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ーーーどうしてわかってくれないんだよ!貴記!お前のやり方は、確かに合理的だけれど、顰蹙買ってるんだよ!お前がボロクソ言われてんの見たくないよ!ーーー
ーーーどうして、これが最善なのを理解してくれないんだ。京平、どうして、お前は理解してくれていると思ってたのに!ーーー
「何度言ったらわかるんだよ、この方法じゃ絶対破綻するって言ってんだろ!」
「なんでそう言いきんだよ!どうして仲間を信用してないんだよ!」
深水貴記と、中田京平が、口論している。
文化祭の出し物の責任者である貴記と、その補佐である京平で考えが割れているのである。
お互い心の中でお互いを想い、または信頼して叫びあってるのに、争っているその様子を見て、俊明は耐えられなくなった。
どうして人はこうもすれ違うのだろう。自分と加奈もそうだし、この二人もそうだ。お互いに言葉が足りないために、互いを傷つけあう。まるでやまあらしのように。
「俊明?」
拓斗は俊明が深刻な表情で黙りこんだのをみて心配になったのか、顔をのぞきこむ。
俊昭は意を決して、口を開ける
「…貴記も、京平も。ふたりとも、落ち着け。」
できるだけ、おちついて、俊明は二人に声をかけた。
「…俊明には関係ないだろ!」
「お前らの喧嘩の内容が文化祭についてなんだ。俺らが無関係って言うのは無責任が過ぎるだろ」
二人はだんまりする。反論はないようだ。
「そもそも、2人とも文化祭を良くしようと思って話してんだろ?でも、お互い自分の言いたいことが伝わってねーんだよ。」
だから、いっそ紙に、自分の言いたいこと箇条書きにしてまとめろ、と、俊明はルーズリーフを差し出す。
2人はおずおずとそれを受け取った。
「貴記の考え方は、ちゃんと聞いてれば合理的なんだよ。でもさ、それを理解できる人って少ないんだ。だからちゃんと説明せずに仕事を押し付けたら、みんなから顰蹙買うんだよ。」
貴記は、京平のいう事に耳を傾けている。
「俺は、お前が頑張ってるの知ってるから、そうやって貴記が嫌われ役になっていくの、嫌だったんだ」
貴記は、うなづいて、京平を見た。
「そっか、俺の暴走を止めてくれてありがとう。俺はたしかに周りが見えてなかったな。」
「俊明も、めんどくさいだろうに仲介やってくれてありがとな!」
いつの間にか、喧嘩は終わっていた。
貴記と京平は一番の笑顔で、俊明を見た。
「いいや、解決してよかったよ。」
俊明も笑った。
なんとなく知り合いの名前を足して2で割ってみた。




