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『女の子を泣かせる男って最低!』

前回のあらすじ

桃井の登場により撃沈する生徒会役員部一同。

『私の好意は本物だ、いわゆる一目惚れと言うものらしい……私の数式を持ってしても解明出来ないんだ』

突然の告白を受けた園部は彼女の気持ちには答えなかった……。

「そっか……やはり助手君はそう言うと思ったよ、わかっていてもいざ言われると……胸は痛むものなのだな」


そう言い残して、彼女は教室を後にして再び3人にもどる。


「……小百合ちゃん、座りましょ」

「はい」


二人は座っても尚、黙ったままだった。

初めての静かな部室は、時計と秒針がいつもより大きく聞こえた。


その静寂を最初に破ったのは、栗島先輩だった。


「ねぇ、園部」

「はい」


栗島先輩からの言葉は思いがけない一言だった。


「今日はもう活動終わりにするから、さっきの彼女を追いかけてあげてよ」

「でも……」

「会長命令、絶対なんだから……」


相変わらず、目は潤んだままで、少し息も荒い。


「そうですね、大丈夫ですよ、別に追いかけても私も栗島先輩も怒らないですし、いなくなりませんから」

「小百合さん……」


栗島先輩は立ち上がり、ホワイトボードの文字を消して新たな議題を書き込む。


『女の子泣かせる男って最低!』


「多分彼女の意思は本当よ、だって、あなたにフラれた時すごく悲しそうだったもの……それに、すれ違ったとき泣いていたもの」


それに小百合さんも続く。


「少し形の良い量産型の癖にカッコいい事言って、栗島先輩引き留めて……あなたの意思は伝わってきました」


思い出して俺は少し恥ずかしくなる。


「……すいません、行ってきます」


俺はすぐさま立ち上がり、桃井さんを追った。

まだ時間はたっていないし……バスに間に合えば!


バス停に着くと既に人は居らず、発車した後だった。

時間的に走った方が早い……!!


