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俺の序列は最下位?



王立学院キンガルム

主に魔術・武術・剣術といった戦闘術を教えている学院。

この学院にはランキング制度がありそれぞれの能力に合わせて順位が変わる。

俺、レヴァン・アルフォレイはここ王立学院に辛うじて入学する事が出来た。

そう言うのも本当にギリギリだった。

入学試験の学科ランキングでは断トツで最下位

もちろん、実技試験でも断トツで最下位だった。

これは、そんな俺の最下位ながらも楽しく充実した学園生活の話だ


『よお!レヴァン~』

そう声をかけて来るのはゴツい体格と頬に一筋の傷がある男性学内ランキング8位のアルヴェン。異名は守護神

『ちょっと彼は今わたくしと話をしてるんですのよ!』

そう怒り気味に口を開いているのは白髪の綺麗な髪をして修道服を着ている学内ランキング6位のアリシア。異名は風雷の聖女

『ハッ、独占しようたってそうはいかねえな』

『やるんですの?やりましょうか?やりますよ?』

いつものごとく二人は口喧嘩を始めていた

『そこの二人は忙しいみたいだし私と遊びいこ』

そう言うのは赤髪を一本に結びポニーテールをしている学内ランキング10位のサレン。異名は赤炎の爆姫

『おい、糞ビッチ、レヴァンを何処に連れていく気だ!』

『そうですわ!独占禁止法を結んだばかりなのに!』

どうやら俺の知らない所でそのような法律が出来てしまったようだ。

『はあ?何いってんの?私はそんなの結んでないわ!』

『やれやれ喧嘩をするな』

そう仲裁に入ったのは学内ランキング2位のセルヴェ。青髪で細身だが剣神とまで呼ばれている男性だ。

『彼はこれから私と訓練をするんだ。退いてくれたまえ』

『はあ?何いってんだ?頭がついにバグれたのか?』

『いくら、剣神でもレヴァンを連れ去ると言うならわたくしも黙っていませんわ!』

『さっさとレヴァンを渡しなさいよ!このモヤシ!』

三人がそれぞれ怒ったように反論をする

『も、モヤシだと?やると言うのかこの私と』

モヤシと言われたのが癪に触ったのか殺気が溢れ出す

『やめたまえ!このように人がたくさんいる場所で揉め事などと言う下劣な行為は!』

『そうですね。このような場

所で揉めるとは不愉快です』

そう言いつつ近寄ってきたのは学内ランキング7位のハルマス。眼鏡を掛けていていつも本を読んでいる。異名は測定不可能の知能

そしてそれと同じく隣で口を開いているのは学内ランキング5位のリリアナ。金色の髪で身長は少し低い。異名は奇怪姫

『は?急に入ってきてんじゃねえよ!』

『そうですわ!今わたくし達は負けられない戦いに瀕しているのです!』

『レヴァンに近寄るな!触れるな!見るな!』

『君達には関係の無い事だ。でしゃばるんじゃない!』

もう皆が何を言っているのか意味がわからなかった。

『何を言っている?彼はこれから僕と読書をする約束があるんだよ?』

ハルマスがそう言うと隣でリリアナがギロッと睨んでから口を開いた

『読書なら一人でしてください。彼は私が相手をしておくので』

アリシアは吐き捨てるように言うとレヴァンの手を握る

『ああああああああああ!てめえ、何を握ってやがる!』

『レヴァン保護条約8条触れるには五人以上の許可を貰うこと!に反してますわ!』

『その汚い手を離しやがれええええええ』

『はっはっはっ、いいか?俺が冷静な内に手を離すんだ』

『どうやら君とは一度決着をつけた方が良さそうだね。』

『望むところです!ここら辺で決めるとしましょう!誰がレヴァンを独占するかを。』

俺はそのやり取りを見ながら1つ大声で叫んだ

『どうしてこうなったんだあああああああああああああああああああああああ』

時は少し前に遡る


『最下位。。。だと?』

入学試験を受け合格の通知が来てウキウキしたまま王立学園にやって来たレヴァンは自身の成績に絶望した

『嘘、だろ?流石に上位では無いとは思っていたけどまさか、最下位だとは』

レヴァンはその場に膝をついて落ち込んだ

『はああああ、大手を降って村を出てきたのに』

レヴァンは合格の通知が来た瞬間に浮かれまくり俺は学園で一位を取って帰ってくるぜ!と宣言をしてしまっていた。家族には微妙な顔をされた。それにレヴァンにはある目的があった。行方不明になってしまっている義姉を探す事だ。

『どうなるんだろう。ここに入学出来れば姉さんの手懸かりがあるかもしれないと思って入学を希望したけど』

これから起こる入学式がこれから起こる波乱の幕開けだとはこの時のレヴァンはまだ、知るよしも無かった。


入学式が行われる体育館に到着したレヴァンはその大きさに呆気を取られていた。

『でけえええええええ』

思わず興奮を隠せずにはしゃぐレヴァンに後ろから声をかける人物がいた。

『凄いはしゃぎっぷりだねえ~。少年』

振り向くとそこには黒髪の綺麗な顔立ちをしていてスラリとした体型の少しボーイッシュな女性が立っていた。

『あ、あの、始めまして』

その美しさに思わずレヴァンは挨拶をする

『始めまして!少年!君が噂の最下位少年かい?』

何故それを??

