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それがあらわになる時

そして個人戦の本戦も本日で終了である。個人戦で一週間、団体戦で一週間なのだ。

女将さんたちの説明は少し違っていたが、日数は数えたらあっていた。

でも七日と一週間では、印象が違うと思うんだがな。

俺の翻訳機能が調子悪いのかもしれないな。

だがいや、もう大変な熱狂の中終わる中、大問題が起きなくてほっとしている。

冬の気配で暴れまわる魔物が、対戦相手として登場しなかったから、すさまじい虐殺は起きなかったのだ。

おそらく、闘技場の関係者たちが、気が立ちすぎた魔物を投入する事を取りやめたのだろう。

賢明な判断だ。

そのためあの後一度も、魔物の名前を冠する獣は試合に出ていない。

俺の責任じゃないけれど、死人が出ていなくて本当に良かったと思う。

ぶーちゃんは俺の目の前で、最後の試合だと張り切っている。

本戦に本当は、ぶーちゃんは出場しないはずだった。予選だけのはずだった。

だが全部の予選試合で勝ってしまったぶーちゃんは、そこら辺の強いと言われている魔獣よりも強い、と認識されてしまい、出る事を余儀なくされてしまったのである。

そしてぶーちゃんが、全部に勝ったら素晴らしいご褒美をもらえる、という事を聞かされてとっても乗り気になってしまったのだ。

何が欲しいの、手に入る欲しい物なら探すのに、と言ったのだが、ぶーちゃん曰く、


「自分で手に入れるのがいいの」


らしい。

どうしても、俺がかかわらない形でほしい物があるようだった。

そして現在進行形で、ぶーちゃんはどこかの騎士を見事に吹っ飛ばした。

宙を舞う騎士の体。

あれ重装備なんだけどなー……あの鎧何キロあるんだろう。

なんて思っちゃうくらいに重たい、体の大きな男すら、ぶーちゃんの一撃で軽い羽根の様に吹っ飛ぶわけだ。

そして受け身も取れないで……そりゃそうだあの装備で受け身がとれるわけがない……地面に直撃し伸びる。

ぶーちゃんと一合もぶつかり合う男はいない。

騎士もいない。

目つぶしをしようにも、先にぶーちゃんがそれを察して、嗅覚と聴覚に物を言わせて目を閉じたまま相手の攻撃を躱し、その躱した動きで相手を戦闘不能にしてしまう。

この仔どんだけ強くなるつもりなんだろう。

そんな風に、ぶーちゃんが勝利するたびに思っちゃうわけだが、ぶーちゃんはヨーゼン・カイが直々に、人間を戦闘不能にする方法を伝授しているのだ。

普通の人間じゃだめだわ。勝てっこないわとこの状況で俺はとうとう認めてしまう。


「やれ、ししは本当に強い仔だな」


のんびりと俺の脇で、ぶーちゃんの強さを褒めている瘴気王である。


「あれだけ強ければ、たいていの物から和子を守れるだろうな」


「私はぶーちゃんに守ってもらおうなんて思いませんよ。私はぶーちゃんを守りますが」


「何故だ和子」


「私が親分だからですよ」


「なるほどなるほど」


首を上下に振って納得しながら、瘴気王は俺に飛んできた石くれは手に持つ角材で打ち払った。

角材の方が脆そうなのだが、この角材は見事に石くれをはじき返す。

その石くれが、飛んできた方角に打ち込まれて、何処かの選手の背中に直撃し、その選手が倒れ込んで戦闘不能になった。


「あなたが選手を伸してどうするんです」


「和子の所にまであのような石を飛ばすのがいけない」


しれっとしたもんだなあなた。

俺は溜息を吐いてから、これでぶーちゃんが対戦するのは最後だったな、と対戦表を確認する。

ぶーちゃんは強いけれども、舞台としては迫力がない。

