表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
子どもの頃から好きなあなたと  作者: もち雪
第三章 七夜月の暗躍

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/44

34:アッシュとセロッティーたちの密談

  アッシュは学生たちの安全点検も兼ね、授業の終わったカサブランカ校内を探索していた。


「ちょっといいですか?」


 そう、ちょっと顔貸せ的に、アッシュを呼び止めたのは同好会部長のセロッティーだった。


「君は?……えぇっと……」

「そういうのは、まどろっこしいから、やめて貰えますか?」


 セロッティーは、アッシュを疑り深い目で見つめ、後ろのフロートは彼女の番犬の様に立っている。


「そうだよね? 俺もその方がいいかな?」


 緊張した面持ちの学生二人とは違い、アッシュは笑顔を絶やさない。

 静かにうなづくフロートの了承を得て、


「では、君たちを、俺たちの準備室内へとご招待しよう」

 アッシュは彼女たちに鍵を見せ、誘導するように手を前に出した。


 ◇◇


 正直言って――。


 扉を開けた時、あちゃーと思った。

 エルドアの朝の早いルルカと、エルウィンに合わせ、準備室から早々に出ていった後、ためていたアンドルという国の調査書を、書き連ねる作業を行っていた。


 そして現在、この部屋のありさまは、人様にお見せ出来ないものになっていた。


「君たち、回れー右!」

「えっ? 何でよ?」

「いいから……、国務に関わりたいのなら、フロートを見計らい助言は聞くべきさ」


「国が隠すような、素晴らしい技術を知るために、私は王国錬金術師なるのよ。秘密が知れないなら、わずらわしいだけじゃない」


 まぁ、彼女が言うことには一理ある。

 しかしそんな生き方では、先々に障りがあるだろう。


 ――本当に困ったお嬢さんだ……。後ろの青年の、今後の苦労までがしのばれるよ。


「いいから、ここには君の求める秘密はないよ」

「あら、貴方は我が国の錬金術師を代表して、アンドルへ調査に行ったのでないの?」


 ――だぁ――! この娘はー!?


「その調査書は、王国錬金術師のエレドアと、来てる時点でわかるだろう? 帰国して早々に、ハイエナのような錬金術師たちに奪われたよ。今、ここにあるのは、公然として持ち帰るには(はばか)られる書類ばかり! それをこの優秀な頭脳から、記憶だよりに書かさせれてんの」


「うーん、嘘ぽいけれど、信じるわ。私たちは、貴方を共犯に選んだのだから……」


 ――その割に、ずいぶん悩んだようだが?


 そして彼女達は廊下で待ち、アッシュは空いている机の引き出しに、一山ずつ書類をぶちこみ事なきを得た。


 時間として、十分もかからなかっただろう。


 扉を開け、「もういいよ」と顔を出すと、セロッティーは、フロートにお小言を言われていた。


 ふたりの関係に関しては、あの変なマスクの教師の言う通り……。

 問題は、新鋭貴族の令嬢と、令息である彼らが、旧貴族派の一人に何を言いに来たかだ。


 二人を今はもう、個性の無くなってしまった準備室へと招きいてる。

 物怖じもせずに入って来る二人に、少々……ルルカへの影響を案じる事となるが、今は関係ない事だろう。


「座って二人とも、お茶は無くとも心意気で話そう」

「貴方たち兄妹、全然似てないわね」


「よく言われる。たが、互いが、互いの事を思い合っている。そういう面では兄妹として誰にも負けないと思うよ」


「じゃーその優しさを、彼女の友人である私たちに、少しは向けてくれないかしら?」


 そう切り出してきた彼女は、話の上で一戦交える気なのか。

 もともとそんな気性か、注意深く見守る事にしよう。


 セロッティーの紫の瞳は強く輝き、彼女に寄り添う、気弱そうな彼も覚悟を決めたという目で、こちらを見ている。実に面白い、戦い甲斐がある。


「それは君たちのこれから話す内容によるなぁ……。うちの妹は怒るだろうが、新鋭のドンと呼ばれる存在は、今、国を転覆させるような事件を起こしている。そんな時は、子子孫孫(ししそんそん)に至るまで疑わなければ、だろう?」


「そうね。腹の探り合いをしても、時間の無駄なら知ってる事すべて話すわ。だから、新しい貴族と、ひと一括りにせず、個人としては難しくとも、称号を背負う家として見てくれないかしら? 例え男爵という地位だとしてもね」


「そうですね。午後の薬草の世話に間に合わせる事はまだ十分可能ですから。付き合います。世話が終わ手ば、その後も……」


 彼らのやる気は、買う事が出来る。それ相応のものを提示出来たらの話だが。


「では、私たち、善良な子どもの意見を、言わせてもらうわ」


 ――そうやって自分の立場を利用する子どもは、だいたい手に負えないという事は往々にしてある。


「実は私たち新鋭貴族の中にも、旧貴族と対立したい人間ばかりではないの。


 過激なやつらと違って、うちは、そうね……、立場をお金で買っているの。


 それから信用も、うちは特にそう。


 うちの家系は錬金術の進化に貢献しているわ。その為の貴族の立場が必要なの。


 旧貴族はそれを聞くと怒るけど……、この国の為に使っているんだからいいじゃない……ねっ?」


 そう雄弁に語るセロッティーの実家は、つい先日、植物系のツタ系の魔物を勝手に連れ帰り、研究をしていて、王室から厳重注意を受けていなかったか? 


