5:いいなづけの代わりに、エルウィン様のお手伝いを2/2
最後辺りに、魔物倒したり、決着するので残酷描写れてました。
彼は畳んだシャツの代わりに、布の袋に入れられた、寮での貸出用の紅茶のセットを持って来て、紅茶を淹れる事となった。
「特に、何もしていませんわ」
「そうなのか……、でも、美味しいからね。今日も頼むよ」
「はい、お任せください」
エルウィンも貴族として、紅茶にかける情熱は強いようで時々、こうやってお願いされる。なので、今日も女子寮でのお茶会のように、この場を取り仕切る事となった。
まず、袋から順番に中身を並べていく。
ティーセット、ポット、茶こし、スプーン、水筒、そしていつもの茶葉とハーブ。不造作に入れられていても、陶器は魔法によってどこから見ても、つるんとした光沢をたたえていた。
「エルウィン様、水筒お願いします。それから……お言葉ですが、私はハーブティーは淹れた事ありませんわ」
「ああ、俺も飲んだ事はあるが、淹れるまではないんだ。とりあえず、ポットに入れて5分らしい」
「5分ですね。淹れてみましょう」
毎日嗜む茶葉より、名も知らぬハーブの方にルルカはそそられ、ハーブティーの淹れる準備を始めた。
この試行錯誤の様子は、子どもの頃のお手伝いの様子を思い出す。
温かなお湯に心が温められ、見知らぬ葉は柔らかい。
子どもの「美味しくなあれ」という魔法の言葉。
ふたりでそう言い合い、淹れると本当に美味しく感じて楽しかった。
「お湯を入れるよ。気を付けて」
彼はポットに注ぎ終わると、ティーカップへ注いでいく。
そして今日も『美味しくなれ』と心の中で呟いた。
「「……………………」」
「そろそろ5分だけれど、いい色合いになってきた」
「では、失礼して……」
お湯を空け、ティーカップへと茶こしを通して淹れていく。
そうするとハーブティーの爽やかな香りが、辺りいっぱいに漂い始めた。
「凄く美味しそうですわ。これはなていうハーブなんですか?」
「お礼だって 言って貰ったんだが、名前は聞きそびれてしまったんだ」
「そうですか。ふふふ、どこでも誰かを助けてらっしるんですね」
「いや、そんなわけでは……」
彼は真面目に、戸惑っているようだ。
「これは家の使いで、錬金術同好会の部長から貰ったものだから……」
そう照れた様に言う。優秀なのだから、褒められなれているかと思った。
けど、それにしては反応が初々しい。
「「いただきます」」
危険に挑む騎士を目指す青年と、金をも作り出そうとする道を選んだ彼女は結局、謎のハーブティーであっても迷いもなく、一口飲む。
「凄く美味しい……」
「そうだね……」
やや緑がかった黄金色で、その色合いでとても美味しそうに思えてくる。
体の中へと染み渡ると、ポカポカと体が温まる。そんな気さえしてくる。
本当に、このハーブティーで、素敵な一日を過ごせそう。
「体が元気になりそうですわね」
「彼らの事だから、ポーションの材料も多く入っているのかも。けれど、肝心の、君特有の紅茶の淹れ方については、わからなかった」
それでも、彼はとても満足げな顔だった。
「わからなかったのに……いいのですか?」
「いいよ。俺は美味しく、ハーブティーを飲みたかっただけだから……」
ふたりはそのまま、一年生の歓迎会のプリント作りの進行度や、今年度の予定されている試合や練習試合の予定をノートを見つつ確認する。
それを終えると、彼はティーセットをご自分で片付けるというのでお願いし、彼女は今月の予定の補足を黒板に書き込み始めた。
そして全て書き込んだ時には、時計は他の部員の来る時間になっていた。
チョークの付いた手を払い、机に向かうエルウィン様のもとへ行く。
「今日はハーブティー御馳走さまでした」
彼に向かい、ノートを差し出すと、彼女の声にに気付き、彼は顔をあげる。
「もう行くのか……、フレットの練習を見て行けばいいのに」
「邪魔になると、嫌ですから」
声を出来るだけいつもの様に出すように務めたが、上手くいったのかわからない。
「そうか……、俺は気にしないから、暇な時は見ていってよ」
「試合の時は必ず応援しますわ」
「そうか、お願いするよ」
彼は机にあるノートへふたたび視線を移し、そう答えた。
鞄をロッカーから取り出し、「では、ごきげんよう」と、エルウィンへ声を掛け、手をかけていた扉を通り抜け、閉める。
「また、明日」
そう声が聞こえて来た時、必要とされるのは嬉しいかもしれない。
そう思えた。
部室の扉の横に置かれていた、三年前にはなかった植木鉢には、今は、可愛らしい赤いチューリップの花がニ輪咲いている。
ルルカはそのチューリップに心からの笑顔を向けて、校門から続く大きな道へ向かい歩き出した。
続く




