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第7話 「勇者じゃなくて魔王風?」

「でも……」


 俺はつい口篭る。

 少しだけ迷ってから、やはり思い切って言う。

 そうじゃないと、すっごく「もやもや」して来るからだ。


 俺が気になって仕方が無いのはクッカの『服』である。


『身体のラインはバッチリ見えるし、胸の形も見えるような見えないような……それ、綺麗で素敵だけど微妙な服だよな、クッカ』


『え?』


 一瞬驚くクッカであったが、俺の言いたい事を理解すると真っ赤になってしまう。

 幻影とはいえ、すごくリアルだから色白の肌が真っ赤に染まるのがはっきりと分かる。


『もう! エッチ!』


 ああ、もじもじして恥らうクッカも可愛い。

 でも男という動物はしょーもないな。

 先程までリゼットの可憐であどけない美しさに魅かれていた癖に、今はクッカの透明感溢れるたおやかな美しさに参ってしまっている。


 俯いていたクッカがそ~っと顔を上げる。

 そして微笑む。


『でも安心して下さい。幻影とはいえ、この現世うつしよではケン様以外、私の姿は一切見えませんので』


 意外な事実を聞いて思わずホッとする。

 そんな俺を見てクッカも嬉しそうだ。


 可愛いクッカとの会話は超、楽しい。

 リゼットもそうだが、性格グッド美少女との甘い会話やイチャは、健康男子にとって最高だ。


 おお!

 し・あ・わ・せ!!!


 だけど……

 幸福なのは確かにいいが、いつまでもこんな事をしているわけにはいかない。

 限られた時間は有意義に使いたい。

 まだまだやる事がたくさんある。

 

 俺がクッカへ話したのは、この夜の間に村外で、自分の能力の様々な試運転をしたいという提案だった。

 魔法は勿論、体術その他も含め出来る限り!

 昼間のゴブとの戦いだけでは到底不十分であるし、俺には試してみたい他のスキルがあり過ぎたのだ。


『そうですね。ちなみに魔力量は全く問題ありません。ケン様の魔力量は中級の神様に匹敵するくらいで、私なんかより数十倍も多いですよ』


 は!?

 神様に匹敵?

 やっぱりMP999,999って凄いんだ。


『数値的に人間というには不適格過ぎますね』


 確かにこの能力数値で人間で~すと言うのは詐欺のような気がする。


『ご安心下さい、回復力もバッチリですよ! 何せ約1分間あれば魔力を全て使い切ってもすぐ満タンになります』


 MP999,999が?

 約1分で完全回復!?


『あはははは…………馬鹿馬鹿しいくらい凄すぎて安心したよ』


 こんな俺の笑いの事を「からからに乾いた笑い」っていうのかもしれない。

 呆然としている俺を見たクッカが悪戯っぽく笑う。


『うふふ……それにスキルは魔法系も体術系も武技系もその他系もオールスキルという言葉通り、ケン様は全て習得済みです。ちなみに未経験のスキルは練度1ですが、それなりに使えますし、1回発動さえすれば練度はすぐにMAXな神クラスへ達します』


『MAXな神クラス?』


『はい! 巷で良く言われる達人レベルの遥か先に、超人、使徒、大使徒、そして最後に神という超究極練度レベルがあるのです』


『……はは……これも馬鹿馬鹿しいくらい呆れるけど……はっきり言ってありがたいな』


『はいっ!』


 何となく昼間の火炎魔法で発動のコツは掴んだと思うけど……

 とりあえず色々とやってみよう。

 そして、まずは……


『クッカ、索敵頼む! 場所は昼間リゼットを拾った場所だ』


『了解! ……お問い合せの場所はボヌール村から見て北西へ距離約8km、西の森の前の草原! 今の所、当該地中心半径3km以内に敵の姿無し、但し当該地より5Km先の西の森奥にゴブリンの反応多数!』


 おお、凄いぞ、クッカ!

 相変わらず良い仕事しますねぇ!

 ここで俺はひとつ思い出したんだ、大事なこと。


『ええっと、聞いて良いか?』


『はい!』


『ええと……あの子の事なんだけど、さ。リゼットが採集出来なかった薬草の種類と、生えている場所って……分かるかな?』


 さっきクッカが「羨ましい!」と言っていたリゼットの件だから、俺だって気を遣った。

 気配り……これも俺が貰ったスキルの中に入っているのかな。


 でもさすが女神!

 クッカの器も大きかった。


『うふふ! やっぱりケン様って優しいから好き! リゼットちゃんの為にこれから薬草を取りに行ってあげるのでしょう?』


『ははは、やっぱり見抜かれてるか……悪いなぁ』


『はいっ! でもさっきは……御免なさい! 私も大人げありませんでした。あの子がケン様の事を好きなのは、はっきりしているし、受け入れないと』


 何か、くすぐったいな。

 クッカって俺の事、本当はどう思っているのかな?

 まあ……良いや。


『ありがとう! じゃあ行こうか!』


 俺が出発を促すとクッカが「待った」を掛ける。


『ちょっと待って下さい。鎧や武器一式、今のものとは変えておきましょう』


 え?

