けめ&みこ(君と私)
「そうだね、年の差なんて関係がないって周りは言うけど、
とても関係があるよ。私はそう言えるんだ!」
27歳の私、そして24歳の君。これ、私達の年の差、3つ・・・。
友が私に聞く。
「年下の彼ってどうなの?」
「そうだよねぇ、私も年下と付き合った事がないからなぁ、
5つ下の弟みたいな友達はいるんだけどねぇ。
彼とは互いに恋人って感じじゃなくて、うちに来て二人っきりでも
本当に弟と姉って感じでいられるの」
「へぇ~そんな事って本当にあるの?」
「あるよぉ、だけど多分それはお互いの心の温度差が
同じだからなのかなぁ、そのバランスをどちらかが
崩しちゃうと姉と弟ではいられなくなる気がするね。
だけど私達はそうだねぇ、温度差がぴったりって感じなんだ!」
「そうなんだぁ」
「それは性別を通り越した心、真っ直ぐに家族の様に大切な気持
ちかなぁ、彼もそう思ってくれてるからそれ以上に何かが起こ
りえない。逆に何かを崩してまで進めるのはきっとそこに恋愛
感情が存在するからかなぁ」
「だけど男の人ってもっと野蛮じゃない?」
「どうかなぁ、そうゆう人もきっといるんだとは思うんだけど、
私は恵まれてるのかなぁ。周囲には割と誠実な人が多いね」
「そうなんだぁ」
「確かに私も突然危ない目に遭った事がない訳じゃないんだけど、
本当一部の人だね。それになんとなく解るじゃん。
その人自身をよく観察していればね」
「そっかぁ」
「うん」
____そうだねぇ、君に出会うまでは、年上としか付き
合った事がなかったなぁ・・・・・。
だから守られてる安心感が強い分、音楽の話題とかが全然
合わなくて当時の彼の好みの音楽、
必死になって聴いてみたりしたなぁ。
私が感じた年上と年下の違いは大きかった。それは人に
もよるんだと思う。ただ・・・・・・。
年上の彼といる時に抱きしめられる時はいつも私の頭は
彼の胸元にあって、そして何も語らず静かな時間だけ
が流れた。
だけど年下の君と出会って、気が付けばいつも腕を廻す
私の胸元に君の頭があった。
そして可愛い目で私の顔を見上げて涙を流した。
そんな君を私はもう一度しっかりと抱きしめた。
付き合い始めて一か月位経った日。
私の家に来た君から深刻な表情で突然切り出された言葉、
「今日は伝えたい事があってさぁ・・・。」
「どうしたの?」
私はなんとなく感じてた。こんな日の事を、
「折角付き合い始めたばかりなのにさぁ・・・ごめんね!」
「いいんだよ。しょうがないよ・・・。君にはもっと素敵
で相応しい子いるよ。だから大丈夫だよ」
「・・・・・・・」
「もう俺の事好きじゃない?」
君のその言葉に私は、
「好きだよっ。大好き!大好きだからこそ私じゃダメなんだよ」
「・・・・・・・」
「私が図々しいだけだったんだよ。君なんかに相応しい訳が
ないのにねぇ」
「そんな事ない・・・・・」
二人の間に緊迫した時間が流れる。
私は年上、しかもバツイチ、そんな私を君のお爺様もお婆様も、
私達の恋愛を許す筈なんか最初からないじゃん。
私自身がそれを誰よりも解ってたじゃん。私が君に告白したその
理由は・・・。素敵な君にもっと自信を持って貰いたかったから。
もうそんなに寂しい目をしないで欲しかったから。
君が週末スキーに誘ってくれてたあの頃、ずっと思ってたの。
君のあのどことなく寂しそうな視線の先には
一体何が見えているのだろうって、もしその先に温かな日差しを
見付けられる事が出来れば、君はきっと変われるん
じゃないかって勇気づけたかったんだ。だけど何故そうしたかった
のかって言えば、やっぱり君が好きだから・・・・・。
君を愛していたから・・・・・。
君は私の腕の中で、涙を流しながら私の顔を見上げた。
とても可愛らしい顔で、表情で・・・・・・。
君は私の胸の中で言った。
「嫌だよっ!離れたくはないよ!」
泣きながらそう言った君に私は優しく、
「大丈夫、君は幸せになれる!必ずね。必ず幸せになれるから!」
私は泣かずにそう言った。本当は・・・・・本当の私は
絶望と切なさに打ちひしがれて、もうこの恋愛を失って
しまったら立ち直れない、生きてはいけないかも知れない。
そんな気持ちの中で必死に堪えていた。それは、
君を愛しているから。ただ真っ直ぐな気持ちだけが私を強い
気持ちでそうさせていた。
もしも私が大声で泣き叫んだらきっと君を進めなくし
ちゃうだろうから、もしも私が行かないで欲しいと言ったら
君は家族との狭間で苦しむだろうから、もしも私がこの後自ら
命を絶ったなら、君は君のせいだと思ってずっと引きずって
苦しむと思うから、
この恋が終わったとしても、強く生きよう!強く生きなくちゃ!