思わずレヴァンは顔がひきつってしまう

『はっはっはっ、その反応だと当たりの様だね!』

『何故俺の事を知っているんですか?』

レヴァンは疑問を直接口に出して問いかける

『君は有名だからね!何せ学園入学史上最低の成績で入学に成功をした男だからね!』

嬉しくない知られ方をされてしまっていた。

『君、名前は?』

その女性はレヴァンに名前を聞いてきた

『レヴァン。レヴァン・アルフォレイです。』

レヴァンは自己紹介をして頭を下げた

『アルフォレイ。。。だって?』

小さい声でそう呟いたその女性は直ぐに普通の声で話始める

『レヴァンか。いい名前だ。私はレルバリスと言う。君とはまた会う機会があるだろう!よろしく』

その女性。レルバリスは自己紹介をすると後ろを振り向きそのまま歩いていった

『レルバリスさんか。綺麗な人だったなあ。』

そう呟くとレヴァンは入学式が行われる体育館の中に足を踏み入れた。


入学式が行われている。

レヴァンが入ると辺りがざわつく。それが、レヴァンに取っては恥ずかしくて堪らなかった。

何故ならばそのざわめきは最下位入学のレヴァンを見てのざわめきだったからだ。

『恥ずかしい』

思わずレヴァンは口に出してしまっていた。

入学式は滞りなく行われていた。レヴァンは何気なく過ごしていたが、ある人物の登場でレヴァンは思わず吹き出してしまった

『静粛にしろ!私が学園の総括を担当しているエルヴィ・アルフォレイだ!』

そこにはレヴァンが探しに探していた義姉の姿があった

『義姉さん!?』

周りの目も暮れず思わずレヴァンは声をあげた

すると辺りはざわざわとし始める。

『うるさい!静粛にしろ!貴様もだ!レヴァン。大人しく座っていろ!』

レヴァンは義姉の威圧に思わず、はい!と返事をしてその場に座った。

辺りはまだ少しざわついていたがレヴァンの心情はそれどころでは無かった。


入学式が終わるとレヴァンは総括である義姉の部屋へと呼び出されていた。

『緊張してきた。義姉さんと会うのは2年ぶりか』

2年前に行方不明になった義姉との久しぶりの対面。

レヴァンは物凄く緊張していた。

『と、とりあえず』

レヴァンがドアを叩くと中から入れ!という声が聞こえた。その声は何処か懐かしかった

『し、失礼します!』

そう言いつつ扉を開けるとそこには懐かしい義姉の姿があった。

レヴァンは思わず泣きそうになる。

『久しいな!レヴァン』

昔と変わらない笑顔でエルヴィは笑った。

その笑顔で思わずレヴァンの目は決壊した

『ねえざん』

『ど、ど、どうした?レヴァン体調でも悪いのか?』

目の前で涙を流すレヴァンにエルヴィはアタフタと戸惑っていた

『どごにいだんだよおおお!にねんがんもおおお』

もうレヴァンの涙は止まらなかった。

涙腺封鎖できません

『レヴァン、いえ、レヴァくん。ごめんねえええええ』

エルヴィはレヴァンに抱きついた。

クールに決めていたエルヴィは二年前のエルヴィに戻った

そう。二年前の駄々甘だった義姉に

『ねえざあああああん』

レヴァンは二年間の寂しさから思わずそのまま抱き締め返した。

しばらくして冷静になった二人は椅子に座り話を始めた。

『で?義姉さん?今まで何処にいたんだ?』

レヴァンはずっと疑問に思っていた事を聞いた。

『うん!少し作戦のために』

エルヴィは二年前の駄々甘姉の話し方に戻り話していた。

『作戦?』

不思議そうにレヴァンが首をかしげる

『だってあの家、私がレヴァくんと添い遂げるのを反対するんだよ?』

そう。エルヴィはとてつもないブラザーコンプレックス、もといブラコンだったのだ。

『そ、添い遂げる?』

レヴァンは忘れていた。

エルヴィが尋常ではないほどレヴァンに愛着を持っている事を

『そう!レヴァくんと私が結婚するのはダメだって』

それは、、、ダメだろう。

とレヴァンも思っていたが

反対するとまた行方不明になられても困るので軽くいなす程度にしておいた。

『だからね!レヴァくんがこの由緒ある王立学院で1位になれば流石に結婚を認めるかな?と思って!いやあ、大変だったよ!ここの総括になるためには』

ブラコンとは無敵である!

と言わんばかりの行動力だ。

そしてレヴァンは自分がした行動を思い出した

(だから学園で1位を取るって言って出ていった時に微妙な顔をしてたのか!あれは俺が義姉さんと結婚してくる!と宣言したように捉えられたのか)

自分の行動を深く後悔している横でエルヴィにはずっと

レヴァくん!と言いながら 

抱き締められていた

『ね、義姉さん?俺が1位を取れる筈がないだろ?』

『そうだね、レヴァくんったら、入学不可能な成績を取るんだもん。入学させるのに苦労したのよ。』

(なるほど)

どうやらレヴァンはエルヴィの手回しで入学することが出来ていた様だ。

『でも、レヴァくんなら一位を取れるよ!』

根拠の無い確信が義姉から送られてきた。

そして続けてエルヴィは口を開いた。

『あ、レヴァくんは学内ランキング1位から10位までの年齢問わずの超特進クラスに入る手筈になっているから。』

思わず絶句した。

学園最下位で入学した男が義姉のお陰で特進クラスに入る事となった話。になっていた。

『そ、そんなの無理』

『大丈夫だよ?レヴァくんならレヴァくんは私の弟だもん~。』

義姉の期待が重すぎる。

義姉に愛され過ぎて困ってます。

『で、でも』

『ダメ?』

久しぶりに会った義姉にこんな顔されては断れなかった

『わ、わかった。』

思わずそう返答をしてしまった

『えへへ~流石レヴァくん』

そう言って甘えてきていた義姉だが突然扉が叩かれ、そして開かれた

『総括、失礼します!』

そう言って入ってきた女性は慌ただしかった

(不味い!義姉さん俺に甘えてる姿を見られたら)

そう思いハッと横を見るとそこにはエルヴィの姿はなく、

仕事をするようであろう机にエルヴィは座っていた。

(はやっ)

うちの義姉はどうやら瞬間移動が使えるようだ。と思わせんばかりのスピードだった、

『どうした?』

何事も無かったかの様に対応する義姉にレヴァンは思わず拍手をしそうになった

『実は新入生と二回生が中庭で揉めている様です』

どうやらレヴァンと同じ様に入学してきた者と去年入学した者が揉めてしまったようだ

『ほお、元気があるな。よし!私がいこう』

不味いとレヴァンは思っていた。 

と言うのもエルヴィの実力は本物のなのだ。

一緒に住んでいた頃村に一匹の魔物が襲ってきたことが会ったがエルヴィは有無問わずその魔物を一撃で撃退してしまったのだ。

そして、その魔物はベテラン冒険者がようやく倒すことが出来るレベルの魔物だった。

(不味い、不味いぞ。義姉さんが行けば確実に殺る。穏便に済んでも退学とかにしそうだしなあ。)

そう思ったレヴァンは口を開いた

『俺がいきます!』

そう言ってレヴァンは総括部屋を飛び出した。

背後からエルヴィの待て!という声が聞こえたがレヴァンは止まる訳には行かなかった


中庭に到着するとそこには二人の男性が今にも切り出しそうに殺気だちながら向かい合っていた

『ストーーーーップ』

そう言ってレヴァンは割って入った。

『ああ?なんだてめえは』

赤髪を逆立てた男はレヴァンに怒鳴り付けた

『待って待って!君、俺と同じ新入生だろ?いきなり揉め事はやめようよ』

レヴァンは必死に説得した

『ああ?てめえにゃ関係ねえだろうが!』

男は再び怒鳴った

『はあ、お前新入生だろ?俺が誰だかわかってるのか?』

二回生の方の男性が口を開いた。その男性の頬には一筋の傷があった

『ああ?知らねえよ!てめえが肩ぶつけて来たんだろうが』

なんてしょうもない理由なんだ。と思わずレヴァンは絶句した。

すると新入生の男の横で同じく新入生であろう女性が口を開いた

『やめときなよ、この人一応学内ランキング8位だよ?』

『な!?8位だと?』

(え?8位なの?)

