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子どもの頃から好きなあなたと  作者: もち雪
第四章 涼月の奪還

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37:ルルカの捜索

 カサブランカの校舎裏、渦巻く点々とした青い光の中、彼らは突然現れた。

 そしてエルウィンが目を開けると、そこには美しい青い瞳が。


 しかし次の瞬間、それは残像となった。


「ルルカはいるか!?」

「なんなのいったい!?」


 エルウィンたちが飛び込んだのは、錬金術同好会の部室。


「もうすぐ来るはずだけど、何かあったの? いいなさい」


例の場所(情報ギルド)へ行ったのだが、ドスカレッドがどうも、ルルカに興味を持ってしまっていたらしい」


 エルウィンと、アンドリューの間から出て来たのは、ルルカの兄、アッシュだった。

 息があがった状態の彼は、机の下の椅子を出して座った。


「興味を持ったからって、何ができるの? 貴族の十八番の暗躍や毒殺を、ここカサブランカで行うつもりなの? この状態で?」


 セロッティーが訴えるように言うが、アッシュは片肘を机につけ、そこへ頭をのせてしきりに首を振っている。


「違うんだ、ドスカレッドはそういうくくりではない」

「どういう事なの? 歯切れが悪いわね。私たちは危険を承知で、情報を提供したのに」


 アッシュが、セロッティーと話している合間、エルウィンは鞄を手に持ち、離れた机の上でジョンが寄越して来た書類を広げページをめくってっている。


 その光景をもアッシュは確認しながら、話を続けた。


 そしてフロートが、彼女の後ろへ出て来るのをその目で見ている。


 そしてフロートは彼女の肩に手をのせ――。


「部長、それ以上聞かないでください。王室所属で、ここで好き勝手できる権限持ちに、追求してもいいことなんてないですよ。きっと……」


 そう静かな口調で、彼女を止めた。


 その表情はかたい。


 ――それぞれ、自主的に行動が出来るのはいい。

 だが子どもに、そんなに早く大人の振りをマスターされると、俺の大人の振りのハードルが上がるんだが?


「なんで……」


 彼女は耐えられない、というように首をふる。


 バァン!!


「諦めないわよ! 私は絶対ものわかりのいい、いい子にはならない! 情報ギルドの情報を吐きなさい、ルルカ兄! 貴方に情報を売った時から、覚悟はバッキバキなのよ! 言いなさい! 吐きなさい! 今すぐ!」


 ――さすがセロッティー、心のオアシスよ……。


「駄目だ! セロッティー、覚悟の使いどころが違う。君たちの事は信頼してる。だからこそ頼む、今はこの国の薬についてのみ、心力を注いで欲しい」


「ぐぬぬーっ、どっちもは……選べないわね」

「体は、一つしかありませんからね」

「錬金術師なら、これまで通り、薬の補給を続けるしかないわね。でも、いつか報告しなさいよね」


 そう言った彼女は、棚からポーションを取り、三人に配り歩く。


 それぞれがお礼を言ったが、アッシュはすぐさま蓋を開け、一気にそれを飲んだ。


「はぁー……沁みる……。ああ、いつか話せる時が来たら話すよ……。今は何について話していいかのと、考えを巡らせている余裕はないしね」


「で、どうするんですか?」 


 フーロトの言葉に、アッシュは腕組みをし考える。

 彼は振り返り、用紙にかき込んでいるエルウィンの姿も見た。


 そして彼は姿勢を戻し、目の前の、妹の友人二人をふたたび見た。


「セロッティー、前言を撤回するようでもしわけないけど、女子寮へルルカが居るか、確認へいってくれないか? 居たらそのまま出歩くことはしないで、待ってて欲しいと伝えてくれ。君もそこで待機で。こちらは校舎内に放送をかけて貰う」


 そしてそろって、同好会の部室を出た。


 ◇◇◇


 向かう場所はたぶん職員室か、その近くの放送室だった。


 以前は、教師がいちいち叫んで、校内に声を轟かせていたが、そんな魔法、まだ使っているのだろうか?


