『超お金持ちがいない!』
どたばた騒ぎが続いたがやっと落ち着きだした一行。
普段通りの活動がようやく開始する。
「園部、はじめから居たあなたなら……この部に足らないもの、わかるわよね?」
「部室も部員も最低人数揃ったじゃないですか」
「ちっがーう!!」と何故か叫びだす栗島先輩。
ホワイトボードいっぱいに大きく文字を書く。
『超お金持ちがいない!』
「これ!モデル……にスカウトされまくる人と超天才は確保したけど、まだこの人がいない!」
その言葉に桃井さんが静かに挙手する。
「自分で言うのも卑しいのだけど、一応私は助手君と子ども四人程度なら、いまの貯金と今後入る予定のお金で養えるのだが……」
確かに、世間一般的には桃井さんが言っていることが本当ならお金持ちの分類になるだろう……というか、子どもの人数増えてない……?
「確かに桃井書記もお金持ちだと思うけど……どうあがいても勝てない程の資産を持っている人が良いのよ」
だろうと思った、そこまでいくとスーパードクターの家系とか、両親はハリウッドスター、石油王だとか造船所社長レベルじゃないと無理なんじゃないのか……?
「そうか……まぁ、別に愛があればお金なんてどうでも良いのだけどな。では、助手君にはここにサインと印鑑をだな……」
「これは……」
目の前に出された見たことの無い書類を手に取る。
「市役所で婚姻届けを貰ってきたぞ、これで晴れて私達は夫婦だ」
「誰が書くか!」
最近書類を出されること多くないか?
そのまま婚姻届けを回収して話を戻す。
「けど、うちにそんな生徒いるなんて聞いたこと無いですよ?」
「園部が株で一儲けすればいけそうね」
そんなことできたら学生辞めて悠々自適に暮らすさ、仮に儲けたとしても一人で五人も養える財力を持っている桃井さんには負けるだろうけど。
「園部君が産油国で一発当てたり、金鉱脈当てれば一発ね。私達は待っているからさっさといってくださる?」
相変わらず小百合さんは当たりが強い……。
そんなことしたら俺の身が持たないだろ。
「助手君……」
「どうせ私に任せろー……とかだろ?」
「遂に以心伝心を……その日は近い」
桃井さんの言いたいことが何となくわかってしまった自分が悲しい。
「ともかく!私達には副会長がいない!出来れば超お金持ち辺りが良いけど、多分いないから凡人でもいい!」
「栗島会長さん?ここに来るというだけで既に凡人ではなく変人だと思うのだけど」
「たしかに……けど、私は普通の人よ!」
十分変だと思うが……主にテンションが。
桃井さんがニヤリとしながら栗島先輩につっこむ。
「そういう栗島先輩は、よくこの部室でパンツとかブラジャー見せつけて来ますよね」
「そんなことしてない!」
「ちなみに今日は紺色ですよね?」
「な……何で知ってるのよ!?」
「さっきしゃがんだ時ちらっと?」
今日は栗島先輩……紺なのか……。
あの人たまに凄い大人っぽい色のはいてくるんだよな……紫とか。
部員全員にパンツの色を公開した栗島先輩は再び仕切り直す。
「私はあと一人ほしい!」
「これ以上変人が集まると収集が付かなくなるのでは?」
「私は増えてもいっこうに構わないさ、助手君が横にいれば」
理由はともあれ、意見が割れたな……。
いらないという意見とどちらでも良いという意見。
ちなみに俺はどっちでも良い。今さら一人二人増えても大した差ではないだろう。
俺の意見も会長に伝えて、結局結論は出ないままにその日の生徒会役員部は終了した。
その日の晩、自宅にて。
俺はあの紙と対峙していた。
「生徒会役員選挙……」
四季先輩にあの日渡された紙だ、返却したのだが返事はどうであれ持っていてほしいとのこと。
どうやら俺が立候補すれば即当選、翌日から生徒会役員になれるらしい。
ただ、なるにあたって一つ大きな規約がある。