武術大会は迫力とかパフォーマンスとかも重視される。一大イベントだし、最強の戦士が見るからに強そうな、事実強いだろう相手と戦う事で興奮が頂点に達するものだ。

そのため、いくら実質的に強くても、見た目がそこそこ弱そうなぶーちゃんは、最終試合の相手にはなれない。

個人戦の最終試合は、帝国最強の黒騎士との対戦との前に一つ。

帝国の闘技場が抱えている最強の魔獣、ヒュドラとの対戦なのだ。

ヒュドラに勝利して初めて、黒騎士との対戦が可能になる。

何でだよ、と思うのだが。

この戦いは武術大会という事なのだろう。

武の術である。

武とはすなわち猛々しい事であり、勇ましい事である。

その術を見せつけあう大会なので、人間同士の技量よりも、やや魔獣とか魔物とかの戦いの方に重点が置かれてしまうのは仕方がない事なのだ。

ぶーちゃんと戦わなかった相手たちは、もちろん人間同士の試合を行っていたりする。

団体戦とかはもろに人間同士のぶつかり合いだったな。

団体戦は人間同士、個人戦はどちらかと言えば魔獣との戦いがメインなのだろう。

俺の分析では、死人を出し過ぎないようにするためだという物がある。

団体戦ならば、何人かは回復系の術を知っているだろう。

致命傷の傷は、体の中の魔素が許す限り治癒できる。

虐殺になる事は、段階が上がっていくほどに低い可能性になっていく。

だが個人戦の場合は、一対一であり、己の技量を最大に使う。

そして審判が途中で割って入らない限り、助けは来ない。

そうなるともう、全力であり相手を殺してしまう事も多くなるのだろう。

だから個人戦は、殺しても“殺人”にならない魔獣との試合が多いのだ。

ぶーちゃんの様に、殺されるわけもないほどの守りをもらっている生き物なんてそうそういないのだ。

だってその守りを渡したのは、今やもうおそらく、唯一の不老不死の怪物たる、ヨーゼン・カイなのだから。

……あの場所でユーリウスが、神々すら不死の道から外れたと言ったのだ。

そうなるともう、あちら側でただ一人、この世の理たる死の道から外れていると言われていたヨーゼン・カイ以外に、不老不死を誇れるものはいないだろう。

そうやって考えると、隣に立っている彼は常識とカイロンな物から外れているのだろう。

おっかない事に。

そして、武術大会で黒騎士に挑むために、ヒュドラに立ち向かうのは二人の挑戦者だ。


「驚きましたね」


「何がだ?」


「片方のあの背中の紋章は、セレウコスの物でしょう」

「そうだな。セレウコスは今回の大会で、相当の腕利きを投入したのだろうな。国の威信をかけた大会だという事もあるだろうが」

俺たちは(無論ぶーちゃんを含めて)ヒュドラ相手に挑んでいく人たちを見守る事になる。

だけど何だろうな、さっきからめちゃくちゃ気味が悪い物がある気がするのだ。

何だろう。

個人戦最終日である、本日。二週間の戦いの中の中日である今日、何がそんなに気持ち悪いのか。

少し考えた後に、ああ、と合点する。

ヒュドラに挑んでいる片方が、なんだか俺の眼を潰そうとした選手と同じ国の奴だからか。

隣国の選手というだけで、俺の評価が下がってしまうあたり、俺はあの選手を許せないのだろう。

忌々しい事に、俺の片目の視力はいまだ回復していない。

見えないわけじゃないが、俺今とってもすさまじい乱視状態だ。

片目がどこの濃霧なんだろう状態だ。

治したいのだが、いくつか作ってもらった目薬は効果がなく、無駄にしみるばかり。

そしてヨーゼン・カイは自分の力を使うと、周りへの被害が尋常ではないから、人の多い空間ではやれないと言ってくれた。

この大会が終わってもこのままだったら、何処かの森とかに行って力を使ってもらう事で意見が一致している。


