芽生えてくるもの~生まれ出《い》づる(出)歪《ひ》ずみ(歪み)~
ダァム、ダァムと。
開けた体育館に、ボールの打ち弾む音がこだまする。きゅ、きゅっという、床板をシューズでこする音。
ばすっ、とシュートが決まり、バスケットボールのリングが揺れた。
「っし~・・・・・・」
友人の、そんな風に呟く声が聞こえてくる。
裕紀はバスケットコートの外、体育館のひと隅に腰かけつつ、仁村の練習する様子を眺めていた。
「ハヤトっ!」
シュートを決め、エンドラインからパスを出す仁村。練習相手のハヤトーー岩附勇人ーーがそれを受け、ドリブル・・・・・・ゴール手前で、敵のディフェンスに阻まれたという想定で、素早く背後に回った仁村に的確にパスを出す。
しゅっ。
仁村の、スリーポイントラインの外から放ったシュートがぱすっとキレイに決まった。
「っしゃあ~オケっ!」
オッケーだと、仁村。岩附とハイタッチを交わし、ダムッとゴール下に落ちたボールを拾いに行く。
そんな、昼休みの光景だった。
「ユウちゃん~っ!!」
仁村が「どうよ!?」と、向こうからドヤ顔などしてくる。「あと三セット!」と裕紀があえて上から目線で言ってみると、「いえす、ボス!」とノリノリで返事してきた。
「けっこう、上がったかな」
と仁村。スリーポイントシュートの、成功率が上がったかと岩附に聞いたのである。「かなり」と、岩附は頷く。
「いや、でもなぁ~」
と再び仁村。「試合で、これくらい打てるのか」と、首を傾げつつ。「大丈夫だろ」と岩附。
「ぶっちゃけ、三年の先輩より打ててるから」
「いや。それは・・・・・・」
さすがに持ち上げ過ぎだろうと、仁村は岩附の肩の辺りをトンと軽く叩く。それから「しゃ、もういっちょ!!」と、ゴール下のエンドラインに歩いていった。
○○○○○○○○○○
チャイムの音。
今日は午後の授業も流れるように過ぎていき、瞬く間に放課後を迎える。
今日は委員会の日。本好きの裕紀はもちろん図書委員会に・・・・・・いや、所属していない。
実は、所属は美化委員会なのである。
(だって、ねえ・・・・・・?)
そういう、何というか″テンプレート″の通りに行動するのも味気ない気がする。委員会は学期ひとつごとに変えられる仕組みだし、せっかくなら色々やってみようと思う、中二真っ盛りのこの頃なのである。
まあ、図書委員なら小学校時代にずっとやってきたわけだし、二学期からはやはりテンプレートの通りに図書委員に立候補する予定でいたものの。
我ながら″ひねくれた″年ごろだわなと思いつつ、裕紀は帰り支度を終えてーー
「ユウちゃん~っ」
と、向こうから仁村に声をかけられた。
「もう帰りか?」
「いや」
今日は委員会があるのだと、裕紀。「そっか、そっか」と仁村は頷きつつ、
「昼、サンキューな」
と、軽く肩を叩いてくる。
「ん。ああ、昼休みのか」
仁村のバスケの自主練習に付き合ったときの話かと、裕紀。教室で弁当を食べているところ、学食にいるはずの仁村から【体育館集合ぉ~っ!】のメッセージがLINEで届いたのである。
いつもの、友人グループの所に送られたわけだが、素直に行ったのは裕紀くらいで、良治や岸谷なんかは【それ何のフラグw!?】などと、終始面白半分のメッセージを打ち返すのみだった。
まあ、【面倒だからユウちゃん行ってきて!】と、″教室で一緒に弁当を食べていた″良治や岸谷からの返事をこの目で見ているという・・・・・・まさに今どきにありがちなオチがあるわけだが。
「最近、すぐカッカしちまうからさぁ。俺」
仁村は側頭辺りに軽く手をやりつつ、らしくない苦笑いなどする。「あー、そうなん?」と、裕紀は