『部活動として認めさせる!』
生徒会役員部始動!
と思いきや、何やらハプニングがあったようで、早速躓いてしまいました。
「それでは、本日の生徒会役員部を始めます!」
生徒会役員部とは、生徒会役員のようなことをする、生徒会役員ではないもの達の集まり……。
「それじゃあ、早速……」
部のルールは5つある。
「今日の議題はこれ!」
壁際のホワイトボードに大きく太い赤文字で、『昨今の校内風紀について!』と書く。
その前に偉そうに仁王立ちしているのは、我が『生徒会役員部』の部長、栗島 ゆみだ。
そして、これが一つ目のルール『1日1議題』……と言うか、栗島先輩が話したい内容。
肩甲骨を覆うくらいまで長く伸びた、僅かに赤みを帯びたさらさらな栗色の髪を、少し偉そうにかき分ける彼女に質問。
「すんません部長」
「部長じゃなく、生徒会長!もしくは会長!」
「あー……はい、会長」
「はい、書記の園部!」
ルール二つ目、『呼ぶときは各役職で呼び合う』
「シャツのボタンが一個ずれてます」
ブレザーの間から見えたシャツの隙間を指摘する。
まさか、一日中あの状態だった訳じゃないよな……。
「あ……これはそう!ファッション、ファッションなの!アシンメトリーだっけ?左右非対称の!今の流行りなのは知っているんだから!」
「……ブラ見えてますよ」
「ぁ……見せブラよ!ばか!」
「そんな見せブラがあるか!?」とツッコミたいが……。
ちらっと見える、ピンク色のブラが可愛くて眼福なので良しとしよう。
まぁ、残念ながら直後に、背中を向けて直してしまったのだけれど……。
くるっと向き直って、俺に人差し指を突き刺した。
「そんなことより、園部!」
「はい、書記です」
早速自分で作ったルールを破った彼女は、少し頬を赤らめて「こほん」と咳払いをして仕切り直す。
「それでは園部書記!」
「何ですか?」
目の前の誰もいない長机を手のひらで叩き、大声で叫んだ。
「なんで私たちしか、この教室にいないのよ!」
今このだだっ広い教室には、コの字に並んだ長机とパイプ椅子、それとホワイトボードがあるだけ。
そしてそこには、栗島先輩と俺の二人きり、それもそうだろう……
「だって今、部員二人きりじゃないですか」
そう、この『生徒会役員部』は部員数は二人だけ、なぜあのとき俺以外の生徒を引っ張って来なかったのか……非常に謎である。
「……議題変更!」
ホワイトボードの文字を荒々しく消す。
上の部分を消す際、ちょっと跳ねたりするものだから、服の上からでもよく分かる、形の良いふくよかな胸が上下に揺れ、スカートの中身が見えそうになる。
そして、先程より大きく太く目立つように文字を書き込んでいった。
『部員を集める!』
「今日の議題はやっぱこれ!」
「あれ、でも……」
「今回は特例!会長特権!」
ルール三つ目、『議題は途中で変えない』
ルール四つ目、『会長は絶対!by.栗島』
かつてここまで自由奔放な人を見てきただろうか……いや、ない。強いて言えば、創作上の人物くらいだろう。
「でも会長、この時期にどうやって部員を集めろと?」
今は4月半ば、既に部活動に入る人は体験入部やらで入り、入らなかった人はバイトや塾なんかに行き始めている時期。
もしかすれば、王道な部活動……例えば、野球やサッカー、吹奏楽などの部活動なら可能性はまだあるが、入っている俺ですら活動内容が謎の部活では、誰も入らないだろう。
「そ、それは……」
どうやら栗島先輩にも考えは無い様子。付き合いはまだまだ短いけど何となくこの人は、何も考え無しに突っ込んでいくタイプだと思う。
「そういうのは書記の仕事よ!これは会長権限だから!」
「いやいや……それってさすがに会長の仕事では……?」
「うぐ……」
思わず俺は会長にツッコミを入れてしまった。
会長の……と言うより、言い出しっぺの仕事では……?
「園部ならできる!私はそう信じているよ!」
なにを根拠にこの人は……。
まぁ、手伝う程度なら構わないが、立案計画実行を一人でやる気にはなれない。
「はいはい、ちなみにあと部員は何人ほど欲しいんですか?」
「そうね……」と顎に手を当て目をつぶり考え出す先輩。
「今晩のおかずは何かしら……」
「おかずの話はいいから!」
再び「こほん」と咳払いをして仕切り直す。
「そうね……あと三人だけ欲しいわね、それ以上は要らないわ。書記一人、会計一人、副会長一人ね。さらに、それぞれが超お金持ちとか、超天才だとか、超運動神経がいいだとか、あとは実はモデルやってますとかだと良いわね!勿論、それ以外の魅力的な人でも可よ!」
果たしてうちの高校にそんなハイスペックな人はいるのだろうか……。
いたとしてもこんなところで時間を潰すとも思えない。
第一、先程もあったように俺でさえこの部活の活動内容がわからない。
こんな得体の知れない場所に、常日頃から時間の無さそうな忙しい人が寄ってくるのだろうか?
