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剣谷 桐 11歳、5月の話。(4)

桜くんと入れ替わりに、ジェットコースター乗り場から班の皆がやって来た。


「きり」


桜くんって、俺様な性格っぽいな…と思っていた時。結に声を掛けられていたのに反応が遅れてしまった。


「きり。大丈夫?」


心配そうな顔で問い掛けてきてくれた結に…


「あっ、結!う、うん!とりあえず大丈夫!…かな?」


“彼”に敵意が無いのが解った事にホッとして、そう答えてしまっていた。


「とりあえず…?」


うん…何の事だ?って思うよね。


「いや!大丈夫!ハハハ…心配してくれてありがとう」


ちょっと怪しい態度だったかもしれないけど、これ以上聞かれても『もう、大丈夫だよ!』としか言い様が無い。


「なぁ、さっきの彼って、ジェットコースターの席で揉めてた連中の一人だよな?あの彼も降りていたみたいだけど…桐と一緒に居たのか?」


川っちが疑問に思っていたらしく、問いかけられたんだけど…なんて答えたらいいんだろう。


「えっ!?…っと、そう!彼も気分が悪くなっちゃった…らしくて?隣に座っててもいいかな?って!ほら、そこのジェットコースター乗り場からは、このベンチが一番近かったからね!」


咄嗟にそう答えたら、何故か山っちからの反応の方が強かった。


「あの子…!男だったのかよ…!!」


あー…。桜くん、美人だもんね…。女の子だと思っていたんだね、山やん。


『よく見れば、すぐ解ると思うよ〜?』という七海ちゃんの言葉に、山やんは、がっかりした様子だった。(そう言えば好みのタイプとか、みんなと話した事も聞いた事もなかったけど…山やんは、桜くんみたいな見た目の女の子がタイプなのかな?)


そんな二人の会話に川っちも混ざり始めると、結が真剣な眼差しを私に向けて話しかけてきた。


「ねえ、きり…と、彼は…何を話して、いたの?」


まさか『前世の事だよ!』等とは言えまい。むしろ話せば…何言ってんだコイツ…と思われそうだ。それとも、その話をキッカケに結はユイマの事を思い出しちゃったりするのだろうか?…まあ、それは無いか。


「ええっと、あー、何て言えばいいかな。大した話はしてないよ?」

「…そう、なの?」

「そうだよ!ただ休んでいただけだから!」


結は『本当に?』とでも言いた気な、疑うような目付きのままだ。桜くんにも言われたけど…態度でバレバレなのかもしれない。けれど…教える訳にも行かないしな…。


とりあえず、この場を何とか誤魔化して。私は次のアトラクションの話をしていた七海ちゃん達の会話に混ざる事にした。ごめんね、結。






次は、どのアトラクションに行くかと言う話で、私は『もう大丈夫だから今度こそジェットコースターに乗りたい』と言い、流石に連続はキツかったらしい七海ちゃんは『キューティとチャーミィのミステリーツアーズが良いな〜』と言い(確か…一番多く謎を解いた参加者は青のキューティとピンクのチャーミィのステッカーが貰えるんだよね!)山やんは、私と同意見だった。川っちは七海ちゃんに賛同し…


「結は?」


そう尋ねると…


「僕も、ジェットコースター…かな?」


と、答えた。


私と山やんは『やっぱり、ジェットコースターだよね!』と喜び合い、七海ちゃんと川っちはと言えば…『また、ジェットコースター…』と言うような、ガッカリした顔をしていた。(実際。川っちは、そう呟いていたのが聞こえた)うーん、ここは七海ちゃんや、川っちに合わせた方が良いかな?さっきは、ジェットコースターに付き合わせた訳だし…。私は降りちゃったけど、それは私の都合だもんね。


それじゃ、ジェットコースターは、また後にしてミステリーツアーズにしない?と言おうとした時だった。 


「…あの、次のアトラクションだけ…二手に、別れるとか…どう、かな?」


結が、おずおずと手を上げて提案した言葉に異を唱える人は居なかった。


「そうだね、俺はそれでいいかな。盾井さんは?」

「私もいいよ〜」

「じゃあ、そういう事で!アトラクションが終わったら、ここで待ちあわせで良いかな?」


私は早速、園内マップを広げて、先程とは別のジェットコースター乗り場とミステリーツアーズの入っている建物の中間にある売店を指差した。みんながそれに賛成したので、途中までは一緒に向かい、それからジェットコースター(二種類目)とミステリーツアーズ組に別れた。








それから。合流後に巨大迷路のアトラクションへ行き、その後にメリーゴーランドへと向かった。


山やんは、とても生き生きとして、茶色の馬に乗っていて…川っちと結はと言えば『恥ずかしいな…』『…そうだ、ね』という会話をしながら、それぞれグレーのロバとピンクのブタに乗り、居心地が悪そうにしていた。(馬は、もう空いてなかったからね…)


ちなみに。七海ちゃんと私は、隣同士で乗る事が出来た。私が穏やかで優しそうな顔の白馬、七海ちゃんは黒くて強そうな騎馬に乗った。メリーゴーランドが動き出した後で気づいたんだけど、私が騎馬の方…つまり、逆の方に乗った方が良かったかなー?なんて思ったんだけど…。楽しかったし、まあ…いっか!


あっ、そうそう。途中。回転の速さが違ったのか結達と少しの間、横並びになった時。


「きり!あの…写真、撮ってもいい?」


結が持ってきていたインスタントのカメラを向けてきたので、私と七海ちゃんはニッと笑ってピースサインをした。


「後で、五人で一緒に写真撮ろうよ!」


…と、追い抜いて行くピンクのブタに乗った結に声を掛けると、結はニコッと笑って頷いていた。本当…可愛いな、結。ピンクのブタが、まるで白馬に見え…ないな。ブタはやっぱりブタだったね。いや、決してブタを貶している訳ではないので、そこは誤解しないで欲しい。


そして、時計の針が一時十分前になる頃。遅めの昼食となった。


“わんぱく広場”と書かれたエリア。そこは、名前の通り広場になっていて、キューティやチャーミーのイラストがプリントされているベンチや、パラソルが立てられたテーブルが円状に沢山並んでいて、真ん中には大きな噴水がある。噴水は思ったより高くまで上がっていて、太陽の光を反射した水はキラキラと光っていた。見ていて楽しいし、綺麗だ。


そんな広場は、レストラン以外の飲食スペースの一つとなっており、天気が良い日には、持ち込みのお弁当を食べる人が多く、お昼時には賑わっているらしい(これは園内情報だ)のだけど、私達は少し遅めに来たせいか、広場に人はあまり居なかった。そのため、私達は噴水のよく見える場所で、パラソルが立てられたテーブルに着く事ができた。日差しが少し強いけど、そこはパラソルがあるから平気という訳だ。


さー!いよいよ、お昼ご飯だー…!!


遠足のお弁当って、乗り物などのアトラクションを楽しみにする気持ちとは、また別の楽しみがあるよね!おやつもあるし!(この時の為に、おやつを一週間前から用意していたよ!)



いつもお読み下さり、ありがとうございます!次で遠足編は終わりです。

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