「……師匠」


俺は小さな声で、ヒュドラに挑む片方を認識して呟く。


「師匠? ……あの男が和子の師匠なのか。私を拒むほどの面倒くさい師匠」


「言い方が悪いですね。でも世話の焼ける師匠だというのは間違いがありません」


小声で返しつつ、俺は師匠を見ていた。

やっぱり顔色が悪い。

今まで接触できないでいたのは、俺がぶーちゃんの責任者で、御法度である八百長を防ぐため、俺たちが選手と接触しない事が言明、されていたからだ。

そのため、俺は師匠と接触なんてできていない。

選手は試合開始の数時間前には、控室に閉じ込められているのだし、俺も似たような環境だったのだから。

こうして師匠を見るのは、ぶーちゃんとここに立つ前に見た試合っきりだ。


「顔色が悪いですね、暑いからならいいんですが」


どこか青ざめた唇が、それでも好戦的に笑っていた。

ヒュドラ相手に粘れるのは、師匠の技量が素晴らしいからなのだが。


「和子、私の後ろにいなさい」


じっと見ていたのに、瘴気王が強い力で俺とぶーちゃんを自分の背後に庇った。

何だ、と問いかける前にそれが起きたのだ。

隣国の選手が剣に何かを付随させる、それが燐光をまとい、地面につき立てられる剣。

それを認識したと思った時、魔獣搬入の関係者が控え場に駆けこんできた。


「大変だ、対戦している魔獣の片方が、魔獣ヒュドラじゃない!」


「―――――え?」


誰が呟いたのだろう。


「購入の時に手違いで、片方の選手の魔獣が、魔物だった!」


試合を止めなければ、と叫ぶ関係者。

だが。

その声に気を取られている間に、それは発動してしまっていた。

凍てつく世界。

凍れる世界が顕現する。

隣国の選手が……あたり一面を氷の世界に変えたのだ。


「和子の気配だな。あの男は和子の力をあの能無しから手に入れたのだろう。同じ国の選手だ」


こんな状況でも平然とした声で解説しているのは、隣の瘴気王その人だ。


「どういう事ですか」


「和子の力を引きずり出して奪ったのが、割と最初にいただろう」


「まあいましたが」


「その男が、おそらく和子の力の欠片を持ち続けていた。そしてあの選手に渡し、選手も切り札として今使ったのだ」


瘴気王は自分の袖で顔をかばって呟く。


「ひどく愚かだな」


「何故」


「あれは、ヒュドラによく似ている魔物だ。あれは」


微かに笑った瘴気王は、背筋が粟立つほど恐ろしいのに、目を奪う笑顔を見せる。


「チウロン。九つの頭を持つ私の蛇の子孫だろうな」


とても小さな声での回答だったから、俺以外には聞こえてなかっただろう。


「チウロンはヒュドラなど目ではないぞ」


ゆるりと笑った瘴気王の視線の先で、隣国の選手が理性とかを失ったそのチウロンに丸呑みにされていた。

チウロンの顎が閉じると、そいつの血が顎からこぼれていた。

闘技場に悲鳴が響く。

ヒュドラは、人間を丸呑みにしないように、食べないようにしつけられている“魔獣”なのだ。

この光景は、誰もにとって想定外の光景なのだろう。

そして。

そのチウロンは、ヒュドラを戦闘不能にした師匠を、その尾で薙ぎ払った。

師匠が振り返って目を見開くのまでわかって、俺は飛び出そうとした。

喉の奥からあの人の名前を呼ぼうとしたのに、声は出ずに師匠が壁に叩きつけられる。


「ぁ!」


師匠がそれでもすぐさま起き上がる。頑丈な体に物を言わせているのだ。

ふらつきながらも立ち上がり、剣を構える。


「確かにチウロンの子供は、とてもヒュドラに似た見た目のようだ。蛇の模様など環境で変わるというのに」