「あの……なぜ、そんなにもスペック高そうな集団にしなければ?」
「んー……何となく?ただ楽しそうじゃない!ほら、アニメとか漫画とかでも、こういう集団の登場人物ってやたらとスペック高いじゃない?」
そんな理由か……。
じゃああれか?俺は「平凡の中の平凡、キングオブ平凡だから」みたいな理由で、偶然見つかり栗島先輩の愉快な仲間リストにぶちこまれてしまったのだろうか……。
「園部って、中々に平凡よね」
「そりゃどうも……」
「清々しい程に平凡よね」
「さすがにそれ以上は、なぜか傷つくのでやめてください……」
ここまで平凡を誇張してくると、ますますなぜ俺がここにいるのかわからなくなった。
そもそもなぜ、俺がここにいるのか。
まだ入学したてのあの日、勧誘と言う名の拉致を受けた時……。
桜の花が散り始めたある日の帰り道
「あなた、暇そうね!私に付き合いなさい!」
といわれ、校門を出る少し手前で腕を引っ張られた。
突然の事に呆気に取られて、抵抗する間もなく連行。ついた先は、漂うほこりが日の光に当たりキラキラとしていたこの教室だった。
当時は長机もパイプ椅子も畳まれており、ホワイトボードだけがある教室で、それ以外にこれと言ったものは何一つ無かった。
「この教室、いいと思わない?」
「いきなり何ですか……帰ります」
「ちょっと待って!」と再び手首を掴まれた。
女の子を振りほどいて無視をするほど薄情でも無いので、とりあえずは話だけでも聞くことにした。
雑巾で椅子と長机を拭いて対面して座る。
「俺、まだ引っ越したばかりで、荷物とかの整理終わっていないんですよね……」
「なんか、今のあなた楽しくなさそう……ここ来る前に何かあった?」
この人……話聞いてねぇ。
「初対面の人には関係ないことです」
「"初対面"……か」
まるで、彼女は前にも会ったかのような素振りを見せてくる。しかし、少なくとも引っ越してからこんなに明るく活発な、行動が突拍子もない人には会っていない。
「名前はなんて言うの?」
「……園部一樹です」
「園部一樹君ね……"やっと"聞けた」
やっと聞けたとは何の事だろうか。確かに連行されて一時間程経ってはいたが、やっとという程の時間か……?
彼女は突然立ち上がり、身を乗り出してこう言った。
「私といれば楽しいんだから、楽しいことしましょ!そうね……生徒会なんてどう?楽しそうじゃない?」
「……すいません、ちょっと考えますね」
そういう否定だ、考えてみますという否定。いわゆるところの社交辞令だ。
俺は立ち上がってその場を去ろうとする。
「明日もここで待ってるから、よかったら来てね?」
振り返り際に見えた彼女の顔は悲しそうだった。
それからは何故だろうか、理由はよく分からない。正直、自分の行動の訳の分からなさに疑問を抱くが、次の日、俺はまたこの教室に来てしまっていた。
ルール五つ目、『毎日楽しく過ごしましょう』
ふと、俺は思った疑問を投げつけた。
「そういえば、この部活って生徒会に申請は出したんですか?」
設立して間もないが申請書くらいは出した、あるいは貰いに行ったのだろうか?
俺の知識が普通なら、部活の新設には書類が必要だと思う。
設立に当たり、条件もあるだろうけど、そこら辺は正直詳しくは分からないが。
「え?なにそれ、そんなの必要なの?部活って勝手にバンバン作れるものかと」
衝撃的事実……まだこの部活、部活にすらなっていない、ただ教室を勝手に占拠して集まっているだけだった。
「そりゃ……普通はそうですよ、生徒会に申請書出して受理されれば晴れて部活として認められるんですよ?」
「そ、そんな……そうだったとは知らず……」
まぁ、部活動としては認められるだろう……、何せうちの高校には『異世界と交流する部』『外を眺める部』『だらけたい部』など、よく分からない謎の部活がゴロゴロとあるし。
今一番問題なのは、この教室を不法占拠している事実だ。
普段使われない楝の端の教室ではあるが、この状況が好ましくないのは事実だろう。
再びホワイトボードの文字を消し、今度はさらに目だつよう、太字で周りを囲む。
『部活動として認めさせる!!』
「やっぱり今日はこれ!」
「早速、会長権限乱用しすぎじゃないですか!?」
「いいの!まだ二人なんだから!」
二人なら良いのか……?
疑問を抱くも、今後活動していくのにはまず最初に話し合わなければならない議題だったので乗ることにした。
「じゃあ、早速生徒会室に行って書類貰ってきましょうよ」
「行ってきて!」
「俺が!?」
「そう!」
「……わかりました」
本来、立案者が行くものだろうけれど……行かないで子どもの様に駄々こねられても困るので渋々行くことにした。
数分後
「取ってきましたよ……って、まじか」
取りに行くまでの十数分の間の出来事だった。
大絶賛爆睡中……。
机に突っ伏して気持ち良さそうに寝ている。
「起きてください……」
「………」
「とってきましたよー?」
「………」
ダメだ……揺らしても声かけても起きそうにない。
「ゆみちゃーん……朝ですよー」
俺は耳元で呟いてみた。
「ふぁい……ママ……」
ま、ママ……?
先輩の家の朝は毎回こうなのだろうか……。
寝ぼけた先輩が俺に抱きついてきて、突然の重みに耐えきれずにそのまま後ろへ倒れ込んでしまった。
必然的に先輩に押し倒される形になり、距離が近くなる。
まだ寝ぼけている先輩はなんだか可愛かった。
「な、なんで園部君が下にいるのよ!」
「先輩が寝ぼけて抱きついてきて来たんじゃないですか」
うまく状況が判断できていない彼女は頬を赤らめてすぐ立ち上がった。
「きょ、今日はもうおしまい!眠いから帰る!」
「あ、書類……」
すっかり書類のことを忘れた先輩は、そのまま教室を後にして、この日の生徒会役員部の活動は終了した。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
創作世界の生徒会って良いよねってことで書いてみました!
また次回!




