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子どもの頃から好きなあなたと  作者: もち雪
第四章 涼月の奪還

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42/52

42:エルウィン、アンドリューによる大蛇の誘い込み作戦!

 確実に沈みゆく船を見せられて、それでも彼は動けずにいた。


 情報の欠如、それはある意味、どんな強敵にも匹敵する。


 しかし空飛ぶ魔物が、無抵抗に近い貨物船へと、体当たりを繰り返している様子を、ただ眺めるという行為は、高潔な若者たちには忍耐のいる行為だった。


 きっと貨物船の中では、見るに堪えない出来事が多く起っているだろう……。


 船からは、海賊撃退の為の要員だと思われる、魔術師の魔法や、弓が飛ぶが、遠目から見ていても、効果があるようには見えない。


 そして大蛇からの何度目かの攻撃の後、貨物船から煙が細く、高く上がるのを彼らは見た。


「エルウィン、煙だどうする?」


「砂浜へと誘い出そう。アンドリュー、アイツと距離を取りながら進む作戦だが、あの攻撃のピッチなら、どれぐらいは魔物を離せば、魔法を無理なく撃つ事が出来る?」


「あの倉庫の長さ程は欲しいな、ある程度、砂浜までに体力を削りたいからな」


 アンドリューは結構な長さを指定してきた。


 これから向かうだろう距離を、目視でエルウィンは確認し、首を少しだけひねる。


 砂浜までの距離をある程度予測し、アンドリューの走る速度を考慮すると、こいつの撃てる魔法の回数は多くて三発、通常なら二発が限度だろう。


「アンドリュー、繰り返しでいこう。俺、お前だ。とりあえず無事逃げ切る距離を稼いでくれ。初回が俺で、その間に、アッシュ先輩には、船に向かう事ができないと連絡を頼む」


「わかった。弟子の前で、俺の魔法を初披露か……、弟子のルルカが、俺に惚れたらどうする?」


 そう言うと、エルウィンはアンドリューの彼の赤いピアスを触る。


「俺から、お前の行動を制御するピアスを送るので、穴がもう一つ増える事になる」

 そう、言った途端、触っていた手は払いのけられ、アンドリューはピアスを掴む。


「痛てぇーー!? ッーーくそ、冗談じゃねぇーか!」

「フッ、」


 アンドリューは急激に冷やされた、ピアスを丁寧に温めているようだ。


 つまらない事で、時間をとってしまったが、改めて貨物船を眺めれば、乗組員はすでに戦意喪失したのか、甲板から退避したようだ。


 今が好機、今行けば、こちらへと戦意を向けるのは無理だろう。


 ――攻撃を再開するのか。


 その時、覗いていた双眼鏡から、階段を駆け上がり、船に乗り込むフードをかぶった人物が見えた。


「アンドリュー、待ってくれ、新しい人員が入った」


「俺様なら、大抵の戦力なら蹴散らす!」


「お願いだから、危険に飛び込んで行かないでくれ」


 無鉄砲な相棒を諫めながらも、甲板の様子を注意深く眺める。

 フードをおろせば、金色の髪がローブに流れ出てきた。


「フレット!?」

「あの顔のいい奴が来てるのか……」


 こちらがそう話す内に話がついたのか、フレットがふたたび階段へ向い……、リスレイを抱きかかえ撤退するようだ。


 彼は魔物を避けつつ、階段を降りて行く。


「許嫁を助けに来たのか? やはりルルカより好きだったのか?」


「それはどうだろう? 彼は……家のために、生きてきたように思う……」


 カサブランカに入学し2年間見てきたが、彼は彼なりに、ルルカに誠実であろうとしていた

 。

 しかしアルセル当主である父親の言葉に従い、彼は言葉が足りず、ルルカは彼からの言葉を求めなかった。


 そんな日々を歯がゆく、そしてほっとしながら見ていた事を思い出す。


「どこかへ、行かれると困るか……。


 アンドリュー、情報追加だ。


 フレットと、リスレイが船を降りる。彼らの確保がこちらではできないので、彼らの確保を頼んでくれ。


 さっきの情報と合わせ連絡が出来しだい、作戦を実行しよう。


 フレットならば、なんとかするはずだ。副部長は伊達ではないからね。


 お前は砂浜へ、俺が大蛇を呼びこむ」


「OK! OK! 俺の魔法に巻き込まれるなよ! 臨機応変に魔法は変えて行くぞ」

 少し大雑把だが、アンドリューは作戦を伝えていく。


「わかってるって!」という言葉の後、俺に向かい……。


「じゃ行くか! 【火炎】」


 アンドリューの放った炎が、一発、二発、三発と、ヤクルスの体で花火を散らす!


「どうよ? もう、あのにょろにょろは見切ったぜ!」


「上出来だ! だが、作戦は俺からのはず、だろう?」


 そう、首を傾げエルウィンは言う。


「あーだった」と、片手をちょこんと、アンドリューは動かすとエルウィンのもとから、走り去った。


 残された彼は、貨物を足場に、上へと移動していくと予定通りにこちらへ向かい一直線にむかってくる。


 エルウィンは貨物の上へと陣取り、腰を落とし剣を下に位置させ構えた。



【氷の牙!】



 氷の魔法が被弾するまでに複数に別れ、エルウィンの集中によって創られた羽根を撃ち抜いていく。


 しかし、矢の様に飛ぶ魔物の速度はあまり衰えず一つ、二つ、三つと当たりはしたが、目の前に迫るそれの為に後退する事になる。


 そして四発目の氷の刃は、魔物から大きくそれ空中で大きく爆発した。


 港の石畳、それの上へと飛び降り走るエルウィンに、相棒の声が聞こえてくる。 


「おい! 来るぞ鱗が、ざわざわとざわめいてる!」


「わかった。続いての攻撃頼む」


 そう言うと、エルウィンは立ち止まる。

 その彼を目掛け、大蛇が口を開け襲い掛かる。


 そのギリギリを避け、ドッシーィン!! とそれは地面を大穴を開け、パラパラと地面の土塊が空に舞う。


 その中、エルウィンが防御を解いて、右足で踏む込み、


 大きく振り抜く。大蛇の4分の1を切断することとなった。


 ドン! ドン! ドン!


 砂塵を上げ、魔法は飛び込んで来ていた。


 道路には何本もの、切り出して来たような土の塊が突き刺さり、大蛇を釘付けにしている。


「よし、やった! 俺様の敵じゃなーい!」


 そう言ったアンドリューのもとに、エルウィンは居たが、突然、魔術師の背中を叩き合図をして、「逃げるぞ」と、告げた。


 大蛇は痙攣するように、揺れていた。


 釘付けになり、動けないはずだったのにだ。


 だが、大蛇は再び飛行を始め、先ほどの場所には脱皮の跡が……。


「なんだよ!? 無敵かよ!」


 アンドリューはそう言い捨て、ふたたび走り出す。

 それにエルウィンが続いた。


 続く。


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