レヴァンと新入生の男の気持ちが被った。

『くっ、だが男には引けねえ時があるんだよおおおお』

そう言って男は拳を握り走ってくる。

(なんてしょうもないプライドなんだああああああ)

心のなかでレヴァンも叫んだ

その拳が学内ランキング8位の男に届くことは無かった。

その男が拳を打ち込む前に走り込み前に立ちふさがったレヴァンに直撃したのだ

『がはっ』

レヴァンはその場に倒れた。

『い、いふぁい』

そして頬を押さえて上半身を起こした

『お、おい。大丈夫か?』

学内ランキング8位の二回生が声をかけてくる

『ら、らいじょうぶでふ。貴方も大丈夫れすか?』

もちろん学内ランキング8位にもなった男が傷付く筈もないのだが、思わずレヴァンは飛び出してしまっていた 

『お、俺は全然。ほら』

そう言うとその男性はレヴァンに手を差し伸べた

『あ、ありがとうございまふ』

頬が腫れているせいかしっかりと話せない

『てめえ、邪魔してんじゃねえ』

そう言いかけた男の背筋が急激にゾッとした

その理由は直ぐにわかった

奥の方から物凄い殺気を放ちエルヴィが物凄い速さで走ってくる。

『貴様ああああああああ。レヴァくんを殴ったなあああああ!殺す!百回殺す!』

物凄い勢いで来るエルヴィにその場にいた全員がたじろいていた

『ひ、ひいいいい』

先程まで男には引けない何ときんとかと言っていた男が悲鳴をあげていた

『覚悟しろおおおおとおおおおおおおおおおお』

そう言って飛び掛かってくるエルヴィが男を殴るギリギリでレヴァンは抱き止めた

『義姉さん落ち着いて』

『うるさい!私はこいつを殺すのだあああああああ』

『あっちで話そう!な?な?』

『ええええい。はなせええええええええ』

そう叫んでいる義姉さんをレヴァンは引っ張って走っていく。大好きな弟に抱き締められているためか、抵抗する力はあまり強くはなかった


しばらくして総括室に呼ばれたのは何と殴った男ではなく学内ランキング8位の男性のみだった

『おい、私が殺したくて殺したくて堪らないあの男は何処に行ったのだ?』

イライラした様子のエルヴィが付き人の女性をにらむ

『それが、荷物をまとめて逃げ出したようで』

『逃げただと?私のレヴァくんを殴っておいて逃げ出しただと?探しだして連れてこい。この手で始末してやる』

エルヴィはそれはもう怒っていた。レヴァンも始めてみる程の怒りだった。

やはりブラコンは恐ろしい

『義姉さん!もう大丈夫だから!』

『レヴァくんが大丈夫でも私の気が収まらん!せめてボコボコにする位の事はさせて貰わないとな。』

『その件は後程として今はアルヴェン君の話です』 

付き人がそういなすとエルヴィは不本意ながらもそれに応じた。

優秀な付き人さんだな。とレヴァンは思っていた

『それで、アルヴェン。貴様はどうしてほしい?』

エルヴィがトントンと指で机を叩きつつアルヴェンに問いかける。

『はい。この件は俺が肩をぶつかった事が原因です。それに学内ランキング8位にもかかわらず不相応な態度をしたのも事実なので如何なる罰も受ける覚悟です』

アルヴェンは静かにそう話した

『そうか、覚悟の上か』

先程のことでまだイライラした様子のエルヴィはアルヴェンに再び問い掛ける

『ここまで来たら話すがここにいるレヴァンは私の義弟だ。その義弟が殴られた原因は貴様にもある』

エルヴィはキッとアルヴェンを睨んだ。

アルヴェンは静かに目を閉じた。まるでどんな制裁を受け入れるかの様に

『退学とまでは言わん。だがしばらくの間の停学だ。レヴァンの件はともかくガキの挑発に乗った貴様も悪い』

エルヴィは淡々とそう話した

その顔はしっかりとした学園の総括の顔であった

『わかりまし』

アルヴェンがそう言いかけた所でエルヴィは口を開いた

『義姉さん!今回この人は手も出してないし何なら穏便に済ませようとしてたんだ!だから今回は見逃してやってくれよ!』

レヴァンがそう言うとエルヴィはハァと溜め息を吐き口を開いた

『いくらレヴァくんの頼みでも学園の規則で公式の決闘以外の決闘は違反になるんだよ』

エルヴィはそう言ってレヴァンの方を見た。

『どうにかならないのか?』

『ならん!』

エルヴィは断言するように言った

『で、でも』

レヴァンがそう言いかけた所でアルヴェンに肩をポンとたたかれた。

『ありがとうよ。俺のためにここまで言ってくれて。でも、規則を知っていながらやらかしちまったのは俺だから仕方ねえよ』

レヴァンは納得できていなかった。本当にアルヴェンは悪くないと思っていたからだ

事実アルヴェンは相手を引かせようとしていた。

学内ランキングの事があるため自分で引くことは出来ないためだ

『義姉さん』

『なんだ?何を言われても規則は規則だからな?』

そう言うエルヴィにレヴァンは切り札を出した

『もし、見逃してくれるなら俺、この学園の寮の部屋義姉さんと同室で構わな』

『今回の事は不問とする!』

最後まで言う前にエルヴィが今回の件を不問にした。

やはりブラコンは色々な意味で恐ろしい

『ですが総括!規則が』

付き人がそう言いかけた所でエルヴィは再び口を開いた

『うるさい!私が規則だ!貴様にはわからんだろう?2年間も離れていた義弟と一緒の部屋で生活が出来るんだぞ?これは規則なぞ気にしている場合ではない!逃したら一生後悔する!私が』

エルヴィの勢いに呆気を取られ付き人の女性も思わずわかりました!と声をあげていた

『アルヴェン!貴様には感謝する!もう行っていいぞ!』

エルヴィの機嫌は最高潮に達していた

『は、はあ』

アルヴェンは何が起こったのかわからなかった。先程まで停学になりかけていたのにいきなり感謝されたのだから

当然だった

『ふはははははは!』

エルヴィは高らかに笑っていた


エルヴィに部屋番号を教わりまた後で!と話したレヴァンはアルヴェンと共に総括室を出ていた

『良かったですね!停学にならなくて』

そう言ったレヴァンにアルヴェンは申し訳なさそうに口を開いた

『その、何て言うか、サンキュー、な』

どうやら見かけによらずしっかりした男の様だ

『全然気にしないでください!あ、あの義姉さんのブラコンの事は良ければ内密に』

レヴァンはそうお願いした

それはそうだ。学園総括が

大の弟大好きなんて知れたら

威厳もへったくれも無くなってしまう。

『言わねえよ。お陰様で助かったんだしな』

アルヴェンはどうやら内密にしてくれる様でレヴァンは安堵した

『なあ、名前なんてんだ?』

アルヴェンはレヴァンにそう問い掛けた

『レヴァン。レヴァン・アルフォレイです!よろしくお願いしますね!』

そう言うとアルヴェンも口を開いた

『レヴァンか。俺はアルヴェン。アルヴェン・エルトニスだ。よろしくな』

そう言ってアルヴェンは右手を差し出してくる

『よろしくお願いします!』

そう言ってレヴァンは両手でその手を握り返した

『そろそろ、部屋に荷物を運ばないと行かないので行きますね!』

そう言ってレヴァンは後ろを向き走り出した。

が、クルッと振り返り口を開いた

『俺が殴られた時に手を差し伸べてくれて嬉しかったですよ!こちらこそありがとうございました!』

ペコリと一礼をして再び振り返り走っていくレヴァンの背中をみてアルヴェンに一つの感情が沸き上がってくる。

『なんだ、あの守ってあげたくなるオーラ』

アルヴェンはエルヴィがブラコンになった理由と激しく同じ思いになった。


その日の夜は大変だった

エルヴィがこれでもかと言うほどに甘えてきて最終的には一緒のベッドで寝ることとなった。

いくら兄弟とは言えど義理であるエルヴィの寝顔にレヴァンは気が気ではなかった

その日は寝るまでに苦労をした


『ふぁー、って、あれ?動けない』

次の日の朝目覚めると、身動きが取れないでいた。

その理由は判明した

『義姉さん!?』

思わずレヴァンは絶句した

そこには自信の首に手を回してグッスリと眠るエルヴィの姿があった

(今何時だ?まったくわからない!ていうか義姉さん、近い近い) 