 装備変えるの?


『何故?』


 俺は思わず聞いてしまう。


『夜とはいえ、ケン様のお姿をどこの誰に見られるか分かりません。ケン様の正体を看破されそうな要素はなるべく排除しましょう』


 成る程!

 それ、ナイスフォロー!


 俺は調子に乗ってクッカに聞く。

 ほんの冗談のつもりだった。

 これホント。


『じゃあ性別、性格はともかくさぁ! ついでだから顔や髪型、背格好も変えちゃおうか?』


『OK! 了解です!』


『…………』


 出来るのかよ!!!


 俺は思わず無言でクッカに突っ込んでいた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 例によって俺が発動した引寄せの魔法と、新たに変身の魔法を使い、俺の変装の準備が完了した。

 新たな魔法はいきなりまぐれで上手く行く場合もあれば、失敗する時もあった。

 だがクッカの言う通り、2回目以降ならほぼ完璧に発動する。

 よっし、把握したぞ。


 ちなみに俺が変身した夜の仕様って事で漆黒の鎧、漆黒の兜。

 そして漆黒の刀身の魔法剣。

 闇に溶け込むような雰囲気の俺。


 この恰好って……

 邪悪な暗黒戦士か、無慈悲な闇のニンジャって感じ。

 全然、正義な勇者系じゃなくて……

 絶対に! ……邪悪な魔王系だろ? 


 まあ良い……この方向性はそんなに嫌いじゃないから。


 兜は顔全体が隠れるフルフェイスタイプなので素顔も見えないし、素顔自体が今の俺とは全く違っている。

 身長も170㎝から185cmへ大幅アップだ。


 これなら今の俺、15歳の少年ケン・ユウキとは絶対に分からない。


 ちなみに変装後の年齢は22歳くらいの大人バージョンに。

 俺が転生する前の年齢にしたのである。

 だから顔は転生前の懐かしい顔にちょっぴり似せた。

 どうせ兜で隠すから良いよね。


 この仕様も次回の『夜遊び』や昼間に『特別行動』する時は一切変える予定なのだと。

 かなり面倒臭いが、ばれて大騒ぎになるよりマシだと割り切ろう。


『えっと! 次に転移魔法を使って、あの草原へ移動で良いのかな?』


『はい、正解です! 仰る通り転移魔法を使いましょう! 発動に必要な、詠唱する言霊ことだまはどう言えば良いか、分かりますか?』


『多分!』


『ケン様! さすがです』


 にっこり笑うクッカ。

 やはり可愛い女神の笑顔は最高に良い。


転移トランジション!』


 言霊を唱えた瞬間、ボヌール村の自宅の部屋から俺達の姿はあっと言う間に消え失せたのであった。

 初めての転移魔法は成功だった、ラッキー!


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「おう! ここだ! ここだ! 間違い無い!」


 思わず声が出た。

 俺は慌てて左右を見渡すが、当然誰も居ない。


 月明かりが淡く照らす真夜中の草原に俺はひとり……いや正確にはひとりプラス女神の幻影とふたりで立っていた。

 ここが昼間、リゼットを助けた場所に間違いはなかった。

 草が焦げた独特の臭いと共に、あちこち俺が火炎魔法を使った、ゴブの焼け焦げた痕跡が残っているからだ。


 え?

 何故真夜中なのに月明かりだけではっきり見えるか?って。


 良くぞ聞いてくれました!


 クッカに言われて暗視のスキルを発動したら、真夜中でも昼間のように見えるんだ。

 これまた俺は感動した。

 それも最初はモノクロだったのを、彩色を加えて現在はオールカラーで見ている。


 これは凄い!

 夜目が利くなんてものじゃない。

 輝度を自由に変える事も出来て、昼間と同じくらいにもなる。

 最初は練度1らしいが、こうやって完璧に使いこなせるスキルを徐々に増やして行こう。


 次は飛ぶか!

 どこって?

 当然、空さ!


 転移魔法に続いて、俺は飛翔魔法を発動して飛行訓練をする事にした。

 ちなみに上空からの地形把握も兼ねている。


『ちょっと待って下さい』


『おう! クッカ、何だい?』


『どうせなら、身体強化と気配消去も一緒に! 両スキルとも使って熟練度を神レベルにしてしまいましょう』


 そうか!

 それに両スキルとも使用頻度多そうだし。


 身体強化は身体を頑丈にするスキル。

 魔法でも同じ事が出来るらしい。

 まあ高い空って寒いと言うし、風邪ひいたらこまるものな。

  

 そして気配消去。

 一切の気配を消して飛ぶ黒い影。

 まるでレーダーに機体を感知させない、どこぞの戦闘機のようである。


 俺は身体強化と気配消去のスキルを発動した上で、遂に空を飛ぶ。


飛翔フライト!』


 言霊を詠唱したその瞬間、俺の身体は恐ろしい速度で垂直に舞い上がり、真上へ真上へと上昇して行ったのであった。

ここまでお読み頂きありがとうございます!

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