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剣谷 桐 11歳、5月の話。(2)

 クラスごとにバスに乗り込み学校を出発。途中、道路が空いていた為か少し早めに目的地である遊園地に着いたみたいだった。


 「ふあ〜ぁ。んじゃ、まだ来てないクラスを待つから整列して待ってるようにー。ああ、それから、今日は隣町の小学校の生徒も遠足で来てるから、お前ら他校の生徒と問題おこすなよー」


 あくびをしながら整列を促す先生を見て、先程までのバス内での事を少し振り返ってみようと思う。


 バスの中では『カラオケをやりたーい!』と、クラスの一部の子達が言い出したんだけど、目的地である遊園地は割りと近い為『あー? めんどく……アカペラでなら好きなだけ歌っててもいいぞー』と。明らかに『面倒くさい』と言い掛ける東堂先生のやる気の無さが見られた。

 あ。ちなみに“東堂”は今年担任になった先生の苗字ね。そういや、下の名前は何だったかな…まあ、今はいいかな。


 そんな彼に車内では、一部からブーイングがあったが、彼は全く気にせずにバスが着くまでグウグウ眠りこけていた。短時間でよく寝られるなー、しかも、ホントにアカペラで何人かが陽気な歌を歌っているのに――…と思いつつ。

 私は七海ちゃんと以前借りたゲームの話をしながら、バスの中で過ごしたのだった。


 「あ! 隣のクラスのバスも着いたみたいだね〜」

 「これで全クラス揃ったかな?」


 並んで話をしている内に他のクラスのバスも到着し、更には他校のまだ到着していなかったバスも到着した為、入場ゲート前は大分賑やかになっている。


 「そんじゃ、この後は各クラスごとにクラス写真の撮影したら、入園するぞー。んで、その後から班行動になるからなー」


 そして、クラスの集合写真の撮影を終えると、写真撮影前に渡されていた入園券を入口で受付の人に渡して入園券の裏にスタンプを押して貰い、フリーパスを手に園内へと入場すると――…


 明るく楽しげな音楽がどこからか聞こえてきて、気分が上がって来た。遠くではジェットコースターが走る、ゴーッと言う音と共に『キャーッ!!』と楽しげな声も聞こえてきて。楽しそうでワクワクしてきた!


 「ね! ね! どれから乗る!? やっぱり、ジェットコースターからかな!?」


 もうね。楽しみです! って顔に出ている自覚はあるが楽しみなのだから、しょうがない。


 「おお! 俺もジェットコースターからがイイ!!」


 山やんも賛成なようで、どのコースターから行く?! と。入園時に貰った園内マップを広げる。

 この遊園地には四種類のジェットコースターがあり、小さな子供でも乗れる回転の無い物から、グルングルン回りまくる回転しかないんじゃないの!? というような、回転の多い物まである。


 「こら、ヤマに桐も暴走するな。葛西と盾井さんにも聞いてからにしような」


 川っちが丸めたマップでポコッと軽く、私と山やんの頭を叩いた。


 「いやー、ごめんごめん! えっと…みんなは、どれから乗りたい?」


 みんなの顔を見ながら聞いてみる。


 『私は、あまり回転がないのならジェットコースターからでもいいよ〜』

 『僕も…盾井さんと、同じ…で。回転…少ないジェットコースター、なら…』

 『みんながジェットコースターからでいいって言うなら、俺もジェットコースターからでいいよ』


 七海ちゃん、結、川っちの言葉から、回転が二番目に少ないジェットコースターに乗る事になった。






 「それでは前からお二人ずつ詰めてお乗り下さい。お乗りになりましたら、シートベルトの着用をお願いします。安全バーの方は係の者が下ろしますので、そのままでお待ちください!」


 腕に着けたパスを案内係のお姉さんに見せると、明るくハキハキとした声で案内をされ、ジェットコースターに乗り込む…のだけど、私達の班は五人。二人ずつのシートだと一人余る。


 「ねえ、席どうする?」

 「俺は誰とでもいいぞー!」

 「俺も特にこだわりは無いかな」

 「僕は…えっと、僕も…特には…」

 「私は桐ちゃんと一緒がいいかな?」


 『七海ちゃん! 私もだよ!』と言って、私は七海ちゃんと乗る事になり、まず最初に乗り込む。

 男子はグーパーで決めたようで、山やんと、川っちが次に乗り、三列目に結が一人で乗ることになったのだけど――…


 「ちょっと! 私が(さくら)ちゃんと乗るんだから! 貴女は後ろの席にしてよ!」

 「はあ!? イヤよ! 私だって桜ちゃんの隣が良いんだから! 貴女こそ、後ろの席にしたら?」

 「ねぇ〜、桜ちゃんは誰と乗りたい? この煩い2人よりも私の方が良いよね〜? ねっ?」


 …――おいおい、なんだか後ろの方が煩いぞ。


 結の席の後ろでは、誰がどこに座るかで揉めているらしい。誰と乗ったところでジェットコースターなのだから、ずっと楽しくのんびりおしゃべりが出来る訳でもないのに。


 もうー、早く乗るなら乗ってくれないかなぁ。と、思っていた時だった。



 「あら、みんな喧嘩しないでちょうだい? 周りの方に迷惑よ! それに、可愛い顔が台無しよ? みんなが喧嘩するなら桜は誰とも乗りません。あら…丁度良いわ。ここ、空いてるかしら?」


 恐らく騒動の元となっていた、灰色の髪に涼しげな青色の瞳の、整った顔立ちをしている、長身で声が少しハスキーな男の子? 女の子? が、空いていた結の隣の席に座ってしまった。


 その子の顔をよく見たようとしたら、目がしっかり合ってしまった。次の瞬間――…




 ドクン―――…!!




 胸の鼓動が大きく跳ねた気がした。これは、一目惚れとかそういうものなんかではなかった。むしろ、そっちの方が良かったかもしれない。


 (あ、あの人は――…)




     


 『あの人は―――――……“彼”よ』


 そう前世のキリエが告げる声が頭の中で聞こえた気がした。

 (まさか、こんなところで出会うだなんて思いもよらなかった…)


“彼”登場です。

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