俺をしっかりと掴んでいる瘴気王が、呟いた。

それは、チウロンもヒュドラだと思って戦おうとしている師匠を皮肉るようだった。

行こうとしているのに、俺は瘴気王にがっちりと止められているのだ。


「行かせてください!」


「ここで解決策を何も持たないのに飛び出すのは、愚かでしかないだろう、和子」


<だめだよ親分、あれはあいてにしたらいけないのだよ>


「あなたではどうにかできないのですか」


「出来るが、する意味を持たない」


<じぶんのだいじなあいてにかかわりがないもんね>


俺の問に明瞭な答えを返しながら、解決できると言いながら、やらないと断言している瘴気王。


「あの人間よりも、チウロンの子孫の方が可愛らしい」


微笑んだその姿は慈父の顔でしかなく。

やる意味がないと笑っているのだ。

人間の存在はそれっぽっちと示すように。


「でも師匠が」


俺は身をよじって足を思い切り踏んで、何とか師匠の側に行こうと試みるが。

それを許す相手でもないし、そしてぶーちゃんまでもが俺の服をかじって行かせまいとしている。

その間にも師匠はぼろぼろになっていく。


「いかせてえええええええ!!!」


誰の声かわからないその悲鳴のような絶叫は、俺の声だった。

血まみれの師匠が、試合を中止するために介入してきた人たちと一緒に動く。

でも、チウロンはそんな相手たちを全ての首で丸呑みにしてく。

チウロン一匹で、何人の人が死んでいくのかわからない。

そして、師匠もずたぼろのぼろ雑巾のような姿になり果てていく。

俺が行けば、俺が冬を踊れば、チウロンは魔物の様だから止められる。なのに俺を思ってそれを止めている相手の力で、そこに行けない。


「師匠、師匠、師匠!!!! ぶーちゃんせめてぶーちゃんだけでも放してよ!」


叫ぶのに、ヨーゼン・カイに抱え込まれた体は動かせない。

師匠が、吹っ飛ばされた。何度目かの激突、そして割って入ってきた人たちは全て戦闘不能か丸呑みか死んでいる。

立ち上がり続けているのは、師匠だけ。

その頑丈さがうれしいのだけれど、逃げてください、師匠、逃げてくれ!

師匠は微かに下を向いてぼんやりと立っている。

その足元に血だまりができていた。

ぱちり。

そこで何かが閃いたのが、俺の片目にも映る。


「なに……?」


ヨーゼン・カイの腕の力が弱くなった。

それをチャンスとそこから脱した俺は、それと同時にその光景の目撃者になった。

血だまりから電撃が、師匠の腕に絡まり始める。

師匠がその腕ではない方の腕をゆっくりと持ち上げて、ぐるりと回した。

ぐるりぐるりぐるり。

儀式めいたそれに見覚えがあって、どうしてあそこでその光景が始まるのかが分からない。

空が急激に曇っていく、遮られていく太陽。

……俺はこの力を知っている。

ずっと見てきた力だ。

ずっとそのそばにあった力だ。

ギギウスはそれを見ていた。

いつも最後の最後、どうしようもないと思った時に呼ばれる力。


「雷霆の召喚。……どこでそんな異能を覚えたんだ、小童」


ヨーゼン・カイが小さく言う間も、空の雲は真っ暗になるほど分厚く変貌し、稲妻の音が不吉なまでに増えていく。

そして。

血だまりの雷電と呼応するように、彼がゆったりと空へ向けていた腕をおろす。

そしてまた儀式めいた動きで、血だまりの腕を持ち上げた。

ばちり。

その手から伝う血の流れに、稲妻が宿った。

辺りは土砂降りの雨模様に変貌し、俺の眼でもなんとかそれが見えている状態でしかない。

ゆっくり、と。

師匠はその稲妻の宿る腕を振り下ろす。

どっしゃわあああああああ!!!