そんなことを考えているとエルヴィの目が開いた

『ん、レヴァくん。おはよ~』

エルヴィは目を擦りながら

起き上がる

『お、おはよ。義姉さん』

『うん。朝からレヴァくんの顔を見れる何て幸せだなあ

今日は一日頑張れそう』

朝からブラコン発言をしつつ

夢うつつと言った感じで、エルヴィは立ち上がった。

『義姉さん、今何時?』

レヴァンはこの部屋を見渡し時計がない事に気が付き現在の時刻が分からないためエルヴィに質問した

『六時だよ~、私は毎日決まった時間に起きるから時計は必要ないんだよ。あ、でもこれからはレヴァくんがいるから時計を取り寄せておかないとねえ~』

エルヴィはそう言うと服を脱ぎ始めた

『あわわわわわわ、義姉さん!何してるんだ!』

突然着替えを始めたエルヴィにレヴァンは戸惑いを隠せずにいた。

『何って、着替えだけど?』

そう普通に答える義姉の姿にレヴァンは目を反らして口を開いた

『無用心だ!俺もいるんだから』

そう言うとエルヴィは頭にクウェッションマークを浮かべながら口を開いた

『でも、兄弟、だよ?』

『それでもだ!』

レヴァンは俺の理性のためにお願いします。と内心で思っていた

少し考え込んだ後エルヴィはハッとした、顔をして口を開いた

『なるほど。つまりレヴァくんはお姉ちゃんを女の子として意識しちゃってるんだな?それなら仕方がないな~。私は洗面所で着替えて来るよ』

(いや、間違ってないけど言い方が生々しいからやめてえ)

エルヴィは上機嫌になって洗面所に入っていく。

しかしひょこっと顔を出して口を開く

『覗いちゃダメだよ?でも、レヴァくんがどうしてもって言うなら覗いても』

『早く着替えて!』

レヴァンが最後まで言わせずにそう言うとエルヴィはむうと言いつつひょこっと出していた顔を引っ込めた

(ふう、これから大変そうだなあ)

レヴァンは密かにそう思うと服を着替え始めた。

着替え終わった二人は朝食を食べ、レヴァンが入る事になった特進クラスへと向かっていた。

レヴァンはエルヴィに部屋を出る前に五分間散々に甘えられた。 


そして特進クラスの前に到着した。

(緊張するな)

レヴァンはとてつもなく緊張していた。

それもその筈。王立学院の上位10位までのクラスに最下位が入り込むのだ。

『レヴァくん?この教室に入るとお姉ちゃんは冷たい態度を取っちゃうけど、別に嫌いだからじゃないからね?むしろ大好きだからね?その辺は勘違いしちゃダメだよ?』

この時ばかりは義姉であるエルヴィのブラコンのお陰で少しだけ気持ちが和んだ。

『後、いじめられたりしたは義姉ちゃんに言うんだよ?義姉ちゃんがそいつ殺すから』

何やらとてつもなく恐ろしい事を言い始めた義姉にレヴァンは、ははっと乾いた笑みを返した。

『よしっ!!』

扉が開かれレヴァンが中に入ると、そこには7人の生徒がいた。そこにはアルヴェンの姿もあった。

『あ!』

アルヴェンを見つけたレヴァンは思わず声をあげた

アルヴェンは無言で小さく手を振っていた

『よし!全員揃ってるか?いや、エイザに他二名がいない様だが、まあいい。』

エルヴィはそう言うとレヴァンを教卓の方へと案内をした

『こいつは私の愚弟。レヴァン・アルフォレイだ。このクラスに編入することになった。よろしく頼む』

そう言うとエルヴィは、ほら自己紹介しろ!と即してきた

『レヴァン・アルフォレイです。よろしくお願いします』

レヴァンが頭を下げる

『よし、レヴァンはそこの席に座るが良い』

そう言ってエルヴィが指定したのは教卓の真ん前の席。

恐らく間近でレヴァンを見たいんだろうな。とレヴァンは苦笑いをした。

レヴァンが席に着くと隣から声をかけられる

『やあ、少年!』

その姿にレヴァンは見覚えがあった。昨日話しかけてきた女性、レルバリスだった。

『レルバリスさん』

レヴァンはその女性に目を向けて口を開いていた

『やっぱりまた会ったね』

レルバリスははにかむように微笑んだ。

『ここにいると言うことはレルバリスさんも学内ランキング上位なんですね』

レヴァンがそう言うとレルバリスは忘れてたと言うように口を開いた

『言い忘れてたね!一応僕は学内ランキング3位なんだ』

レヴァンは、そうなんですね!と言うと、あることに気がついた。目の前でエルヴィが睨んでいる

『じ、授業前のホームルームにじ、じ、女子と話すなどとは感心しないな』

若干目が涙目だった。

恐らくは嫉妬だろう

『ご、ごめんなさい』

一応、レヴァンは二人きり以外では敬語で話すことにしていた。最低限の敬意だ。

『詳しい話は後で聞かせて貰うとしよう。』

後が、恐ろしい。

『では、今日のホームルームは以上だ!レヴァン少し来い!』

言われるがままにレヴァンは義姉に、ついていく。

教室から出た瞬間エルヴィは涙目で問いただしてきた

『レヴァくん!誰?あいつ!いや、知ってるんだけど、どんな関係なの?友達?恋人?レヴァくんの貞操は既にあの女に取られたの?』

レヴァンは凄い剣幕で問いただしてくる義姉に少し戸惑う

『お、落ち着いて義姉さん。入学式に会った事があるだけだよ!』

レヴァンがそう言うとエルヴィはハァと安堵の溜め息を吐く

『本当?ならいいんだけど、お姉ちゃんこれから別の仕事があるからもう行かないといけないんだけど、あのメギツネ・ドロボーネコには気を付けるんだよ?』

メギツネ・ドロボーネコとは恐らくレルバリスの事だろう。レヴァンが大丈夫と言うとエルヴィは不本意そうな顔をしつつも前を向き歩き始めた。

『また、後でね!』

振り返ってそう言い仕事に向かうエルヴィをレヴァンは手を振って見送った。

教室に戻るとこちらを見たアルヴェンが近寄ってくる。

『よお!レヴァン!』

『昨日ぶりですねアルヴェンさん』

レヴァンはアルヴェンに一礼をする

『さっき外に連れ出されたのって。やっぱりアレか?』

『はい。アレですね。』 

アレと言うのは恐らくエルヴィのブラコン症状の事だ

『大変だなあ』

『まあ、愛されてるのは悪いことじゃあ無いと思うので』

そう言って笑うレヴァンにアルヴェンはほのぼのと和む。

『おや?アルヴェンくんとはもう既に知り合いなのかな?』

その声に振り向くとそこにはレルバリスが立っていた

『何だ?そういえばレルバリスとも喋っていたけど知り合いなのか?』

アルヴェンが質問を投げ掛けてくる

『入学式に声をかけてもらってたんです!』

そう言うとアルヴェンは、へえと声をならした

『そう、入学式と言えばあそこにいる赤髪の女の子。彼女は昨日のうちに序列10位に食い込んできた実力者だよ!確か名前は』

そう言いかけた所で話題に出ていた女性が近付いてきた

『サレン。サレン・ノエル。それが私の名前よ』

噂をすればと言った所か。だが、まあ聞こえる距離で話していたらそうなるか

とレヴァンは思った

『だってさ!少年!』

『何で俺にふるんですか?』

レルバリスに唐突に話をふられてレヴァンは少し動揺した

『あなたが最弱の新入生なのね。』

『え?そんなに有名なの?』

レヴァンがそう質問をするとサレンは答えた

『皆知ってるわ。』

(いやああああ。そんな嫌な覚え方はやめてええええええ)