全速力で走った、途中脚が吊りそうにもなったけど関係ない。


初めて好きと言ってくれた女の子を振って泣かせて……身勝手にも天秤にかけて比べてしまった。

そして、さらに女の子に「追いかけていってあげなさい」だなんて……最高にカッコ悪いじゃないか。


家まで僅か数十メートル、あと少しだ。

日は落ちだして辺りは暗くなり始めた。


アパートにつくやいなや、隣人のチャイムをならす。


一度押せども、二度押せども反応がない……。

久々に全力で走ったその脚は、疲れきってすぐに折れた。


「助手君じゃないか……そんな汗だくで外にいては風邪を引くじゃないか」

「……え?」


何故か横から、透き通ったあの声がする。

そこには先に帰ったはずの桃井さんがいた。


「あれ、先に帰ったんじゃ……」

「これは参ったな……会わないように帰ろうと思ったのだけど……そうはいかせてくれないか、とりあえず立ち話も難だ、上がっていくと良い」


悪いので断ったのだが……断ったとたんに少し寂しそうな顔をしたので見過ごせずお邪魔することにした。

何より、涙のあとが胸に刺さってしまった。


「男子をプライベート空間に入れるのは初めてだ……少々恥ずかしいものだな」


至るところに様々なぬいぐるみが置いてあり、小綺麗にまとまった女の子らしい部屋だった。


「あ、あまりじろじろ見ないで……い、一応フラれた身だが好きな相手に……そんな、辱しめだ」


自分で上げといてなんと言う言いぐさだ……と言いたかったが、今の彼女に……ましてや、先ほど彼女を振った俺が言える立場ではない。


「茶と菓子だが有り合わせのものですまないね」


ベッドの横の机に座っていると、お茶とお菓子を出してくれた。

緑茶とようかんと言う女子高生らしからぬチョイスだったが、こういうのは嫌いじゃない。


「ありがとう、いただくよ」

「そ、そうか……うむ、いただいてくれ」


いつ着替えたのか、今日は猫の着ぐるみパジャマを着ていた。


「このパジャマ、かわいいであろう?私のお気に入りだ」

「似合ってると思うよ?」

「め、面と向かってそんなことっ……振っておいてそれはずるいぞ……」

「あ、あぁ……ごめん」


少し気まずい空気が流れる。

目の前に座っている桃井さんは、ぬいぐるみを抱きしめてどことなく落ち着かない様子。


「君は……あの二人のうち、どちらかが好きなのか?」


少し頬を赤くして目線を外して聞いてきた。


「違うけど……」

「な、なら……何であんなに一方的に、ぼろくそに断ったのだ」

「それは……ごめん」


少し泣き出しそうになっている彼女に、俺はどうする事も出来ないでいた。

すると桃井さんは静かに立ち上がり俺の横に座ってきた。


「こういう時、男性は女の子を慰めてあげるものではないのか……?」


そう言うと彼女は膝に寝転んできて、潤んだ瞳で下から見つめてきた。


「今この場には私と君の二人きりだ……君になら少々手荒に乱暴な真似をされても我慢出来る自信はあるぞ……?」

「え?いや、ちょっと……さすがに」


慌てる俺を見て、桃井さんはクスッと笑って抱いていたぬいぐるみを顔に押し当ててくる。


「さすが助手君だ、私が好きになってしまっただけある……このまま襲われでもしたらどうしようかと思ったよ」

「そんな事するわけないって……」


正直、ドキッと来てしまったのは事実……。

確実に好意を寄せてくれている相手で、きっと付き合えば凄い良いところが見つかりそうな、そんな素敵なかわいい女の子が目の前で無防備に膝の上で寝転んでいるなんて……。


「確かに、振ったけれど桃井さんも大切だから……」


どうやらあの部活に入って俺の感覚は相当狂ってしまったようだ。

訳のわからない、騒がしい空間を好きになってしまった。


「君はハーレムでも作る気なのかい?」

「は……?え?」

「あの二人も大切で、私も大切で……」

「いや、別にそういうわけじゃ……!」


桃井さんはそのまま起き上がって、もたれ掛かってきた。


「私は君が好きだ……いつか振り向かせるぞ?」


ここまで熱烈にアタックされると言葉がでなくなる。


「これからお風呂なのだが……君が覗きたいと言うなら覗いても良いが……」

「出ていくって!」

「そうか……出るのか」


さすがに女の子の入浴を邪魔するわけにも行かないので俺は出ていった。


翌朝、いつもの目覚まし音と、するはずの無い甘い香りで目を覚ました。


それと左手が何か柔らかいものを触っている。


「おはよう、助手君……君はその、朝からお盛んだね……」

「……ぇっ!?」


いろいろと頭が追い付かない、なんで桃井さんがうちに……!?しかも、同じベッドの上に……。

さらに、しっかりと彼女の事を抱きしめ、左手はお尻に触れていた。


「女の子の抱き心地はどうかな……?」


俺は慌てて手を離してその場に正座する。

女の子の体って……柔らかいのな。


「ごめん……なさい……、というかなんでここに!?」


手に持ったかわいいウサギのぬいぐるみキーホルダーと家のと同じ形の鍵……そういえば。


『この鍵は彼の家のスペアキーだ、つまり……寝静まったところに忍び寄る事が出来る』


昨日そんなこと言っていた……!


「鍵を返せ!と言うかいつの間に!?」

「この部屋に初めて入った時、型を取らせてもらってね、これは自作だ」


なんと……型があるときたか、この鍵をとったところでまた量産される……。


「助手君……昨日の今日でも気は変わらないのか?今なら君の部屋だ、少々手荒な真似をされても……」

「しないから!とりあえずでてってくれ!!」


学園での平穏どころか、家での平穏も無くなったのだった。

れぽです(/´△`\)


あめです、こころもあめもよう←


次回まで!

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