そんな音が、いや、それ以上に耳をつんざく凄まじい音の奔流が、闘技場のフィールドすべてに突き刺さった。

それは雷の雨だった。

立て続けに、落雷が降り注ぎ、地面をえぐり燃え上がらせて、信じがたいほどのエネルギーを見せつけて降り注ぐ。


「ユーリウスの雨稲妻」


眼が見えなくなりそうなほどのそれらの中、俺は呟くように口にする。


「どうして、ユーリウスだけが使える力を、師匠が持っているんですか」


答えは誰も返せないなか、時間としては数分だっただろうそれが終わる。

雨は土砂降りのままだが、雷はもう落ちない。

そこで俺は耐えきれなくなり、雨の中師匠目がけて走り出した。

チウロンの子孫は、跡形もないほど炭化していたから、もう起き上がれないだろう。


「師匠!!!!」


駆け寄った俺は、師匠が目を数回瞬かせた後に、ぼうっとした焦点の合わない瞳で俺を見たのを確認した。

俺を見たその目がぼやけたまま、師匠は俺に手を伸ばす。一瞬ためらったような動きになったのは、おそらく体の自由が利かないからだろう。

遠目からでもわかるほど痛めつけられていた、その体は近くで見ると雨の中暗くても、嫌というほどわかったのだ。

泣きたいけれど、痛いのは師匠だ、俺が泣いてどうする。

ぐっと涙をこらえた俺は、その手を自分にあてがった。


「幽霊でも幻覚でもないですよ、師匠」


笑え、と俺は念じて、師匠に笑いかけた。

すると、大きな体のその人は、俺を引き寄せて抱え込み、そのままずるずると地面に倒れた。

もはや血まみれで泥まみれで、汚れるとか馬鹿らしいほどだったので、そこに対してのツッコミはない。

ないながら、俺は不意に考えた事が空恐ろしく思えた。

師匠にユーリウスの何かしらが宿っている。

宿っているだけでこれだというのならば。

……そのものずばりである俺は、これ以上の脅威であり、世界の災厄になりうるのだろうと。

そして、今、気が付いた事がある。

雷霆が発動された後だからわかった事だ。

……世界を覆っている瘴気が、異様に薄くなった事に。

冬の浄化以外に、瘴気をどうにかなくす方法は、土地神とかを世界に下して、その神の力とか奇跡とかを使用させる事だ。

冬が来て、冬の本質の一つである消滅と浄化の力を、冬の大陸がほかの大陸に流す以外の方法は、それだ。

冬の神だった俺はもう、ただの人間である。

そのせいなのか、浄化できるほどの冬は来ていない。

巫女とかがいないから、どんな神もこの世界に降りてきて、力を発揮できない。

キャシーだって駄目だった。もともと、美の最高神の彼女は、浄化の力は微々たるものだったけれども。

誰も、春の地母神の森を覆う瘴気を、どうにかできないのだ。




世界の均衡を守る方法が、実に神々任せでしかないのだと、俺は今ようやく思い至った。




この世界は、手遅れな程ゆがみが発生してしまっているのだと、気付いた。




だから俺は




歪んだ世界の歯車の一つとして、もはや武神の影などないに等しいのに、人間になったのに、異世界たるここに呼び戻されたのだ。

同じ世界に属している物を、世界が呼び寄せたのだ。



師匠にがっちりと抱き込まれながらも、俺は雨に濡れたまま、呆然としていた。

どうすればいいのか、皆目見当がつかなかったせいで。

何から手を着ければいいのか。

何をやればいいのか。

英雄でも大賢者でも何でもない、ただの人間で、前世がちょっと波乱万丈だっただけの俺では、何が最善の道なのか、分からない。

俺は俺を絶対に離さないと決めたように、がっちり抱え込んでいる師匠ごと、担架で運ばれた。

他人事のように、フィールドは団体戦にはもう、使えないほどめちゃくちゃすぎて、この武術大会は中止だな、と思ってしまった。





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