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BLOODY CRACK  作者: 灰音
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序章

「瀬田また学年1位だって」

「マジで?」

「最後の問題解けたのって、学年で瀬田君だけらしいよ」

「つーか、全教科満点って本当?」


顔も声も分からない奴らが、自分の話をしてるというのは気持ちが悪いものだ。

たとえ、その内容が俺に対する敬意とか好意だったとしても同じことで。

どういうわけか、俺はそういう奴らを好きになってやれないのだ。


「瀬田君てパーフェクトだよねー」

「頭良いし、スポーツ出来るし、顔良いし、頭良いし」

「あははっ頭良いの所強調してきたね~」

「だってすごくない?この前のIQ検査で200あったらしいし!」

「嘘でしょ!?」

「アタシなんか80だったよー」

「お前それは問題あるって!」


教室の端で騒ぐ女子たちの話に耳を傾けながら、本のページをめくった。

別に勉強なんか好きじゃない。

ただ、「今やらないといけない事」だからやるんだ。

その事に気付くのが周りの奴らより少し早かっただけで、大した事じゃない。

本を閉じて、グラウンドに目を向けた。

制服のまま野球してる奴。

サッカーゴールに目掛けてシュート決めてる奴。

グラウンドのフェンスの外で、それを見ている奴。

いつの間にか、深いため息が出ていた。


「でも何でこんなレベル低い高校入ったんだろうね」

「ねー何でだろう」

「あれじゃない?態度悪かったとか」

「あー・・・あるかも」

「まぁあの髪じゃ仕方ないよね」

「ピアスは付けてないけど、穴は開いてるし」

「やっぱ不良だったかのかなー」

「だってあの茶髪はNGでしょ~?学校ではさぁ」


どうして他人の話であそこまで盛り上がれるのか、ぜひ教えていただきたい。

他人の過去を勝手に妄想して、真実だと思い込んで騒いでる。

全く、妄想されてる方の気持ちはどうなってるんだ。


「瀬田」


急に名前を呼ばれて、悪態ばかり付いていた心の中が張り詰める。

そして、振り向いた瞬間に何事も無かったかのようだ。


「何?どうかした」

「今日の放課後空いてる?」


話しかけてきたのは、親友の小沢だった。


「放課後?」

「そう、久しぶりに男子会やろうぜー」

「は?男子会?」


久しぶりにと言われても、そもそも男子会なんてやったっけか。

罪悪感に覆われた疑念が頭上を舞う。


「ほらやったじゃーん、ファミレスで!最終的に高山が好みのタイプ語りすぎて店員に追い出されたやつだよ」

「・・・あぁ!あれか」


そうだそうだ、そういえばそんな事があった。

しかしそれを男子会と呼んで良いものか。

あれを男子会と呼んでも良いのなら、本家の女子会の方々に頭を下げたくなる。

女子のように、純粋な青春を詰め込んだ話では無かった。


「俺もう無理だと思う、だってあのファミレスの店員怖いじゃん」

「バーカ、怖くねぇよあんなん。女子の冷たい目に比べたらあんなもん・・・」

「マジか」


小沢の儚い表情を見ながら心無い返事をすると、さっき教室の隅で話していた女子達が走ってきた。


「何話してるの?」

「何だよお前らー」

「いいじゃん小沢のケチー」

「お前らはいいんだよ、瀬田は来れる?」

「あー・・・どうだろ、考えとく」


やはり女子が苦手なので、その場にいることをとても息苦しく感じた俺は、自然と教室を出た。


「うちらも行きたーい」

「ダメダメー男子会なんだよ」

「やだー!あたしらだって瀬田君と遊びたいー」

「は~?」

「えーいいじゃーん」


教室の中から聞こえた会話に、少しだけ嫌悪を覚えた。


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