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子どもの頃から好きなあなたと  作者: もち雪
第四章 涼月の奪還

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35:情報ギルドへのカチコミ

 冒険者ギルド、酒場と併設されたその施設では、『クエスト』という名前で冒険者に仕事を斡旋していた。


 アッシュの目の前には、フワフワした髪の受付嬢。


「いらっしゃいませ、今日はお依頼ですか?」


 フードをすっぽりかぶった三人組は、どう見ても冒険者に見えない。


 前衛、後衛と一応揃ってはいるが、人数が少なく、身分を隠す事情があり、パーティーメンバーを探しているようには見えなかったのだろう。


 彼はギルドカードを差し出し、伝えるべき言葉を彼女に話した。。


「こんにちは、カピクワバラと思われる蜘蛛を見たんですが」


「はい、カピクワバラの蜘蛛のクエストですね」


 ――おっ、さすがプロ、少しの情報で、数あるクエストの中から探し出した。


「はい、こちらが今回の内容の詳細になります。住所はここに書かれています。


 このカピクワバラ研究所に出向き、依頼人の博士とお話しください。


 そしてこの紙にそのまま、博士のサインを持ち帰ればクエスト終了になります。


 ここで気を付けなければならない事が、二つございます。


 ギルドで請け負ったクエストはあくまでも、有力な情報を持つ人物の斡旋です。


 それが気に入るかどうかは博士次第です。


 しかし今回、話しの内容、報酬についてのトラブルについて、博士はギルドの介入を望んでおりません。


 ですので、博士と金銭についてのトラブルは申し訳ございませんが、自力での解決をお願いします。


 もう一つ、依頼人が、御不在の場合もございます。

 後日、訪問予定日を書き残し、再度訪問くださいとの事でした」


 そう彼女は明朗に答え、僕のギルドカードの返却と、クエストの明細の書かれた紙を手渡して来た。


 ちなみに、ギルドが運営している保険に入らなければ、クエストの発注者と冒険者の間には介入しない。

 今回、依頼主の粋な計らいと受け取り、こちらも保険加入をしない事にしている。


 そしてギルドを出て屈強な男たちからさよならすれば、アッシュとお揃いの安物のフード付きマントで、素性を隠した屈強……。


 ではないな、身長が高いが、体幹の良さそうな男と、平均身長だが痩せてる。


 ……痩せすぎ、誰かこいつに飯を食わせねば!