君を好きになった事、後悔なんかしないから、
後悔したくないから・・・・・。
いつか君に訪れる幸せを心から祝福したいから、
辛くても私も頑張って進んでみるよ。
心の中でそうつぶやきながら、心の中は土砂降りなのに、
私は笑顔で君の事を精一杯抱きしめた。
___あの後不思議な事を経験したね、誰かが私達を助けて
くれたのかなぁ。 あの出来事は君の亡くなったお父様だったの
かなぁ。私も初めての経験だったよ。
目に見えない何かに・・・・・。
「お父様だけは二人を祝福してくれていたのかな?」
君は可愛らしく、優しく、そして甘えん坊、だけどね。
いざって時、どんな年上の男の人よりも
りりしくてかっこよくて、そして笑顔をいっぱいくれる。
今まで泣いていた君が、突然立ち上がって私に言った。
「俺、説得してみるよ!誰よりも大切に思っているからその
気持ちを伝えてみる!」
「駄目だよ・・・・・」
「いいから俺を信じて!」
そんな君の横顔は勇気と自信に満ち溢れていた。
今まで泣いていた甘えん坊の君なのに・・・・・。
その後、私は祝福され君の家へとやって来た。そして披露宴当日、
私は美容師の先生に言った。
「私は実家じゃなくてこの家、彼の家からドレスに着替えて
会場へ入りたい!」と
そして私は君の家でドレスに着替え、お化粧と髪を整えて
貰って会場へ。うちの父が提案した屋上から色鮮やかな風船を
皆で空へ放とうと言う案に、正直
「ださっ!笑」
と思ったけど、実際に放たれたその風船を見た時、私は思った。
辛い事を乗り越えるのはやっぱり辛い。だけどその辛い事は新
たな幸せを手繰り寄せる為に自分の力で
掴む為の道のりなのかも知れないなって、あの清々しく晴れた日に
遠くへ消える風船を見てそう思った。
「そうだね、年下だからこそ頑張らなくちゃって思うんじゃないかな?」
「そうなんだねぇ」
「うん、多分ね!だけどそこがいいのかなぁ、いざとなれば年上よ
りもずっと頼りになるよ!」
「うんうん」
君は誰もにとても優しい。
そんな君に昔はちょっぴりヤキモチも妬いた事があったかも
知れない。だけど不思議とあの頃付き合っていた年上の彼等から
は決して教われなかった事、たったひとり君だけが教えてくれた事。
それは、
優しい気持ちを持てる人は、世間では一見八方美人に
見えるかも知れない。だけれどその優しさが心からただ満ち溢れる
正直なものなら、周囲にいる人にもいい意味で飛び火するんだね。
君が誰かに優しくする度に、私も優しくしなきゃって思う様になれた。
最初から優しさがない人が、誰にも優しく出来ない人が、たった
独りをも愛せる訳ないんだよ。私はそれを実感したんだ。
夫が優しい眼差しで義母の我儘に付き合ってる所を見て頼りないと
思う人も世間にはいるのかも知れないけど、
でも、君が義母の何度も繰り返す話にも、優しい眼差しで付き
合っている姿を見る度に、
私も義母に優しい気持ちになれるんだ。
そんな今の自分が君に有難うってずっと言ってるんだ。
私は父からも誰からも教えて貰えなかった事、本物の愛を
育める心を、そしてその愛はどんな刃よりも
強いんだって事。
君の優しさは頼りないんじゃなくて、強さなんだって事。
だから君は他の人に対しても優しく接して話を聞いて、
無闇に吠えたりはしない。
私は知ったんだ、弱い犬程吠えるんだって、強い犬はどんな
大きな壁にぶち当たっても歯を食いしばって
耐えてるんだってね。辛い辛いって言ってる私なんかより、
辛い事も人一倍あるんだと思うんだけど、
君は今日も笑顔いっぱいで私に問いかけるんだ。
「みこの向いの家は、真希子の和風民芸店の向いの家みたいに、
平屋だけど20階建て位の天井高なんだよなっ!」
「はぁ?なんでまたそんなに高いん?そこはけめの家かい?」
「そうだよ、天井が高い方が出世するっていわねぇ?」
「きゃはは、あんた出世なんか狙ってたん?」
「いやぁ狙ってないけど笑 出世と同じくらいに、心の豊かさ
だけは得られるよう努力してくつもり!」
「そだねぇ、それ素敵だね、いいね!私もそう思う!笑」
今でも充分だよ。君がいてくれるだけで・・・・・・。
そう、遠い夜空に輝く『Stella Of Kimi&Miko』は私と君の星!
そして・・・私に質問責めだった友達は5つ年下の彼と
結婚したっけ。笑
『和風民芸店Ⅱ』より~