先日の生徒会室での出来事。
「園部さん、私はあなたのような人材が欲しい」
「俺なんかそこら辺によくいる、ただの一般的な年相応の高校生ですよ」
「確かにそうですね」
ならなぜ俺なんだ……。
「単純に私はあなたの今後の可能性を評価しているのです」
「可能性ですか……」
ますます四季先輩の考えていることがわからない。
その後も四季先輩は続ける。
「そうです、まだまだ粗削りながらも良く思い付いたと思いますよ?私の側にいれば更にその力は伸びるでしょう」
「それと」と四季先輩は続けた。
「回答を導きだすのもそうですが、あなたには討論するセンスがあります。その力も今後は必要になるはずです」
「嫌ですよ人前で、しかも全校生徒の前で話すだなんて。四季先輩の様にあそこまで饒舌に話せませんよ。それこそ四季先輩がいるんだし、俺なんかはいらないのでは?」
「そうですね、確かに今はそうかもしれないですね」
すると、四季先輩は生徒会長席に腰を掛けた。
「私達は革命を起こします、ですが私が生徒会役員としていられるのも今年度丸々と来年度の半分ほど」
「私達には後継者が必要なのです」
「それなら俺じゃなくともやりたい熱意のある人の方が……」
「あなたほどの懐に潜り込めて、みんなから愛される人はそうそういません」
「別に俺はそんな人では……」
「本当に……全く、まぁいいでしょう」
呆れたような態度を取る四季先輩。
「どうですか?ここまで話を聞いて、なぜ園部さんを求めているのか、理解していただけたでしょうか?」
理解はした、したのだが納得は出来ていなかった。
「あぁ、そう言えば」と思い出したかのように四季先輩が口を開けた。
「生徒会と部活動の掛け持ちは、禁止に致しますので、生徒会になる際は退部してくださいね?特例であの部には人数制限をもうけませんのでご安心を」
結局決着が着かないまま、あの日は終わってしまい、いままでにいたっている。
頭を抱えて悩んでいると鍵を開ける音がし巨大な羊が入ってきた。
「お隣さん?そろそろ不法侵入で訴えますよ?」
「お邪魔する」
「話を聞け!?」
「おかずを作りすぎてしまった、食べて欲しい」
「……わかった」
悔しい事に、こうしてたまに作りすぎで持ってきてくれる桃井さんのおかずは、美味しいし財布も助かっている。
「しかしまぁ、助手君はよく食べるね」
「年頃の男子だし普通だろ」
「そうか……こちらにも作り甲斐があるというものだ」
「ん?何か言ったか」
「何でもないさ、ただの独り言だ」
その後もしばらく桃井さんは居た。
そして桃井さんはあの話題を振ってきた。
「先日の四季先輩とのやり取り……あれは一体なんだい?」
「……忘れてくれるとありがたいけど、そうはいかないよな」
「当然じゃないか、助手君は大切な人だからね、悩みがあるなら聞こうじゃないか。もちろん、みんなには内緒だ」
俺は事の顛末を桃井さんに話す。
「成る程、つまりは助手君を引き抜きたいと、そういうことだね?」
「そう言うこと、断ってはいるけれどなかなかね」
「そうだな……どうせ、選挙が終われば静かになるだろう、それまでの辛抱かな……?」
「確かにな、何を思い悩んでいたんだか」
俺はこのままの学園生活をしていれば良いんだ、四季先輩には申し訳ないけれど、やはり協力はできない。
「ありがとう、美雨……気が楽になった」
「気にしないで、私は少し助言をしたまでだ……それより助手君?」
「なんだ、一緒には寝ないぞ?」
「いま呼び捨てで私を呼んだね……?」
「……あ」
ニヤニヤと笑ってこちらを見てくる。
「助手君との……その日も近いのかな?また明日!」
そう言い残して彼女は足早に家を出て、鍵を閉めていった。
れぽです(/´△`\)
いろんな方に見ていただけて感謝です!!
頑張れる……