 そんな事を考えていた最初は、余裕はあった。


 一応、カサブランカ生であり、剣術などの体育会系の授業をこなしているアンドリューは、平気そうだったが、ルルカと同じ勉学中心の勉強をしただろうアッシュは、そこへ辿り着くまでにだいぶ息があがってきていた。


 騎士団のエリートコースを行くだろう奴に、全力疾走されてば、老いとは関係なしに昇降口を上がった所で動けなくなるのは、必然的な出来事かもしてない。




「ルルカ兄! アッシュ、早くこちらに気づいて!!」

 階段下から、セロッティーが呼ぶ声が聞こえた。


 ――寮から追い付いたのか……?


「はぁ……おーい! 行ってくれ」

 焦りと、か弱き者への労りが浮かぶ、エルウィンに階段下を指さし声を掛けた。


「わかりました。ゆっくりでいいですよ」

「任せとけ!」

「って、おい!?」


 階段を上がり切った場所から、エルウィンとアンドリューは柵へと手を掛ける。

 そして彼らはヒョイという感じで、飛び降りた。


「お前らなぁ……」


 アッシュはわかってはいても、柵へと駆け寄り、地面間近で、落下スピードを落とし、地面の上へとふんわりと着地する二人の姿を確認する。


 しかし無理に動いたせいで、余計に体は悲鳴をあげる。


 ――本国へ戻れたんだ。運動すべきだな、これは……。


「アッシュは、そこに居て!」

「落ちる前に言え! 心臓ギュッてなったぞ!」


 叫び、エルウィンはああ言ったが、妹の為、足を交互に動かし階下へと足を進めた。



「エルウィン大変よ! ルルカらしい女生徒が(いかり)の紋章の入った、ペイジ家の馬車とともに消えたわ!?」


「遅かった……」


 エルウィンは片手で、頭を抱えながら理解できないように呟く。

 そして瞬く間に、顔色を変えて行く。


「守ると決めたのに、何やってるだ俺は……」


「エルウィン、エルウィンしっかりしろ! おい! ルー!」

「お前は、そうやって呼ぶな……」


 腹の底から、氷の様な冷たい声が出た。しかし焦っているだろうエルウィンも、正気を取り戻したように、アンドリューへ謝罪の言葉を口にする。


「すまない、アンドリュー……鍛錬が足りないようだ」


「鍛錬で、ショックが軽減されるわけないだろう! 魔法塔へ戻ろう! 俺様はちまちました魔法は得意じゃないが、ルルカのペンダントなら今、どこに居るかわかる!」


「えっ……あっ……居場所探知まで、そのままだったのか……」


「呪術・魔術の魔法陣設計屋が、『個別魔法陣組むのめんどいし、金掛かるぞ』って言ったから、そのままだ!」


「それは、それで障りがあるだろう……」

 エルウィンは、今度は闇落ちしそうな方向に、頭を抱える事になった。


 そこへアッシュが、駆け足で合流して来た。


「彼女の話しは、聞こえて来た。だが、策があるように聞こえたが? どうなんだ?」

「あっ、アッシュ……」



「現状ではルルカは、ドスカレッドと思われる人物に連れ去られてしまったようです。


 解決方法として、アンドリューのイヤリングと、機能がまったく同じものを身に付けている可能性があります。


 すみません、そこまで同等のものと思っていなくて、俺がプレゼントした物なのですが……」


「わかった。錬金術同好会へ行こう。ペンダントのセンサーが置いてある」


「なんでうちに!?」


 セロッティーの声が校庭で響き、先ほどからこちらをチラチラ見つめている生徒の、興味をまた引いたようだ。


「帰国早々、魔法塔の管轄が、『申し訳ありません。アンドリューのイヤリングをご存じですよね? その機能と全く同じものを妹さんが身に付けてしまっている様で……」と言って来て『ファ!?』ってなったわ」


 やって来た職員のもじもじとした赤い顔、心拍数の機能はあっても、盗聴の機能はないと信じたい。

 しかし最近は我が国も、諜報の面ではアンドルの魔法科学を積極的に取り入れているしわかったものではない。


 ――この話は、追々。


「そういう事は、早く言ってくれよ。お兄さん!」

「俺は仕事でいそがしいんだよ。それにお前のお兄さんじゃない!」


 そして三人と、セロッティー部長は、錬金術同好会へ走ったのだった。


 続く


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