レヴァンは心の中で叫んだ

『へえ、ふーん』

そう言いながらサレンはジッとレヴァンを観察する

『な、何かな?』

『別に何も無いわ。少し興味があっただけ。』

『そ、そうか』

そんなやり取りをしている二人を横目にレルバリスがソッと呟いた

『何だか少年って保護欲駆り立てられるんだよね~。』

そう呟くレルバリスの横でアルヴェンはウンウンと頷き心の中で激しく同意していた。

『それじゃあね。』

そう言ってサレンはレヴァンから目を外し教室の外へと出ていった。

『不思議な女だったな』

アルヴェンにそう言われレヴァンは首を縦に振った

『ってあの子授業受けなくていいんですか?』

教室を出ていったサレンを心配したのかレヴァンがそう口を開いた。

『ああ、少年は何も知らないんだったね!特進クラスは授業を受ける必要がないんだよ!卒業と同時に王国への勤務が決まったような物だからね!』

何て学校何だ。

『え、じゃあ俺は?』

『総括に聞いてみたらどうだ?』

(義姉さんにか~)

アルヴェンに言われ少し考えてみたが聞いたところで返答は、恐らくは義姉の旦那としての永久就職。と返ってくるに決まっている。

『はは、やめておきます』

そう返答したレヴァンの考えていた事がアルヴェンには直ぐに分かったため、苦笑いをしていた

『そう言うわけだから私は外に行ってくるね!またね少年とアルヴェンくん!』 

そう言ってレルバリスは教室を出て行った。

それに連れられるように他の人たちも教室を退出する。

今、教室に残っているのはレヴァンとアルヴェンだけだった。

『あ、アルヴェンさんはこれからどうするんですか?良かった俺と』 

二人きりになったレヴァンとアルヴェン。レヴァンはアルヴェンに学園の案内を頼もうとするが

『ああ、俺も今日はちょっと行かなくちゃならないところが合ってな』

言いかけた所でアルヴェンが口を開いていた。

どうやら予定がある様だった

『そうなんですね。』

『悪いな』

そう言ってアルヴェンも教室から退出していった。

残ったのはレヴァン一人となった。

『図書室にでも行こっかな~。』

一人になった教室でレヴァンは呟いた

レヴァンは教室を出て図書室に向かっていた。

『はあ、どんな学校だよ』

そう呟きながら図書室に向かうがレヴァンは恐るべき事に気が付いてしまった

『よく考えたら俺、図書室の場所知らないな』

それどころか現在地すら分からなかった

『ど、どうしよう』

『おや?君は総括の弟くんだね』

レヴァンがアタフタしていると後ろから声をかけられた

『あ、義姉さんの付き人さん』

振り向くとそこにはエルヴィの付き人をしている女性が立っていた

『昨日ぶりだね』

『そうですね!というか義姉さん仕事に向かった見たいですけど一緒にいなくて大丈夫何ですか?』

エルヴィの付き人である筈の彼女がここに居ることにレヴァンは少し疑問を感じて質問をした

『ああ、今日は総括だけの召集だからね。私は必要無いんだ。それよりも君はどうしてこんな所に?』

付き人の女性の質問にレヴァンは答えた

『実は、図書室に向かおうとしてたんですけど迷ってしまって』

『図書室?真逆だけど』

そう言われレヴァンは驚愕した。

『真逆!?』

『うん。真逆!』

その女性はそう言った後に案内をしてあげると言って

図書室まで案内してくれた

道中に義姉であるエルヴィの話をして盛り上がった。


図書室まで案内をしてくれた付き人の女性と別れた後、レヴァンは図書室に入った

『うわ、ひろっ!!』

そこにあった図書室はこれでもかと言うほどに広く、この世の本が全てあるんじゃないか?と思ってしまう程だった

『すげえ』

大きさの割には利用している人が少ないと感じたがあまり気にはしなかった。理由は今現在外に出ているのは特進クラスの面々のみだと分かっているからだ。

『凄いたくさんあるな。何を読もう』

そう呟きつつレヴァンはある人物を発見した

『あ、あの人教室で見たな。』

そう呟きながら見詰める先には教室で座っていた眼鏡をかけた男性が本を読んでいた。

レヴァンは声をかけることにした

『あのー、すみません』

しかしその男性から返答が、来ることはなかった。

恐らく本を読んだら止まらなくなって周りが見えなくなってしまうタイプの人間だ。 

仕方なくレヴァンはその男性の対面に座った。

ふと、その男性が読んでいた本に目をやると自分も見覚えのある本だった

『ワプルレギナスの紋章』

思わずその本の題名を口に出していた。

ワプルレギナスとはレヴァン達がいる世界における神の存在。その、ワプルレギナスの事を綴った話。要するに神話である

本の題名を口にした途端に男性の肩がピクリと動く。

『知っているのかい?』

男性が此方に目を向けて話しかけてくる

『はい。一度読んだ事がありました。』

レヴァンはどちらかと読者はする方であった

『へえ。』

そう言うと目の前の男性は本を閉じて興味深そうにレヴァンを見た。

『よく見ると君、今日入ってきた新入生だね』

その発言にレヴァンは首を縦に降り続けて口を開いた

『はい。レヴァン・アルフォレイと言います』

『レヴァン・アルフォレイか。総括様の弟か何かかな?』

アルフォレイと言う名字がエルヴィと同じため兄弟である事が直ぐにバレる。それに教室で義姉も愚弟と言っていたし隠す必要も特にないためレヴァンは肯定をする。

『はい。その通りです』

『なるほど。僕はハルマス・ナルセンテと言う。』 

目の前の男性。ハルマスは至って単調に自己紹介をした

『ハルマスさんですか。よろしくお願いします。特進クラスに居ると言うことはハルマスさんもランキング上位なんですよね?』

レヴァンがそう言うとハルマスはフウと溜め息を吐き、続けて話した

『一応ランキング7位なんだ。』

7位と言うことはアルヴェンさんより1つ上か

『そうなんですね!』

『それよりもこの本について知っているとは君は珍しいね』 

そう言うのも無理はなかった

神話が綴られている神書を読む人間は多くはなかった。

あまり神の存在を信じている人がいないのが理由だろう

レヴァンも完璧に神話の話を信じている訳ではないが少し興味があった。ただそれだけだった。

『はい。それ、神書ですよね?』

レヴァンがそう言うとハルマスは肯定をする

『その通りだ。よくこんな本を読んだことがあったね』

『何故かわからないんですけど家には神書が結構あるんで、読む機会があったんですよ』

そう。何故かは知らない。

両親に聞いてもわからない。

と答えるだけだった。

義姉さんに聞くと今は亡くなっているがお祖父さんが集めていたとか、いなかったとか曖昧な反応が返ってきた。

ちなみにレヴァンは義姉であるエルヴィの家族に引き取られた形だったため家族の事は全員さん付けで呼んでいた

『なに!?神書がたくさんあるのかい?』

先程のレヴァンの発言はハルマスの興味を引くのに充分すぎる程の発言だったようだ。

『え、ええ、まあ』

レヴァンがその勢いに呆気を取られて少したじろいで答えるとハルマスは驚愕していた

『神書が大量に?どう言うことなんだ』

そう。神書はあまり流通してはいなかった。

元々の数が極端に少ないと言うのも理由の1つだ。

恐らくこの図書室でもあっても1~2冊程度だろう。

