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謎のゴミ箱(仮)

とりあえずって形で、俺はそこら辺の一室をあてがわれた。荷物の一切合切を召喚された時に置いてきてしまったせいで何も持っていない……スマホが恋しいぜ。

しかしまあ、ここは物置か? 物置なんだな?

そういいたくなる程度にはモノがあふれかえっている一室だ。本だの本だの本だの本だの……って、全部本じゃねえか! いいよ好きだけど! 俺本大好き! 超好き!

実は脳筋でしかなかった神様時代の俺は、文字もあんまり読めなかったのだ。

神様だからと言って、万能なわけじゃない。

まあ俺も、戦い以外にもいろいろ司っている物はあったからな……それは普通の物よりは上だろう、たぶん。

しかし。俺は前世では学習というものをしなかった。神様ってそんな物、えらい頑固なんだぜ。だから、何々をつかさどっている~とかが通用するのだ。だって神様が学習して、植物司ってたけど、爬虫類にも詳しいから爬虫類司りますテヘ……なんて笑えねえじゃん? オールマイティなんてほとんどいない。全知全能……あのくそ野郎位しか、オールマイティはいなかった。

俺の後の武神がどれだけの技量かは知らないけど、まあ俺程度には強いんじゃねえの? 

でもそうしたら、俺を召喚しようとしたという事実がおかしい事になる。だって俺神様という地位を剥奪されたんだぜ? おまけに呪われて人間にまで格下げさえされたんだぜ、俺は人間生活超満喫してたけどさ。

それなら新しい武神が生まれるなり、司るものが何もない神だったり、敵対していた方の武神だったりが俺の地位を継いでいるはずなんだけどな……なんなんだろ。わからん!

まあ、俺は色々封じられてて、おまけに限界というものが存在する人間っていう種族だから神様時代の百分の一も本気を発揮できないだろうけどな。

それはさておき。俺は物置だからこそおいてある、掃除道具一式を掴み、箒やはたきで物置(仮)の埃を全部はたいたり落としたり纏めたりした。

だって人間だからさ……埃まみれの場所で眠るとくしゃみ酷いんだ。

二週間自宅の掃除をさぼったら、くしゃみで眠れなくて徹夜したこともあるぜ。まじで。

そんなしょうもない理由があって、俺は念入りに埃をどうにかした。その辺にあったゴミ箱みたいな形の入れ物に、取り合えず埃は全部入れた。

入れてから、その入れ物になんか知らんがいろいろ文様が入っているのに気が付いた。

手に取って眺めてみれば、感じるのは神の力だ。錬金をつかさどる神、アレイスターの力だ。

これ、あいつの何かしらなのか? ……やべえ、もうゴミ入れちまったぜ。

アレイスターは変わり者で、錬金の頂点だった。でも自分で変な物を作りすぎて。収拾がつかなくなって俺が救出した事も多数ある。

一番馬鹿だったのは、人間の言う所の、賢者の石を錬成させた事だ。

賢者の石なんて、不老不死の水を作るとか言われているけれども。

神が、神以外の不老不死を認めるわけにはいかないとか何とかいう事情で、賢者の石の作り方は処分されたはずだ。アレイスターはあのくそ野郎に土下座して許しを乞うたんだけど、許してもらえないで、まともだった見た目を化け物の見た目、それも魔物と呼ばれている神がめちゃくちゃ嫌う生き物……これは敵対していたやつらが作った、あいつらも忌み嫌っている生き物、なんで作ったんだ?……の姿にされて、せめてもの慰めに、錬金に都合のいい屋敷を与えられて、天上に二度と帰ってこられないようにさせられていた。

それはさておいて。

俺は埃を入れたゴミ箱(仮)の中をのぞいた。

うわあ……

埃は砂金になっていた。まじ? アレイスターお前、またこんなもの作ったのか?

おいおい。

俺は溜息を吐いてから、ベッドの下にゴミ箱(仮)をそっと隠した。

実を言えば、金を錬成するのは簡単なんだ。鉱物系は比較的錬金が簡単で、大変なのは生ものだ。アレイスターは鉱物に特化した錬金が得意だった。あいつの力で錬金された魔法や魔法金は、あいつらと敵対していた時、武器として非常に役に立ったっけな。

だからアレイスターも、罰があの程度で終わったわけなんだが。

しかし、だ。

どうも、人間にとっては金を錬成するのは大変な事らしいのだ。

人間は研究熱心なくせに、どうにもいろいろ器用貧乏なんだ。なんで魔法銀作れてただの金が作れないのかほとほと疑問だった。

後で調べてみるのも楽しいかもしれない。

それはさておき、あのゴミ箱(仮)は隠しておくに限る。何が起きるかわからないしな。

俺はここでようやく、本棚に向き合った。

なんだかわからんが専門書らしい。

俺は適当に一つひっつかんで、寝台の上に座り込んで字面を追う事にした。

神様スキルなのか、それともご都合主義なのか、俺にはありがたい事にこの世界の文字も読めるらしい。

ラッキー。文字も読めないとか悲惨だからな、笑ったそこのお前、あとで踏みつける。

そんな事すら思いつつ、俺は文字を追っていく。

情報が足りないからよくわからないんだが、歴史系の本らしい。

セレウコス史と題名にあったから、セレウコスの歴史なのだろう。

色々眺めて懐かしくなる。あったわこんな戦争。

あったわ、こんな魔物とのいさかい。

あったっけなーこんな大騒動になった決闘騒ぎ。確かあいつらの息のかかった人間が、こっちの神の誰かが寵愛していた人間と戦ったんだっけ。

確か女の取り合いだった。うん。懐かしいな……

俺は最後まで読んでから、この国はどうやら俺が人間にされてから六百年は経過しているという事実を知った。

久保田燐としての人生はたったの十八年ぽっちだ。つまり計算すると五百八十四年はどこかをさまよっていたという計算だな、あの世かな。

あの世にいたんだったら、絶世の美貌で知られていた冥界の女王、ファリエナさまのご尊顔を拝みたかったぜ。拝んだのかもしれないけど、覚えてないならノーカウントだ。うん。

俺はその、五百数十年、何をしていたんだろうか。

いまいち覚えてない。たぶん情報量が多すぎて、人間の頭では処理しきれない事なんだろう。仕方がない。

ほかにも魔導書の専門のやつ、なぜか禁書になりそうな異端の本……だのいろいろ取り揃えてあって、暇な事もあって俺はそれを読みまくった。

そして、腹が減ったななどと思った。

誰か、俺にご飯ちょうだい。

ここに閉じ込めて餓死させるとかはなさそうだけどな。いざとなればゴミ箱(仮)の砂金を売ってでも食料は手に入れるぜ、こんな窓の高さじゃ、元ギギウスは死んだりしないんだぜ……今の俺も実は結構運動神経がいいのだ。

学校にいた頃は、お前の結構は結構じゃない! 頭おかしい! うらやましい! と大絶賛されたものだが。

さて。

俺はあと一時間しても食事が来なかったら、扉を開けて食料探しに出かけようと決めた。

人間だもの。食事をしなければ死ぬのだ。

昔、前世では飲まず食わずでも結構戦い続けて、もうやめてと周りが涙目になっていたりもした。懐かしい思い出だ。

俺お前たちが戦えっていうから戦ってんたんだけどな。

つい思い出し笑いをする。確かに俺は、どうしようもない武神だったのは間違いなかった。



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