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短編

ランドセル

作者:

ランドセルがゴミ箱に捨てられた。

赤い色は薄汚れ、所々に傷が付いている。

もう使わないだろうと親がゴミ箱に捨てたのだ。

ランドセルの持ち主は先日から中学生になった少女。

少女はもうランドセルを背負うことはないだろう。

ランドセルは泣きたい気持ちになった。

悲しい。

でも仕方ないことだろう。

とても喜ばしい成長の証でもある。

それでも悲しい。

ゴミ箱の中には腐ったバナナ、腐ったトマト。

他には魚の骨、残飯、野菜の皮などなど。

それらがべっちょりとランドセルにへばりつく。

ランドセルは不快な気持ちになるが、ランドセル自身も今は彼らと同じゴミなのだ。

惨めなことだ。

だんだんと何かの腐り汁が体の中に浸透していく。

そのさまをランドセルはどうしようも出来ないまま、不快な感覚を感じることしか出来なかった。


夕方頃に中学になったランドセルの持ち主の少女が帰ってきた。

ゴミ箱に捨てられたランドセルを見て慌てたように取り出しへばりついた生ゴミを手で払う。

少女は母親のもとへ行き「どうして捨てたの!」と怒っているようだった。

どうやら少女はこんな汚れたランドセルをまだ大切にしているらしい。

ランドセルは喜んだ。

まだランドセルに思いを残してくれていると知れるだけでも幸せな気持ちになる。

少女は怒りながらランドセルを洗うために風呂場へと向かう。

少女はビショビショになりながらも丁寧に洗い、アルコール消毒までしてくれた。

これなら変な菌がついて捨てられることもないだろう。

少女の気持ちにランドセルは感激して涙を流した。

その涙はシャワーから出るお湯によって流されてしまい、少女は気がつくことはない。

泣くなんてかっこ悪いから気がつかれなくてよかったとランドセルはホッとする。

そんなランドセルの気持ちなど知らない少女は、それでも真剣な顔をしてランドセルを見つめる。

「私、ランドセルを捨てさせたりしないよ」

ランドセルは体が熱くなる。

きっと全身が赤くなっていることだろう。

そこまで真剣に言われるとランドセルも照れてしまうのだ。

でもランドセルは今までのことを思い出して少女と過ごした思い出は素敵なものだったと再確認する。

その思い出のお陰でゴミにされることなく少女は大切にランドセルを洗うのだ。

雨の日も風の日もいつも一緒にいたのが良かったのだろう。

これからも一緒にいたい。

ランドセルはそう思った。

少女はランドセルをタオルで拭く。

そして真剣な目で母親の前にやってきていた。

「お母さん。ランドセルは捨てないよ!」

「なに? もう使わないでしょ?」

「使う! 紅茶いれて飲むの!」

「……」

少女の言葉に母親もランドセルも絶句するほかなかった。

ランドセルは6年間、教科書や筆箱をいれられてはいましたが、紅茶をいれられたことはない。

たまに閉め忘れた筆箱のなかから鉛筆や消しゴムが出てきてランドセルの中を汚したりもしている。

紅茶をいれるのはいくら消毒していたとしても、やめたほうがいいとランドセルでも思ってしまう。

それにランドセルの隙間から絶対に紅茶が溢れでることだろう。

耐熱もそんなにないのでお湯が熱過ぎれば溶けそうだ。

少女がこんなこと言い出すくらいなら、捨てられていたほうが良かったかもしれない、とランドセルは遠い目をしながら思った。

少女の母親はごほんと咳払いをしてから優しい笑顔で少女に声をかける。

「そんなに大切ならとっておきましょう。だから紅茶いれるとか馬鹿なことしないでね」

少女はその言葉にパァっと笑顔を輝かせた。

捨てなくていいんだと少女はランドセルを抱きしめる。

ランドセルも大喜びして笑顔の少女に微笑んだ。

今後、ランドセルは少女の成長を見ていくのだろう。

ランドセルはそれが少し楽しみであり、少しの不安でもある。

でもその全てを受け入れることになるだろう。

少女が老婆になったときまでそばにいれたらいいな。

そんな微かな可能性を夢見てランドセルは少女のなすがままになる。

少女は初めてランドセルを背負ったときのようなはしゃぎっぷりを見せながら、ランドセルを大切そうに撫でていた。


「ランドセル、ゴミ箱、風呂、紅茶」という目に入った四つのもので書いためちゃくちゃなストーリーです

何も考えずに書くと恐ろしいですね

でも楽しかったから機会があればまたやることでしょう

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