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子どもの頃から好きなあなたと  作者: もち雪
花残月のさよなら

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5/11

5:いいなづけの代わりに、エルウィン様のお手伝いを2/2

最後辺りに、魔物倒したり、決着するので残酷描写れてました。

 彼は畳んだシャツの代わりに、布の袋に入れられた、寮での貸出用の紅茶のセットを持って来て、紅茶を淹れる事となった。


「特に、何もしていませんわ」

「そうなのか……、でも、美味しいからね。今日も頼むよ」

「はい、お任せください」


 エルウィンも貴族として、紅茶にかける情熱は強いようで時々、こうやってお願いされる。なので、今日も女子寮でのお茶会のように、この場を取り仕切る事となった。


 まず、袋から順番に中身を並べていく。


 ティーセット、ポット、茶こし、スプーン、水筒、そしていつもの茶葉とハーブ。不造作に入れられていても、陶器は魔法によってどこから見ても、つるんとした光沢をたたえていた。


「エルウィン様、水筒お願いします。それから……お言葉ですが、(わたくし)はハーブティーは淹れた事ありませんわ」


「ああ、俺も飲んだ事はあるが、淹れるまではないんだ。とりあえず、ポットに入れて5分らしい」


「5分ですね。淹れてみましょう」


 毎日嗜む茶葉より、名も知らぬハーブの方にルルカはそそられ、ハーブティーの淹れる準備を始めた。


 この試行錯誤の様子は、子どもの頃のお手伝いの様子を思い出す。

 温かなお湯に心が温められ、見知らぬ葉は柔らかい。


 子どもの「美味しくなあれ」という魔法の言葉。

 ふたりでそう言い合い、淹れると本当に美味しく感じて楽しかった。


「お湯を入れるよ。気を付けて」


 彼はポットに注ぎ終わると、ティーカップへ注いでいく。

 そして今日も『美味しくなれ』と心の中で呟いた。


「「……………………」」


「そろそろ5分だけれど、いい色合いになってきた」

「では、失礼して……」


 お湯を空け、ティーカップへと茶こしを通して淹れていく。

 そうするとハーブティーの爽やかな香りが、辺りいっぱいに漂い始めた。


「凄く美味しそうですわ。これはなていうハーブなんですか?」


「お礼だって 言って貰ったんだが、名前は聞きそびれてしまったんだ」


「そうですか。ふふふ、どこでも誰かを助けてらっしるんですね」


「いや、そんなわけでは……」

 彼は真面目に、戸惑っているようだ。


「これは家の使いで、錬金術同好会の部長から貰ったものだから……」


 そう照れた様に言う。優秀なのだから、褒められなれているかと思った。

 けど、それにしては反応が初々しい。


「「いただきます」」


 危険に挑む騎士を目指す青年と、金をも作り出そうとする道を選んだ彼女は結局、謎のハーブティーであっても迷いもなく、一口飲む。


「凄く美味しい……」

「そうだね……」


 やや緑がかった黄金色で、その色合いでとても美味しそうに思えてくる。


 体の中へと染み渡ると、ポカポカと体が温まる。そんな気さえしてくる。


 本当に、このハーブティーで、素敵な一日を過ごせそう。


「体が元気になりそうですわね」


「彼らの事だから、ポーションの材料も多く入っているのかも。けれど、肝心の、君特有の紅茶の淹れ方については、わからなかった」


 それでも、彼はとても満足げな顔だった。


「わからなかったのに……いいのですか?」

「いいよ。俺は美味しく、ハーブティーを飲みたかっただけだから……」


 ふたりはそのまま、一年生の歓迎会のプリント作りの進行度や、今年度の予定されている試合や練習試合の予定をノートを見つつ確認する。


 それを終えると、彼はティーセットをご自分で片付けるというのでお願いし、彼女は今月の予定の補足を黒板に書き込み始めた。


 そして全て書き込んだ時には、時計は他の部員の来る時間になっていた。 

 チョークの付いた手を払い、机に向かうエルウィン様のもとへ行く。


「今日はハーブティー御馳走さまでした」

 彼に向かい、ノートを差し出すと、彼女の声にに気付き、彼は顔をあげる。


「もう行くのか……、フレットの練習を見て行けばいいのに」


「邪魔になると、嫌ですから」


 声を出来るだけいつもの様に出すように務めたが、上手くいったのかわからない。


「そうか……、俺は気にしないから、暇な時は見ていってよ」

「試合の時は必ず応援しますわ」

「そうか、お願いするよ」


 彼は机にあるノートへふたたび視線を移し、そう答えた。


 鞄をロッカーから取り出し、「では、ごきげんよう」と、エルウィンへ声を掛け、手をかけていた扉を通り抜け、閉める。


「また、明日」

 そう声が聞こえて来た時、必要とされるのは嬉しいかもしれない。

 そう思えた。


 部室の扉の横に置かれていた、三年前にはなかった植木鉢には、今は、可愛らしい赤いチューリップの花がニ輪咲いている。


 ルルカはそのチューリップに心からの笑顔を向けて、校門から続く大きな道へ向かい歩き出した。


 続く


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