負傷者、生肉を食す
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親鳥は俺のことを敵とは認識してないようで、俺があの時オオカミから雛を守ってやったことを感謝しているように見えた。雛達も目が覚めると俺の上で飛び跳ねたり遊んだりと、俺を怖がる様子は微塵もなかった。
あまりここにいるわけには……
そう思い立ち上がろうとしたが「いっっ!!」と激しい痛みが傷口に走る。よくみれば立とうとしたせいで傷口が広がっていた。これでは村を探しに行こうにもいけない。
仕方ないのでもうしばらくここにいることにした。すると雛達が親鳥に向かって鳴き始めた。おそらくおなかがすいたのだろう。親鳥は外へ出て行き飛んでいくと思いきや、頭だけ出してオオカミの死体をヒョイっと持ってきた。
よく外に目を凝らせば、オオカミの死体がいくつもころがっているのが見えた。
なるほど、全滅か……
雛達は差し出されたオオカミにかぶりつく。このとき自然界というものを間近に見た気がした。
オオカミ達は生きるために必死になってこの巣の卵を狙いに特攻を仕掛けたがあえなく撃沈され、今は狙っていた卵からかえった雛達の食料となっているのだ。
少し複雑な気持ちになった。そこへ親鳥が俺に顔を擦り付けてきた。俺の気持ちを読み取っての行為なのだろうか、そのまま俺にもオオカミの肉をそのおおきなくちばしで差し出してきた。
「いやあの、お気持ちはうれしいんですが、ぼく人間なんですよ、、、生肉はちょっと……」
言ってもやめないのでとりあえず受け取った。
この親鳥の親切な行為を踏みにじりたくなかった俺は、意を決してかぶりついた。
「あれ、うまい……」
何故だか自分でも分からなかったが、その肉はとてもうまく感じた。みずみずしく、かめばかむほど味が出てくる。いままでに味わったことのない新しい味だった。
俺が食べ終わるころにはもう夕方になっており、雛達もぐっすり寝ていた。今は手のひらサイズだがどうしたらこんなデカくなるんだ? そう思い親鳥を見つめたが「ん?」見たいな感じで逆に不思議そうに見つめ返された。
そういえばひとつ、気がかりな点があった。この雛達が最初に見たのは俺かオオカミだったはずだ。鳥などはたしか最初に見たものを親と認識するんじゃなかったっけ?
何でこの雛達はこのデカイ鳥が親だと分かったんだ?
まぁこんなでかい鳥は初めて見たし、ここは俺の知らない世界だ。何があっても不思議じゃないよな。
夜になり、月明かり眩しくなってきた。足がまだ治ってないので歩こうにも歩けないので、巣の中で雛達と横なっていた。
オオカミが入ってきた穴はその日のうちに親鳥がせっせと修理され、元に戻っていた。
俺「そーいや俺、もう放浪者じゃなくて負傷者だな」