放浪者、大ピンチ
放浪者Aさんとして始まった俺の旅。
現在だだっ広い草原を歩いている訳だが、なかなか村が見つからない。
いや、そもそも村なんてこの世界にあるのか?
あって当然という考え自体間違っていたのか、それともただ見つからないだけなのか。
そもそも村という概念がこの世界には無いのかもしれない。村を作るより個人で勝手に家を建て生活しているのかもしれない。
時々辺りを見渡せば遠くにオオカミや牛などは見えるのだが、人がなかなか見当たらない。
時々武装した山賊っぽいのが見えるが、さすがにあんな連中の所に行って「すみませんがこの辺に村かなんかありませんかね?」なんて聞けない。
そうこうしているうちにもう4キロは歩いた。だが今だに何も見えてこない。
だが新しい発見はあった。
何と草の生えていないまっすぐな道を発見したのだ。つまりこれをたどれば、何かしらの集落、あるいは民家にたどり着けるはずだ。
そう考え、かすかな希望を胸に俺は歩いていた。
だが歩いているうちに太陽はどんどん沈んで行き、気づけば再び夜になっていた。
みなさんお分かりだろうか、この非常事態を。
今だに食料も食べていない、武器もない、火を起こせるモノも持っていない。
普通のRPGならとっくに村にたどり着き、セーブして寝ている頃だ。
これでは放浪者どころか死人になってしまう。
そう思っていると道の脇に大きな鳥の巣を発見した。木で編み込まれたドーム型の鳥の巣は高さ1メートル半はあるだろうか。その中では大きな鳥がこちらを見つめていた。
ぱっと見、見た目はハクトウワシににていたがデカさが尋常じゃない。翼は折りたたまれて見えないが体だけでも1メートル半はある。
その鋭い眼差しでこちらをずっと見つめている。月明かりでギリギリ見えるのだが、どうやら威嚇しているようだ。
そっとしておこうと思い、歩き出したその時……俺の目の前に何かが現れた。
よく目をこらすとそれがなんだか分かった。分かった瞬間背筋が凍りついた。
オオカミだ。
しかも群で俺の周りを囲んでいた。
先頭にいたオオカミが俺に近づいて来た。そして匂いをかいできた。
あまりの恐怖から一歩足を後ろに出そうとした瞬間、他のオオカミが俺めがけて飛びかかってきた。