 てな感じの男が、俺を待っている。


「博士の研究所に行くぞ」

「なら、最初から……」


 ――こいつ、人の話聞いていなかったのか? と、振りかえれば体幹のいい方が、痩せの口もとへ手をやり、口を閉じさせていた。


 ――さすが、体幹のいい方……。


 ◇◇


 研究所は、ギルドの契約書を確認しつつ、ルーフェンで一番、迷いやすいと言われる、商店街の裏通りを長く彷徨いみつける事ができた。


 ギルドの裏に書かれた手書きの地図は、半分もその効果を発揮する事はできなかったようだ。

 まぁ、その難解さで、彼らを迷わせる仕事はこなしたようだが。


 裏通りの、幾つもある扉の中の一つ、ある小さな扉の前に三人は立った。

 それには、ドアノッカーは無く。


 体幹がいい方が、ノックする。


 アッシュは彼の手に守られ、痩せた奴と一緒に、安全圏内と思われる場所に居た。


「どうぞ」


 …………、想像より若い声、危険を誘う声、酔狂で蜘蛛を観察している奴の出す声ではない。


 声に誘われ、背の高い彼が扉を開ける。


 そこは診察を待つための小さな待合室のようで、受付と、その前にベンチが多少曲がった状態で置かれている。


「こっちです」


 開いてる、診察室の入り口と思われる扉の向こうから声が。


 やはり彼に先導され、室内へ入ると、そこには四十そこそこという感じの男が座っている。

 彼は異様な眼力で、我らを見据えていた。


 そしてその隣りに立っているのは、声の主だろう、三十路そこそこの若い男。

 灰色の髪、没個性の容姿。


「ようこそ、おいで下さいました。アッシュ様、アンドリュー様、そしてエルウィン様」 


 名前を呼ばれ、多少、眉はピクついたが、それ以上は驚きを隠すよう努めた。


「ここは【蜘蛛の網目】の事務所で、間違いないか?」


 背中の方で、僅かに音がした。マントを抜いたのか、抜刀したのかわからない。

 しかしそのまま、アッシュは話を進めた。


「間違いございません。名前がわけあって名乗れませんが、皆様の前に座っているのが、情報ギルド【蜘蛛の網目】の頭目でございます」


「へぇー」


 そうアッシュが答えると、若い男はにっこりと笑顔を見せた。


「アッシュ様、情報をお買い上げにいらっしゃったのですか?」

「いや」


「では、我々を掴まえに?」

「それはできないって、知ってる癖に」

「まぁ、私どもは交友関係は広いほうですから」


 そう若い男は、薄ら笑いだけ浮かべている。


 ここへ訪れる事を知られていた? いや、決めつけはダメだ、思考を曇らせる事になる。

 何らかの形で、ギルドから情報を先回りして、得ていた可能性がある。


 何しろ、ギルドは管轄が違いすぎて、偽物のギルドカードの用意まで手が回らず、受付もそれを見破るすべを持っている。


「私がここへ来たのは、通達、連絡、報告係、そのために来た。


 お前たちが行っている。国内の錬金術師の偏った噂を直ちに止め、その噂を流したのはペイジ家ではないか? という噂に切り替えてくれ。


 それからそちらの持つ、ドスカレッドの情報を全て欲しい。お友達関係について特にだ」


 そう言うと、ずっとだんまりだった頭目が、「顧客を裏切る事は出来ない。それが知られればこちらがやっていけない」そう答えた。


「大丈夫だ。やっていけるよ。何しろお前たちに、首輪が付けられるからな」


「どういう事だ!」


 壁に大きくはられた、蜘蛛の網目のフラッグを背中に背負って立っている頭目は、そう言っていきり立っている。正直言ってめんどくさい。


「どういう事だも、何も、王からのお達しだ。


 社交界まで入り込み、嗅ぎまわるのもいい。弱みを握るのもいいだろう。


 それは国家運営の上で、不可欠な事でもある。


 ただ……それを野犬がやっていい事ではない。


 まぁ、この場合、王に跪いた蜘蛛だけ、その権利は与えられる。


 ただの厄介な蜘蛛を野放しにする程、この国は荒れてない。で、どうする? 頭目さんとやら」


 その空間では、頭目、そう呼ばれた男も含め、若い男に視線を向けていた。


 若い男は、仲間の男を睨みつけた後、アッシュたちの視線を移すと、楽しい笑いが漏れ出た時の様に、少しだけ息を吐く。


 寡黙な男にしてみれば、血の凍るという様な、蔑む視線を受け、彼は静かに椅子を空け渡す。

 若い男は、ポーカーフェイスのまま、礼儀正しくその椅子へと腰掛けた。


 その振舞いは貴族の様で、どこかで落とし子であると連想させた。


「ジョンです。これから私の名前はジョンと及びくださいマスター」


 ジョンはわかりやすい偽名で、俺の事をマスターと言う嫌味も忘れない、小粋な男の様だ。


 足を優雅に組み、手も肘置きに置いて、こちらも優雅に組んでいる。

 虚勢か、地なのどちらか不明だった。


「マスターと言われて気恥ずかしいが……、錬金術に関する噂を速やかに消してくれ、そして速やかに次の噂に移行してくれ、これはお願いじゃない。自分で蒔いた種は自分で回収してくれって事だ」