 疫病を減らすべく心力を注ぐヘイゼル家と、対を成す存在ながら、その全てを、本当に残念な研究に注ぎ、時々、ドラゴンを首を取るに匹敵する偉業を成す。


 そんな残念な錬金術師の筆頭が、彼女の家系だった。

 そして今回も血は争えなかったのだろう。


「ノーコメントで、で、君の意見は?」


「うちは! セロッティー部長とは違います!」


 ――あっ……、いきなり、キングを矢で打ったな。このポーン、いや、ナイトか?


「うんうん、どう違うんだ?」

「うちはしがない農家の家系でした。しかし業務上のパートナーのセロッティー部長の一族の方々に、『大規模経営するために、一緒に貴族ならないか?』と無責任に誘われて、そしてうちの家は、男爵になるって事を選びました」


「って、おい!? 何故、その流れで男爵になっているんだい……? もしかして、家族人質に取られた?」


 アッシュは親指と人差し指を伸ばし、手のひらを上にしてフロートを指さした。


「いえ、違いますが?」

「人質なんて、取れるわけないんじゃないの? 馬鹿じゃないの?」

「部長!? 伯爵になんて事を!」


 アッシュは今、心底馬鹿にした目の一名に見られ、一名には大丈夫ですよね? って顔で見られている。

 彼は、徹夜続きのくたびれた錬金術師の様に、肘をついた両手の上に顎をのせた。


「うちには、エリクサーの素材表があるんだ。人権に配慮してうちでは作る事がないけどね」


 セロッティーがわかりやすく、瞳の色を変えた。


「出しなさい!! 人権も大切でも、……死体なら、うーん、自分の死体ならギリ良いと思わない?」

「それだと、自分で結果知る事できないけどいいの?」

「もちろんよ!」


 そう彼女は、曇りない(まなこ)でそう断言する。

 きっと、嘘なんだろう。彼女は真実を知りたい系の錬金術師だと思うから……。


「この話、嘘だから、うちの妹を人質にしないでね。錬金術師が追い求める。幻の秘薬の痕跡には、うちにはないから、本当だよ」


 アッシュは目に見えて、やる気がなくなっていた。

 帰国する前から忙しいし、仕方ない。


「部長、お願いですから、死に行く人に、死後の遺体の使い方の相談を、持ち掛けるのは止めてくださいね」


 そうすると、彼女はきょとんとした顔をする。


「化学の貢献のためにと、大体うちの家系は自ら申告はするわよ」


「すみませんでした。そこまで、一族で覚悟を決めていらしゃるとは……。では、ご自分の死体をお使いになるのも、真実なのですね!?」


 青年は、目に見えて慌ててる。まぁ、忠誠を誓った感じの様ではあるし……。


 それを見た彼女は、少しだけ声のトーンを下げ――。


「私が一番、最初とは限らないけどね……」


 少しの沈黙の後――。


「では、先ほどの話をしようか?」

「そうですね」

「そうね」


「僕の一族が、貴族の称号の獲得を選んだのは、


 一昔前、誰もが苦しい時期に、多くの貴族が……ここだけの話、称号を金で売りるように、養子縁組が多く成立した時代背景。


 そして部長の一族が貴族となれば、いずれ当時の先祖の農園だけでは足りない規模の薬草を求められる確信があったからです。


 そこに、貴族になれば、これまで以上に農園を営むに、適した環境得られるようになるとの情報まであれば……」


「君の意見もわかる。だが、お互い私利私欲のために一族が動いているからなぁ……。そこが相容れない一因なんだよ」


「私利私欲と、崇高な錬金術の技術開発は違うのよ!」

「私利私欲と、人々のお役にたてる農園経営は、違うと思います!」


 ふたたび、組んだ手に顎をのせていたアッシュは「君たちの意見はわかった。で、君たちのもたらしてくれる情報は何だい? 陳情書なら、こっちへ持って来られても困るよ」


 彼女がフロートを見ると、彼はうなずく。


「アッシュ様は、情報ギルドの話をご存じですか? 過激なペイジの家を良しとしない新鋭貴族が内密に集まり、情報ギルドの存在を切り札にするべきだと、話がまとまったのです」


「情報ギルドの存在があるのは知っている。使った事があるかと問われてば答えはYESだ」


「では、どこの情報ギルドというのは?」

「もちろん知っている。今度捕まえに行くつもりだ。だから君たちが言わずとも困りはしない」


「そんな……」


 彼はわかりやすく、肩を落とした。

 だが、彼女が彼の口を手で覆った。


「嘘ね」

「なんで、そう思うの?」

「女の感だわ。それ以上でも、それ以下でもないわ」


 それ以外に何か知ってるようだが、無難な返事で済ますようだ。


「じゃー話を変えよう。何が欲しいの?」

「安全を保障して欲しいわ。罪人を掴まえるのは、それは仕方ないわ。見た感じ、アルセス家はもう駄目ね。婚姻まで結ぼうとしているのなら、もうずぶずぶな関係じゃないかしら? でしょう?」


「それは俺にはわからない。帰国したばかりだしね」


「では、別の角度から……、新鋭貴族も経済面ではなくてはならない存在よ。


 ノアの家はある程度、寛容ではあるけれど……貴族をまとめる上では、そうであるかわからないわ。


 だから、旧貴族派であり、公僕であるアッシュに助けを求めたいの。


 これ以上経済を荒らすのは、そちらも避けたいでしょう?」


「ここで、約束できる事ではないが……、私もそれは同意だから、手を組もうか。


 優しい兄としては、妹にこれ以上辛い気持ちにさせたくないしね。


 だから、できるだけ心力を注ごう。


 で、情報ギルドは【蜘蛛の網目】で間違いない? 


 そしてギルドマスターと会う方法しらない?」


 アッシュはにっこり笑顔で言う。

 新しい組織は情報が少ない。可能性が少なくても、挑戦し尾を掴みたいところだった。


 続く


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