しりとり 【月夜譚No.417】
ドライブでは、しりとりが定番だった。誰からともなく始まって、いつの間にか盛り上がり、車内は家族の笑い声が絶えなかったのを覚えている。
いつしか成長してドライブにはあまり行かなくなり、彼女も妹も実家を出た今となっては、家族全員が顔を合わせるのも年に数度しかなくなってしまった。それを淋しくないと言えば嘘になる。普段はそんな風には思わないのに、ふとした瞬間に思い出して、郷愁に駆られることもある。
出張の帰り、一人高速道路を走行する車内で、彼女はそっと唇を開いた。
「りす」
走行音に紛れて掻き消されそうな小さな声だ。ふっと零れたそれを自覚して、彼女は口元を弛めた。
『――』
何かが聞こえたような気がした。しかしそれは一瞬のことで、車内や道路に異常はない。
気のせいかと運転に集中し直したその時、フロントガラスに映った後部座席に、いるはずのない女の子の姿を見た。それと同時に、耳元で高く大きな声が響く。
『すいか――次は貴女の番よ』
息が止まって、腕が上手く動かなくなった。道路を逸れていく車に咄嗟にブレーキをかけ、斜めに急停車する。
急いで背後を振り返るが、後部座席は静かなまま、オレンジの照明を暗く照り返していた。
幸いなことに周囲にあまり車がおらず、事故には至らなかった。
しかし、あの声がまだ耳に残っている。楽しげで半分笑うような声は、遊び相手を探していたのかもしれない。




