第6話 「とんでも女神降臨」
俺とナビ嬢は改めて自己紹介をする事にした。
まず俺から、
『じゃあ、改めて! 俺の名前は当然知っているだろうけど……地球からの転生者ケン・ユウキ、宜しくな』
そしてナビ嬢は、
『はい! じゃあ私も改めまして! 天界神様連合後方支援課所属、D級女神クッカと申します』
『ふうん、クッカちゃん、か。宜しくね』
『あ、ちゃん付け要りませんよ。呼び捨てにして下さい、管理神様に言われていますので』
成る程!
やっぱり、この子は女神様なんだ!
でも、すっごいフレンドリーだし、第一何、その肩書き?
『君の所属部署って、て、天界、神様連合……後方支援課? やたらに長いね~』
『はいっ! ご説明致しましょう。えっと、天界は当然分かりますよね? 神様連合とはですね、創世神様をトップにして、様々な神様の所属する組合みたいなものです」
『ふむふむ』
『そして私の所属する後方支援課というのは創世神様の教えに基づき、天界の声を地上の人々へ授けて加護を与える、すなわちサポートするのが主な業務のセクションです』
『で、クッカはその部署の新人なの?』
『はい! 私、女神になりたてのド新人なのですが、この世界の管理神様からいきなり辞令を頂き、ケン様の担当にならせて頂きました。光栄の極みです!』
堅いなぁ……クッカの言い方。
彼女はすっごく真面目そう。
だから俺はいきなり突っ込んだ。
『クッカ! ところで君、凄く可愛いだろうね』
『は?』
案の定、驚く声が可愛い。
『いやぁ、クッカの声可愛いから、声優みたいに!』
『や、私なんか、あ、あまり可愛くないですよぉ』
照れてる、照れてる!
『そんなことないでしょ! で、さ。話は戻るけど、ああやってナビのみやって貰う形なのにこうやってフレンドリーに話して良いの?』
『そ、それが……』
『本当はまずいと!』
『は、はい! 何せ具体的なアドバイスは禁止されていますから、それを通り越してケン様とこんなに親しい会話をしたりしては……絶対にいけないのです、上司に怒られてしまいます』
そう言えば、戦闘のアドバイスを頼んだら拒否られてしまったしな。
『だよねぇ……』
『……はい』
ここで俺は疑問に思っていた事を聞いてみた。
『でも、どうして? あの時、俺の突っ込みに返事をしたくらいだったじゃない。あの後、そのままスルーすれば良かったのに』
『…………』
黙り込む女神様。
『どうしたの?』
『羨ましかったから!』
は?
何、それ?
『羨ましかった?』
『だってケン様ったら、私が担当なのに! あの女の子を魔物の大群から庇って格好良く戦ったりして! 羨ましかったんだも~ん』
えええっ!?
クッカ!
私が担当って……意味分かんね~。
それに羨ましかったんだも~んって
君は子供か?
『はぁ!? あの場合、あいつらに喰われない為には戦うしか仕方が無いじゃない! それに第一貴女、女神でしょ』
『め、女神だって……女神だって女の子ですもの! 私の為にだって戦ってくれる人が欲しいんだもん! う、うわあああああん!』
『あらら、泣かしちゃった! い~けないんだぁ、いけないんだ』
いきなり響く、聞き覚えのある声。
は?
この世界の神様?
もしや管理神様?
『うふふ、駄目だよぉ、まだ初心な女の子をこんなに泣かしちゃあ!』
俺をいじる管理神様。
突然、現れて何なんだ、もう!
でもそうか!
クッカと今後話すにあたって、彼女から管理神様に会ってくださいと言われていたっけ。
『もう! ……何なんですか、一体!』
『いやぁ、だから僕が話を纏めに来てあげたよ』
『話を……纏めに?』
『ああ、何だかんだ言ってもね。多分、最後は僕が決めないと話が進まないんだ』
管理神様が決める?
一体、どのような裁決が出るのだろう?
『クッカ!』
『は、はいっ!』
『お前は女神としてまだまだ未熟です。折角、機会をあげたのに僕の中ではケン君の担当には不適格だという結論が出ました。よって担当から外します!』
え!? クッカを俺の担当から外す?
それ想定外です!
ちょっ、ちょっと待った!
『管理神様、ちょっと待って下さい!』
『何だい?』
『彼女、良くやってくれていますよ! デビュー戦を勝てたのも彼女の的確な情報のお陰ですし』
『成る程! 一定の評価は出ている、カキカキと!』
俺がクッカを弁護すると何やらメモを取っている様子。
管理神様がメモ!?
シュール過ぎる!
