直ぐに血相を変えて向き直った
『レヴァくん!!大丈夫なの??』
そう言って俺の肩をガシリと掴んだ、少し痛い
『あ、ああ。大丈夫だよ』
俺は安心させる様にソッとそう告げた
『そう、良かったあ』
義姉さんは両肩に乗せていた重荷を下ろすように肩を下ろした
『なら、少し質問をするけどいいよね?』
義姉さんはニコニコした表情をしたままそう口を開いた
『『は、はい』』
その威圧感に俺とリリアナの背中に一筋の嫌な汗が流れた
『ふーん。なるほどね』
一通りの説明は終えたが果たして義姉さんに伝わっただろうか。。。
多少の不安が頭を過る。
『うーん、レヴァくんは良いんだけど、リリアナはどうしよっか』
義姉さんは考える姿勢を取る
今この瞬間、俺は堪らなく怖かった。そりゃもう。本当に
隣を見るとリリアナの頬にも一筋汗が流れていた。
このまま緊迫な空気に耐えれるだろうか。
そんな事を考えていると義姉さんが口を開いた
『まあ、今回リリアナは不問にしておくね』
衝撃の台詞が俺とリリアナの頭の中を駆け巡った。
義姉さんが、、条件なしで、不問にした
『ち、ちなみに不問とした理由はなんでしょうか?』
おそるおそる口を開いたリリアナ。まあ、気になるよな
『んー、レヴァくん。』
『はい!』
唐突に名前を呼ばれて思わずレヴァンは立ち上がった
『リリアナって誰かに少し似てない?』
そう言われてリリアナを見ると確かに少し似ていた。
義姉さんの実妹で俺の義妹であるあの子に。
『だから一度は許す』
やはり適当な義姉だなとは思うが今回はそれに助けられた
まだ、家を出てきて三日ほどしか経っていないが少し義妹について懐かしく感じる
義姉さんは二年近く会ってないんだもんな。そう思った
『そ、それほど適当に決めて良いのですか?』
リリアナがそう話すと義姉さんはキリッとした顔で口を開いた
『と言うか、ぶっちゃけ二人は今回は何も問題行為を起こしてないよ!むしろ称えられる程だけど、ただ私の個人的な私情で私に内緒でレヴァくんを連れて出掛けたのが気にくわなかっただけだよ』
本当にぶっちゃけだな。
俺は思わず苦笑いをした。
やっぱり義姉さんは義姉さんだった。
『あ、そう言えばアイラは?』
こんなこと言ってはいけないのは分かっているがすっかりと忘れていた
『アイラは無事です。ミアおばさんが連れて帰りましたが』
そうか、無事なのか。良かった。
俺はホッと一息ついた
『レヴァくんが目覚めるまでここにいる!って言っていたけどね。流石にもう遅いから』
義姉さんが優しい口調でそう言う。
子供にはとても優しい義姉さんである。
『アイラからの伝言です。また、会いに来て欲しい。と』
俺は直ぐに頷こうとしたがふと義姉さんの方を向く。
また、街に出掛けるとなると怒られるんじゃないか。
しかし義姉さんは笑顔で
『あー言う子に会いに来るって言うなら義姉さん何も言わないよ?』
話が分かる義姉で良かった。
まあ、子供限定だけど。。。
『それからここに来る時は私の許可をちゃんと貰ってね!また、内緒でとかは駄目だよ!それからリリアナ』
『は、はい』
いきなり名前を呼ばれてリリアナは立ち上がって返事をする。ビビりすぎだろ、気持ちは分かるけども
『あなたがここに来る時にレヴァくんを連れてきてあげてね』
義姉さんがそう笑顔で言った
俺の頭の中には衝撃が走っていた。
義姉さんが、自分以外の女性との、外出を認めただと?
『はい!』
リリアナは少し微笑んだ?ように返事をする。
『それからレヴァくん!』
『は、はい。』
『レヴァくんは罰として一週間とはいわず一年間私と同じベッドで寝る事。』
やはり、このブラコン重症だ。
それから俺は何とか交渉をして一緒に寝るのを一ヶ月に留める事に成功する
『もう馬車は走っていないか』
もうすっかりと日が暮れているため馬車は走っていなかった。
『そうみたいですね』
『義姉さんは馬車に乗ってきたんだろ?』
『違うよ?走ってきたよ』
『『え?』』
俺とリリアナに再び衝撃が走る。馬車で六時間の距離を走って、だと?
『義姉さん、俺らでも走って帰れる距離なのか?』
『あー、無理だよ?レヴァくん達だと半日はかかるよ』
なら義姉はどうやって来たのだろうか。
『あ、朝まで待とうか』
『そ、そうですね』
俺とリリアナは顔を見合わせてそう言った
『ちなみに義姉さんはどうして俺の場所が?それにピンチの時に丁度来てくれたし』
俺が疑問を口にすると義姉さんは振り返って口を開いた
『義弟探知。お義姉ちゃんの特殊能力だよ』
なにその名前聞くだけでもう怖い能力は
『レヴァくんが殴られたりピンチになると私に伝わる様になっているの!』
もちろんそんな魔法は無い。
魔法があるとすればそれはブラコンと言う名の魔法だ。
『ち、ちなみに俺が殴られたのを察知してから来たのか?』
『そうだよ?』
嘘だろ?俺が殴られてから義姉さん登場まで十分も経っていないぞ。。。
リリアナも絶句していた。
恐らくは俺の心の声を読んだのだろう。
『よし、宿を探そうか』
義姉さんは前を向き歩き始めた。ブラコンは恐ろしい
リリアナが背中をちょんちょんとつついてくる
『どうした?』
俺が振り向くとリリアナは本当に本当に小さな声で一言
『ありがとう、ございました』
そう呟いた。
その顔は微笑んだ様に感じたけど、気のせいだよな。。
『さ、行きましょうか』
リリアナのその台詞と共に俺達は義姉さんの後ろを追いかけた。