『ち、ちなみに、ヴィルセンの神書も?』

ヴィルセンもワプルレギナスと同様の神だ。

ワプルレギナスが武術の神と言われているのと同じ様に

ヴィルセンは知能の神と呼ばれていた。

もちろん。その神書もレヴァンの実家にはあった。

『は、はい!あったと思いますけど』

レヴァンの返答にハルマスはまた驚愕した

『なん、だと。僕がどれ程探しても見つからなかったのに』

そんなに落ち込む事なのか?

とは思いつつもレヴァンは役に立てるならとある提案をする

『休暇の時、実家から持ってきましょうか?』

『な、なんだと?』

ハルマスは思わず面食らった様な顔をするが直ぐに立ち直り

『頼んでも言いかい?』

とレヴァンに告げる

レヴァンが構いませんよ、と返答するとハルマスは安堵した様に溜め息をついた

『好きなんですね。神書』

レヴァンのその発言にハルマスは首を縦に降り頷ずいた

『ああ。だって、興味深くないかい?我々がこうして生活する礎を作った神について綴っている本なんて』

レヴァンはハルマス程ではないが確かに神書には興味深さはあった。

そのためその問いにレヴァンは確かにと頷いた

『わかってくれるのかい?』

身を乗り出して少し感動したように口を開くハルマス

『ま、まあ、神話って、面白いですもんね』

レヴァンはそのハルマスに少したじろぎつつも至って本心の返答をする

『そうか!君はわかってくれるのか!』

嬉しそうに笑いながら話すハルマスにレヴァンは終始苦笑いで返した

『もしハルマスさんさえ良ければまた、神話について話しませんか?』

人付き合いは大事たと思いレヴァンはそう切り出した

『なん、だと?僕はもちろん嬉しいが君はいいのかい?』

ハルマスの問いにレヴァンは笑顔で答えた

『はい!先輩と話すのは楽しかったので』

(守りたい。この笑顔)

ハルマスは保護欲に目覚めてしまった


ハルマスと次に図書室で神話について語る約束をした後、レヴァンは図書室から退出した。レヴァンの右手には[ブラコン症状の改善方]と言う書籍を抱えていた。

『これを読んで卒業までに義姉さんを正さないとな』

あのままではいずれとんでもない事になってしまいそうな気がするしな。

そう思いつつ適当にブラブラと歩いていると訓練所のような場所に出てきた。

『ここは訓練所か何かかな?』

少し気になって訓練所の中を覗いて見るとそこには一人の男性が立っていた

『あの人も教室にいたな』

そこに立っていたのはハルマスと同じ様に教室に座っていた一人の青髪の男性だった。

その男性は右手に剣を持っていた。細く長い剣レイピアの様だ

『ここで、剣術の訓練をしているのか』

同じクラスと言うことはその男性も序列上位だろう。

『お手並み拝見といこうか』

偉そうな事を口走っているがレヴァンは剣術はからきしだ

剣を持った子供に負けるんじゃないか?というレベルだ

男性が剣を振り始める。

レヴァンは絶句した。

一言で言うとその剣捌きは鮮やかだった。

まるで剣に意思があるような動きだった。

一太刀一太刀が確実に繰り出される筈なのにふとした時にはもう一太刀を振るっている

『すげえ』

そんな一言では表しきれないと思う程にレヴァンは驚愕していた。

思わず訓練所の中に入っていってしまう

『誰だ?』

その男性はレヴァンに気づいて素早く剣を向ける 

『うわあ、あ、あ、怪しいものじゃないですよ!』

剣を向けられたレヴァンは動揺しまくりでそう話した

『君、見たことあるな』

そう言うと男性はレイピアを静かに引いた

『確か、レヴァン・アルフォレイだったかな?総括様の弟さんだったかな』

そう聞いてくる男性にレヴァンは肯定をする

『はい。レヴァン・アルフォレイです!』

するとその男性も丁寧に自己紹介を始める

『私はセルヴェ・ゾルドと言う。以後よろしく頼む。一応序列は2位だ』

セルヴェは頭を下げる。

序列2位なのにここまで礼儀正しいなんて。とレヴァンは驚愕している。

イケメンで強くて礼儀正しい

チートだ。

『あ、頭をあげてください!』

頭を丁寧に下げるセルヴェに思わずレヴァンは戸惑ってしまう。

『し、しかし最低限の礼儀を払わないとだね』

どうやらセルヴェは完璧な男の様だ。レヴァンは男として完膚なきまでに敗北した様な気分がした。

『そ、それよりも凄い剣捌きですね。』

レヴァンは思わず話をそらしてしまう

『ん?ああ。私の家は代々剣士の家系でね』

なるほど。あの剣捌きは納得だと言うべきか。

『凄いですね』

『凄い?私の剣術がかい?』

セルヴェは少し疑問気味た様子でレヴァンに問い掛ける 

『はい。まるで、剣に意思があるようでした』

レヴァンが感じたことを正直に伝えるとセルヴェは少し驚いた様子でこちらを見る

『久し振りだね。私の剣術を評価してくれた人は』

セルヴェは少し嬉しそうに口を開く

『久し振り、ですか?マジですか?あんなに凄いのに!』

レヴァンは驚きを隠せずにいた。それほどまでにセルヴェの剣術は見事だった

『この学校では剣術こそあるものの必須項目では無いからね。』

そう少し寂しそうな顔をするセルヴェを見てレヴァンは口を開いた

『そんな、あんなに凄いのに評価されないなんて』

『そうだね。少し前までは全く評価されなかったよ。』

乾いたように笑った後セルヴェは続けて話す

『実を言うとね、私の序列2位は不服だ!って人が多々いてね?』

レヴァンは驚いた。

『その理由は?』

レヴァンが恐る恐る質問するとセルヴェは口を開く

『先程も言ったように剣術が必須項目ではないからね。それに私は必須項目である魔術の成績があまり良いとは言えないんだよ。』

どうやら、ここ王立学院では剣術・武術・魔術こそ勉強するものの、王国から必須項目とされているのは魔術のみ。

現在の騎士団ですら剣を扱う者は少なく魔法での対応をしているそうだ。

『君のお姉さん、総括様には感謝をしているんだ。私の剣術を評価してくれたお陰で私は今の序列2位と言う高みにまで上り詰める事が出来た。』

そしてどうやら剣術や武術を評価に取り入れたのが義姉さんのようだ。流石に必須項目には出来なかった様だが、評価対象には出来たらしい。

やっぱり義姉さんは二年前と同様に優しかったようだ。

『義姉さんがですか。。なら良かったです。それよりもセルヴェさんの目標って何かありますか?』

『私はここを卒業したら騎士団に入って剣術でのしあがって行きたいと思っているんだ』

その意思は強く固かった

レヴァンにはセルヴェという男性の魅力がヒシヒシと伝わった。同時に憧れた。

一つの事を本気で取り組んでその地位を築いたセルヴェに

『俺にも、剣術、教えてくれませんか?』

レヴァンは思わず弟子入りを志願していた

『え?』

セルヴェは驚いた様子で目を見開いた

『こ、この学院では剣術は必須項目ではないんだよ?つまり剣術が使え無くても余り困らないんだよ?』

それは確かに聞いた。

だが、レヴァンはあの剣術を

使えるようになってみたいと

本気でそう思っていた

『確かに、剣術は必須項目ではないかも知れません。でも、俺はセルヴェさんの様に剣術を学びいたいです。俺がセルヴェ見たいに剣を振るえるかと言われると無理な気もしますが。でも出来るだけの事はやってみたいです!』

