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リサイクル

作者: 関孝和

目覚まし時計が部屋に響いた。


ここは、都会のマンションの一室。一人の男が住んでいた。

「あ~あ、はいはい、起きますよ。」

彼は目覚まし時計を止めた。

「これも一週間使ったな。そろそろ寿命かな…」

そう言って、彼は目覚まし時計を近くのゴミ箱に捨てた。


彼はタブレットを持ちながらリビングルームへ向かった。

「目覚まし時計の最新型だと、これがいいかな。」

彼は購入ボタンを押した。


リビングルームでは、家事ロボットの作った料理と、さっき買った目覚まし時計があった。


この様子を見ると、もったいないような気がする。しかし、一週間使った時計を捨てたことに彼は全く罪悪感を抱いていなかった。


彼の産まれる少し前、全てのものが省電力でリサイクルできるようになったのだ。

ゴミ箱に捨てたものは、そのまま地下のベルトコンベアーに落ち、分類されながらリサイクル工場に送られる。食べ残しや排泄物は肥料として使われた。

そのため、原料費を限りなく節約できた。ただのごみから製品を作れるのだから。


そして、インターネットで注文した商品は配達用のベルトコンベアーを伝って各家庭に運ばれた。


彼のような一般人でも家事ロボットを持てるようになったのは、モノの値段が下がったためである。また、世間には、いくら消費しても環境を壊さないという安心感と物価の安くなったことによる好景気感が漂い、リサイクル技術の進んでいなかった時以上に物を消費、破棄するようになった。最終的に、人々は大体一週間ほどで買い換えるようになった。そのため、製品を作る会社は大抵の機械類は一週間分ほどの電池さえ入れていれば事足りるようになった。



石油や鉄鋼などの輸出で栄えていた国は、一時的に財政難になったものの、周りの国の製品を作り財政難を乗り切った。

また、思わぬ副産物もあった。鉱物資源などを資金源にしていたテロリストたちが、活動を続けられなくなったのだ。


そのため、彼の時代には世界的な危機はほとんど起こらない、平和な世界になっていた。


彼は、昨日買ったテレビをつけた。

ワイドショーがやっており、リサイクル反対派の評論家が熱弁をふるっていた。


「今の世の中、物はすぐに取り替え取り替え、物に対する愛情がなくなってしまった。これは全てリサイクルのせいであり、今すぐ、リサイクルをやめるべきです…」

彼も、評論家の意見も一理あるな、とは思った。しかし、世の中の人々はこの生活に慣れてしまっている。今さら変えることは難しい。第一、評論家の書いた本もリサイクルされているのだ。


そう思いながら、近くにあったもう読まない雑誌をゴミ箱に捨てた。

が、またゴミ箱から吐き出された。

ゴミ箱が壊れているのかと思い、他のゴミ箱でも試して見たが、同様。

しばらくすると必ず雑誌はゴミ箱から戻ってきた。


すると、テレビが何かしゃべりだした。

「速報です。リサイクルセンターが故障し、動かなくなった模様です。復旧には2ヶ月かかる見通しで…」


リサイクルセンターとは、全国のゴミをリサイクルする工場である。

ここが壊れたら、他にゴミの行き場はない。


男は考えた。今や全ての機械は一週間しか電池が持たない。最初の一週間はどうにかなるかもしれないが、その後はどうなるのやら。食料も肥料が作れないから、最初の1ヶ月で終わりだろう。そうなったら…



2ヶ月後、リサイクルセンターが再び動く事はなかった。




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― 新着の感想 ―
[良い点] リサイクルが実現した社会のシミュレートとしては興味深いものがありました。 [気になる点] そのリサイクルシステムの具体的な部分を掘り下げて欲しかったです。 [一言] 生意気申し上げてすい…
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