続いて管理神様から、次の質問来た!
『では品行方正はどう?』
ええっと……品行方正って、確か心や行いが、正しくきちんとしているか? だよね。
彼女は大丈夫!
全然下品じゃないし、地声、可愛いし。
『大丈夫です!』
俺の力強い言葉を聞いて管理神様が首を傾げる気配が伝わって来る。
『ふふふ、ケン君はどうしてそこまでクッカを庇うの? 君達、出会ったばかりでしょ?』
『いや、勘です。彼女は良い子だと思います! ちなみに第一印象はとても良かった。俺、これからも彼女に助けて欲しいですよ』
俺は理屈じゃないと言い切った。
ここまで来たら勢いで押し切ろう。
たとえ相手が管理神様でも!
しかし例によって管理神様は余裕綽々だ。
『うふふ、でもね。天界には彼女よりず~っと美人で巨乳の女神がた~くさん居るよ。僕、後任にスーパーモデル級の美人さんを用意していたんだけど』
『…………はいっ、じゃあぜひぜひ交代で!』
俺がいきなり豹変したので、クッカが泣き声を上げる。
『えええっ!? そんなぁ!!!』
あはは、まあ嘘、嘘。
管理神様に嘘は不味いけど、これくらいは許されるだろう。
俺はクッカを選ぶんだ。
勘がそう言っている。
『なんちゃって、冗談です。クッカさえ嫌じゃなければ担当は彼女で!』
『クッカ、君は?』
『私はとっても力不足かもしれませんけど、ケン様さえ宜しければ何卒担当のままで!』
『ようし、話は纏まった! 今回は特例で会話やアドバイスの内容を大幅に緩和しよう。不味くなったら、ぴ~とか別音声が入って聞えなくなるから、好きにやりとりして構わない』
それって!
今後はクッカと自由に話せるって事だ。
『あとそんなにクッカを見たいの? 実体じゃなくて幻影なら姿を見せてあげても良いよ。彼女に見せる自信があるならね、あははは』
『…………』
黙り込む女神様。
管理神様、すげ~きついっす。
顔、スタイルに自信があれば見せて良いよって!
……容赦ないな。
『じゃあ、ケン君。しょーもない駄女神だけどクッカを宜しく! 後でやっぱり交代ってのは絶対に無しだよぉ。じゃあねぇ、ばっはは~い!』
駄女神って……
それもひでーな。
きっつい事ばかり連発だったけど……
管理神様はいつもの通り、軽いノリで帰って行った。
クッカが喋った事に対してのペナルティも無しだったし、条件大幅緩和だ。
よかった!
とりあえずは、一件落着である。
しかしクッカは、俺が一旦交代をお願いした事を根に持っているらしい。
『本当に良かったんですか、私なんかで? スーパーモデル級女神じゃなくて! 天界には私なんかより可愛い子、い~っぱい、いますよぉ』
あはは、すねてる、すねてる。
つい冗談で言っただけだよぉ、申し訳ない!
『御免、本当に御免、俺にはクッカが必要なの! それより幻影で良いから姿を見せてよ。もう声だけなんてNGだよ』
『ええっ!? 姿を見せてって……念の為言っておきますけど……私……容姿にまったく自信が無いのですが……』
『良いの! これ命令!』
『もう! ケン様は強引なんですから』
何か、魔力を感じる。
清冽で爽やかな気配が生じている。
すると……
いきなりホログラムのような3次元画像の人影が立ち上がった。
そうか!
実体じゃないって言ってたな、管理神様。
徐々に映像がはっきりして来る。
どれどれ?
身長はそこそこ高い
170㎝少し切るくらいだろうか?
そんな、極端に高くはない。
でも、モデルみたいに顔が小さいなぁ……
年齢は雰囲気的に今の俺より少し上の18歳くらい?
長いさらさらの金髪が揺れてて、切れ長の涼しげな碧眼が綺麗だな。
鼻筋が通ってるし、整った顔立ちをしてる。
可愛い桜色の唇が美味しそう。
小ぶりだが形の良い胸はそそる。
すらりとした抜群のスタイルは素晴らしいぞぉ。
そして白い薄絹のような古めかしいドレスを身に纏っている。
あれ、胸が透けてないかぁぁぁ!?
どこが、駄女神なの???
すすす、すんげぇ! 美少女じゃないっ!
『ももも、もしかして! ききき、君が、くくく、クッカ!?』
『はい、そうです……あまり可愛くないでしょ?』
『そそそ、そんな事! 全然! ありません!!!』
念話なのに!
俺は盛大に噛みながら、大きな声で叫んでいたのであった。
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