レヴァンも強く固い決意でそう告げ、頭を下げた

それはセルヴェにも伝わった様子だった。

『顔を上げてくれ。私も、君に教えたいと思ってしまったようだ』

セルヴェがそう言うとレヴァンは顔をパッと上げた

『それって!!?』

『こんな師で良ければ是非私の剣術を教えさせて貰うよ』

爽やかに微笑むセルヴェにレヴァンはもう一度ありがとうございます、と頭を下げた

セルヴェは純粋にそして自身の剣術を評価してくれたレヴァンに対して少し愛着が沸いていた

『早速今日から、と言いたい所だけどいきなりは橘井だろうからまた後日だね』

師となったセルヴェの言葉にレヴァンは、はい!と一言返事をした

その後レヴァンと軽く会話を交わした後、レヴァンは中庭を歩いていた。

『あの、剣術を教われるのか』

レヴァンはそう呟くと少しウキウキした様子で歩いていく

するとまたまたクラスで見たことのある人が中庭のベンチに座っていた

『今日は同じクラスの人にしか会わないな』

それもそのはず。

授業が無いのは特進クラスのみなのだから。

そこに座っていたのは金髪栗毛の小柄の少女だった

『寝てるのか?』

少し近付いてみると目を閉じて前髪が少しそよ風に揺られている。

『綺麗な顔立ちだな』

レヴァンがそう呟くのも無理はない。その少女は一つ一つの顔のパーツがしっかりと整っている

レヴァンは思わず屈みこんでジッと見詰めてしまう。

睫毛長いな。ふとそう思った

矢先少女の目がうっすらと開く。少女と目が合ったレヴァンは思わずのけぞってしまう

『うわ、ご、ごめん!』

反射的にそう謝罪する。

反射的でなくても寝ている少女の寝顔を屈み込んでまで見ていた男は充分謝罪しなければいけない様な事をしているが

『何をしていたのですか?』

悲鳴をあげられてそれに駆けつけてきた人々に取り押さえられそれを聞き付けた義姉に

ボコボコにされる辺りまで想像していたレヴァンだが、その少女からは無表情でただの一言しか発されなかった。

『綺麗な顔立ちだなと思って思わず魅入ってしまってました。はい。』

思わず正座をして正直にレヴァンは話した

『そうですか。それはありがとうございます』

その少女は至って端的にそう告げると再び口を紡いだ

『そ、それだけですか?』

思わずレヴァンはそう口を開いてしまう

『それだけとは?』

『いや、悲鳴とかあげないのかなと思いまして』

相変わらず無表情でそう告げた少女。レヴァンは決して悲鳴をあげてほしいわけでは無いが悲鳴をあげられても仕方のない状況だったためそう話した。

『なら、今から悲鳴を上げればいいですか?』

『それだけはやめてくださいお願い致します』

レヴァンは思わず三つ指を付いて懇願した

『悲鳴をあげてほしいのではないのですか?』

少女はよくわからないと言ったような表情で首をかしげる

『いや、だっていきなり男の顔が目の前にあったら、怖くないですか?』

レヴァンは思わず敬語で話をしてしまっていた

『そうですね。少し驚きましたけど悲鳴をあげるほどでは無いかと』

(そう驚いた様子には見えなかったんだけどな)

そう話す少女はやはり無表情だった

『今、驚いた様子には見えなかったと思いましたね?』

(うわ!何でバレたんだ!)

『何故バレたか。ですか?』

『何でわかるんですか?』

何故かはわからないけどもう心の中で思った事はバレると思ったレヴァンは直接口で聞いた。

『私は人の心の声が読めるのです』

チートだ!

この子の能力はとてつも無い程に凄い。欲しい

と心の中で思う 

『そんなに良い能力ではありませんよ?』

あ、そうかバレるのか。

『そんなに凄い能力なのにですか?』

『こんなに凄い能力だから、ですよ』

少女は相変わらず無表情のまま静かにそう話した

『この能力のお陰で私は周囲の人々から化け物と呼ばれてきました。』

続けて話す少女の顔は心なしか少し暗いように感じた

『それもそのはずです。心を読まれるのですから、気味が悪くて当然なのです』

『そんなことはないよ』

レヴァンは敬語を無くして口を開いた

『はい?』

『確かに心を読まれるってのはちょっと恥ずかしいけどさ、でも、すげえ能力だろ?気味が悪いって言う奴には言わせておけばいいさ。すげえ物はすげえんだから。誰が何と言おうとそれは君が手にした素晴らしい能力だろ?例え誰が何て言おうが俺は君の能力が気味が悪いなんて思わない!むしろ格好いい!だからもっと胸を張って良いと思うぜ!』

少女は目を丸くしていた

朝から中庭で大声で名言っぽく何か語っている男。

変人である。

無表情ながらもすこし驚いた様子だった少女は一度溜め息を吐き口を開いた

『ありがとうございます。すごく嬉しいです』

(でも、相変わらず無表情なんだよなあ)

『私が無表情なのは悪い魔女に能力と引き換えに表情を奪われたからです。』

『なに!?なら、その魔女を一緒に倒そう!』 

そんな悪い魔女許せない!

『嘘ですよ』

『嘘なのかよ!嘘ならもっと分かりやすくついてくれ!本当っぽく言うんじゃない!』

思わず突っ込んでしまった

『貴方の突っ込みは100点満点』

『そう褒められると悪い気はしないな』

『の内の7点です』

『ななてんっ!?ひくっ!!?』

『ちなみに格好よさは2点です。』

『突っ込みより低い。さっき結構格好いい事言ったと思うんだけど!?』

レヴァンは完全に少女にペースを奪われてしまっていた

『半分冗談です。面白い人ですね』

(半分かよ!!!!)

