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待ち続けること/終わること

作者: 天下原

短いのでサクッと読めます。ただシリアス傾向なので苦手な方は読まれない方がいいかと…。

カチ、カチ、カチ………。


静かな部屋に時計の音だけが寂しく響く。


部屋の片隅で膝を抱えた私にはその音と腕から伝わる自身の体温だけが生きている証。


暗い、暗い部屋で私は静かに待つ。


何を?――そんなもの忘れてしまった。


何故?――そんなもの忘れてしまった。


何時から?――そんなもの忘れてしまった。


そう、私は何も覚えていない。


ただ待つことだけが記憶に残っている私のすべて。


必要なのは待つこと。ただひたすらこの部屋で。


静かな部屋に寂しく響く時計の音。


カチ、カチ、カチ………。


そんな孤独感にのみ込まれてしまいそうで、腕に力を込め顔を埋める。


一人は嫌だ。


こんな部屋にはいたくない。


早く。早くここから私を、


連れ出して…。


声に出そうとして、しかし声にできずに息だけが口から漏れる。


私をこの暗闇から連れ出して。


いつも願った。


けれど、いつも叶わなかった。


私はそんな寂しさにも耐えながら待ち続けた。


その先に何があろうとも。



カチ、カチ、カチ………。


静かな部屋に時計の音だけが寂しく響く。


どんなに時間が経ってもこの部屋に私が待っているものは来なかった。



あれからどれ程の時間が経ったのだろうか。


時計の音はするがもう時計を視認することもできない。


意識が朦朧としていた。


それでも私は待ち続けた。


一人、暗い部屋の片隅で。


しかしそれもどうやら限界のようだ。


心も、体も、折れそうだった。


もう体温を感じることも出来ない。


ただ時計の音だけがやけに鮮明に聞 こ え て…。


フッ、とその音が消えた。


同時に何かが倒れたような気がした。



気付いたら私は光に包まれていた。暗いあの部屋では感じることが出来なかったまばゆい光に。


心地よい光に照らされながら私は瞼を閉じる。


今までのように寂しさから逃れる為ではなく、肌に感じる温かさをより鮮明なものにするために。




静かな部屋に時計の音だけが寂しく響く。誰もいなくなった暗い静かな部屋に。



カチ、カチ、カチ………。



止まることを知らない時計の音だけがずっと暗い部屋に響いていた。

…根暗街道まっしぐらです。でも個人的には好きな作品だったり…。最後にどうなったのかという結果は読者さん次第で。

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