 アッシュは、今だにジョンを睨みつけている。

 ジョンもジョンで、やはり腹の底は今なおしれない。


「こちらの関わってない案件には従えますが、やはりこちらも信用第一でやってますので、今後の仕事にも差支(さしつか)えがありますよ。お勧めしません」


 至極残念(しごくざんねん)だ。というように首を振る。こっちも結構めんどうかもしれない。


「じゃー情報屋さん、ここで情報について、あんたを試そう」

「何の冗談ですか? それともご自慢ですか? 国の情報機関の素晴らしさを」


「あんたの無知をさらけ出す」

 アッシュは、顔色一つ変えずそう言った。


「あの男の目的は、何だ? こちらの掴んでいる事実は言っても問題にならない。そうだろう?」


「カマかけって事もあります。……ですが、もちろん貴方が知っている事について、こちらもある程度把握しています。その範囲内で良ければお答えしましょう」


 やはり、特有の勿体ぶった話しかたで、めんどくさい。

 いいと思うよ。それぞれに個性があって。


「ドスカレッドの思惑は、旧貴族派を潰す事?」

「YESです」


 わぁっ、情報を絞って来た。やっぱりめんどくさい。前言撤回。


「ドスカレッドのここ最近のやり方は、うちの妹と、ここにいる公爵令息エルウィンの関係が原因?」


「そこはノーコメント、彼は全ての事に考慮し物事を進めます。それについてはこちらも、困惑している事柄です」


「では、ドスカレッドが輸送船において、アンドルの力を借りれるのは、彼がアンドルのスパイだから?」


 場が、静まりかえる。もちろん、エルウィン、そしてアンドリューにも伝えていない事実だ。

 あまりに、ここが情報屋として無知な為、いう事になってしまった。


「それが、私が無知な理由?」

「そうだ」


「ちょっと失礼」


 そう言って、ジョンは仕掛け机を破壊し始めた。

 そして書類を一冊だし、ペラペラとめくっている。


 そしてあるページを指差し、止まった――。


「もしかして、そのために貴方は、アンドルの片田舎まで出向いたのですか?」

「出向いた。そして一新されていて、本当に嫌になった」


「……そうですか……、それはお疲れ様です。わかりましたが、これについては、発見部類でしょう。私としては無知とは言いませんね。負け惜しみではなく」


 ――だが、それは負け惜しみだ。


「労いの言葉、感謝する。で、やるの? やらないの? ほんと、めんどくさいよ」


 ――おっと、本音が出た。


「いいでしょうやりましょう。ドスカレッド様は金払いの良い優良な顧客だったのですが、科学国家アンドルのスパイであれば話はべつです。国がなくなるならば、せっかく培った人脈が台無しですしね。スパイを手伝ったのであれば、挽回しなければ、国賊は免れませんからね」


 結構、片肘が取れたというか、かっこつけの仮面が剥げたジョンは言った。


「では、後で使いの者を寄越す。ここに居てくれよ、番地表示を変更するのもなしだ。地図もでたらめ、外の番地表示まで変更されているから、もうこれる気がしない」


「おや、貴族でそれに気づくとは珍しい」

「妹が一度、ここの隠された書店へ来たいと言ってな、覚えてたんだよ」


 ここで、ジョンがいやな笑い方をした。人間らしいと言えなくもないが……。

 背中を虫に這いまわられた様な、嫌な感触だった。


「ルルカ様ですね。よく存じております。ヘイゼルの血筋であれば、錬金術の秘術、いえ、ユニークスキルでしょうか? ドスカレッド様、大変興味を持たれていましたよ」


「馬鹿な……ルルカは……」

 カサブランカの鉄壁の守りに守られているはず……。


 そう言う前に、ジョンが襟首を、エルウィンに持ち上げられ宙に浮いていた。


 あまりにも、軽々と持ち上げてるもんだから、寡黙な男も攻撃して、ジョンを盾される事を恐れ、動くに動けない状態だ。


「待て! 待て! 俺が指示をするまで動かないずだろうが!?」


 おい、やめろ俺の事まで殺すぞって顔でみるのは……。


「エルウィン、やめろ! 俺様が自白するように、呪いをかける失敗すると……まぁ、色々ハッピーな事になるが、手段は選んでられない、やろう!」


「いや、選べ! そうやっても聞き出せない、エルウィン取りあえず降ろせ!」


 かぁー、あのエルウィンが光のない瞳で、ジョンを見ている。

 妹よ、お前はどんな調教をこの男にしたんだ!?


 ジョンはゴホゴホと、それこそ嘔吐寸前な程、咳き込むと。

 よろよろと立ち上がり、鞄の中から書類を一束出してきて俺の胸へと叩きつけるように。


「これがやつらの拠点です。急ぐなら右の窓から出て、坂を登ってください」

 そういって、椅子に体を預けるのだった。


「じゃーアッシュ! 飛ぶぞ!」

「頼む!」

「お前たち待てー!」


 そう言うと彼らは、ジョンのもとから消えたのだった。


 続く


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