『私の無表情は人に心を開けていないためあまり表情を出さない結果こうなりました』

少女は唐突にそう告げる

どうやらこれは本当の様だ

『なら、いつか俺が笑わしてやるよ!』

レヴァンは胸を張ってそう宣言した

『私を、ですか?』

少女は一瞬驚いた様に目を見開くが直ぐに元の無表情に戻り

『楽しみにしていますね』

とそう告げた

『貴方のお名前は?』

それから名前を訪ねてくる

『あれ?教室に座ってなかったか?レヴァン・アルフォレイだ。』

朝のホームルームの時に居たように感じたけど気のせいなのか?とレヴァンは不思議に思う

『教室では寝ていました。目を開けたまま』

『どんな特技だよ!』

よしっ!今の突っ込みは中々いい線いったと思う。

『11点ですね』

『やっぱり低い!』

どうやら4点だけあげてくれたようだ

『私は序列6位のリリアナ・ヴァインと言います。』

『ああ。よろしくな!リリアナ!』

『いきなり呼び捨てですか。別に良いですけど。なら、私もレヴァンと呼びますね』

少女はそう告げた後に真っ直ぐした瞳で口を開いた

『レヴァンには多少興味があります。どうか私を楽しませてくださいね』

そう告げる少女。リリアナにレヴァンはもう一度高らかに口を開いた

『任せとけ!』

心なしかリリアナが少しだけ微笑んだように見えたが恐らくは気のせいだろう。


リリアナと別れた後レヴァンは再び学園内をブラブラと散歩していた。

レヴァンはもう少しリリアナと話しておけば良かったと後悔していた。

暇すぎる。

リリアナと別れてから二時間近くずっと学園内をブラブラしている。

まるで放浪者だ。

『お腹すいてきたな』

ふとそう呟くと目の前にお肉、ではなく一匹の猫が座っていた。

『猫?』

少し近付いてみるとそれは猫ではなく魔物のミリーキャットだった。

『うわ、びっくりした!』

だが、ミリーキャットは魔物なものの人的被害は無く討伐対象にも指定されていない

『迷い混んだのか?』

レヴァンは屈み手招きをしておいで、と言うとミリーキャットはトテトテと近寄ってくる。

凄く可愛いのである

『迷子か?』

そう言って頭を撫でるとミリーキャットはンニャーと喉をならしていた。

『可愛いなあ。』

片手で撫でていたが両手で撫でてみることにする。

するとミリーキャットはコロンと寝転がりお腹を見せていた

『不味い。可愛すぎる』 

そう呟いた後ずっと撫でてやっていた。

『駄目だ。可愛すぎるうううううううう』

思わず大声を出してしまっていた。

『何を、しておられるのですか?』

背後から女性の声が聞こえ取り付かれたようにミリーキャットを撫でていたレヴァンは我に帰った

『俺は、何をしていたんだ?』

ふと手元を見るとそこにはミリーキャットの姿はなくそこにいたのはスライムだった。

ちなみに一応スライムは討伐対象に入っている

『ぎゃああああああ!俺のミリーキャットがあああああ』

レヴァンは訳のわからない事を口走ってしまう。

『そのスライムはファントムスライムと言って幻覚を見せるスライムなのでございますよ』

背後から聞こえる優しそうな女性の声に振り向くとそこには朝教室に居た女性が立っていた。その女性は白髪の綺麗な髪をしていて修道服を着ていた。

『安心してください。ファントムスライムは幻覚を見せるだけで特に害はございません』

そう聞いてレヴァンはホッと安堵する

『すみません。恥ずかしいところをお見せして。』

屈んでいたレヴァンはスクッと立ち上がる。

『構いませんよ。しかしファントムスライムの幻覚に魅入るような方はこの学院にはいらっしゃらない筈なのですが』

ふむ、どうやらこの学院でファントムスライムの幻覚に引っ掛かるのはどうやら俺だけの様だ。恥ずかしい。

『やはり、学院始まって以来最低点数の最下位は伊達では無いのですね』

その女性の優しい瞳とは裏腹にその言葉はレヴァンの心を深く抉った

『あ、申し訳ございません!別に貴方を侮辱するつもりは無くですね、凄いなと思っただけでございまして。』

やめて!その優しさが俺の心をズタボロに引き裂くからぁこの場に心の読めるリリアナがいなくて良かった。と心の底から思った

『お見苦しい所を』

レヴァンは顔を真っ赤にして頭を下げる

『あ、頭を上げてください!別にお見苦しくはありませんでした!ただ、スライムを必死に撫でるあなた様を見てどうしたのかな?と思って声をかけただけでございます』

確かに目の前にスライムを笑顔で必死に撫でている男がいたら引くだろう。

『ちなみに幻覚は何に見えていたのでございますか?』

そう問い掛けてくる女性にレヴァンは正直に答えた

『み、ミリーキャットです。』

するとその女性は少し驚いた様な顔をした後に声をあげた

『まあ、まあまあまあまあ。そうでございましたか』

心なしか少し嬉しそうに見える

『は、はい』

『あなた様はミリーキャットがお好きでして?』

その女性は目を輝かせながらそう口を開いた

『特別好きと言うわけでは無いんですけど、何だか、凄く、可愛く見えて』

レヴァンがそう話すと女性はさらに嬉しそうに口を開く

『そうでございますか!ち、ちなみに幻覚でのミリーキャットはどのような感じでございましたか?』

『撫でるとお腹を見せてコロンって寝転がってました』

『まあ、わたくしも是非お目にしたいのでございます』

その女性はどうやらミリーキャットが大好きの様子だった

『ミリーキャット好きなんですか?』

そう問い掛けるとその女性は少し恥ずかしそうに呟く

『そ、そうでございますね。ミリーキャットは昔修道院にいた頃飼っていたので愛着があるのです。』

まあ、だがあそこまで可愛いミリーキャットを観た後ならその気持ちはわからなくも無かった

『そうなんですね。幻覚とはいえ確かに可愛かったです。』

レヴァンも正直にそう告げた

『ふふっ、あなた様は中々見る目があるのでございますね』

その女性は嬉しそうにそう告げた後に手をポンと叩き口を開く

『そういえば、近々学区外への遠征があるのですが、よろしければご一緒しませんか?』

学区外と言うことは魔物が入る場所に出向くと言うことだ

『学区外、ですか?』

『ええ、わたくしと後、サレン様も一緒に向かうのですけれど、どうですか?』

目的はわからないが恐らくはミリーキャットを見るためだろう。何故サレンさんが同行を許可したのかはわからないがクラスメイトと交流を図るのも大事だろう。

と思ったレヴァンは頭を縦に振った

『僕でよかったらご一緒させてください』

そう言うとその女性はまたまた嬉しそうに両手を合わせて

微笑みながら口を開いた

『全然構いません!むしろ来てくれて嬉しいのでございますよ!』

そう言うと女性はハッとした様子で自己紹介を始めた

『申し遅れました。わたくしの名前はアリシア・ネイスと申します。学内序列は5位でございます。以後よろしくお願いいたします』

丁寧に頭を下げるアリシアにレヴァンも慌てて自己紹介をする。

『こ、こちらこそ申し遅れました。レヴァン・アルフォレイと言います。この学園の総括エルヴィ・アルフォレイの弟です。よろしくお願いします。』

レヴァンが頭を下げるとアリシアはこちらこそと言い微笑んだ。その姿は天使の様だった。

『では、詳しい話は後程させていただきますので、わたくしはこれで失礼しますね』

そう言ってその場から立ち去るアリシアを見て思わず頭を掻いた。

『綺麗な人だったなあ』

そして気がついた。

手がスライムの粘液まみれになっていたことを。

そしてもう一つ思い出した

学区外に行くために義姉であるエルヴィから許可を貰わないと行けないと言うことを。

無理かもしれないな。

レヴァンは内心そう思ってしまった


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