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子どもの頃から好きなあなたと  作者: もち雪
第三章 七夜月の暗躍

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22/32

22:悪い噂、ある男の召還とフレットの苦悩

〇アッシュ ヘイゼル

ヒロイン:ルルカの兄


王国錬金術師

カサブランカ時代では、錬金術部へ入っていたが幽霊部員。

生徒会の書記とか会計をやっていた。


性格:頼れる兄貴肌

カサブランカの高等部が初めての学校のルルカと違い、初等部から寄宿制カサブランカ(ほぼ男子校)に通っている。


生徒会で、フレットとエルウィンと親しい間柄、エルウィンについてくるアンドリューにも慕われている。


現在、魔法科学で有名な国アンドルの錬金術について学び中、しかしちょくちょく、母国へ帰って来ている。


見た目:知的で黒髪の、整った顔の男性


〇エルドア クライン

王国錬金術師

カサブランカ時代では、錬金術部へ入っていた。

アッシュと同級生かもしれないし、とりあえず被る時期がある。


見た目:黒い髪をおかっぱの長さ程に切りそろえ、最近開発されたと言う、片眼鏡ではない耳の上にのせるタイプの眼鏡を身に付けている。


〇ドスカレッド ペイジ

リスレイ父、現在の妻は後妻で、リスレイとの関係は継母となっている。

貿易関係の仕事など手広くやっている。


新鋭貴族で、秀でている存在。


〇トニー

アッシュの助手、エルウィンを呼び捨てなので、貴族なのかもしれないし、恐れを知らない庶民なのかもしれない。


本国に残り、ルルカなど家族についての連絡や、世情について詳しく報告していた。


【アンドリュー(主観)による全然役に立たない。これままでの話】


 あー、フレットとルルカが破局して、フレットはリスレイという……。


「先輩、お弁当持って来ました」って言いそうな、可愛い2年と婚約した。


 エルウィンは……、俺が怪我したら「ポーションありますよ」、喉乾いたら「紅茶ありますよ」という少し押しの強さを見せながら、淡々と言って来る感じの美人のルルカをかっさらったというか……、乙女心soul(魂)が発動して結婚を申し込んだみたいな?


 ルルカはエルウィンだけには、時々デレるが、エルウィンは巧みにその様子を俺からか隠すんだよなー。俺たち親友なのに……。あー……ルルカの友だち紹介してくれないかなー……。


 そのルルカが、錬金術同好会に入ったらしい。


 うーん、俺が彼女たちと付き合うと、より国からの、俺への警戒が増えそうなんだよなー。今、行動に移すか保留中。


 あー、とこで、フレットとリスレイ、そしてルルカの関係が複雑らしい。

 なんていうの? ふたりは命知らずなの? 


 エルウィンは部分的に常識ないよ? 大丈夫? 俺と付き合う?


 終わり  本文は、ここからでございます。 ⇓ ⇓ ⇓

 太陽がいつまでも長く、居座るようになった頃、王国の王座の間にて、ある男が王とまみえる事となる。


「アッシュ、久しいのう、会わぬ間に男ぶりが上がったように見える」


 髭を(たくわ)えた王が、目の前の知的な若き貴族へと、そう声を掛けた。


「勿体ないお言葉です」

「そう、畏まらずとも良い、この度、帰国して貰ったのは他でもない。ある噂について調べて欲しいのだ」


「噂とは……?」

「『回復薬や、それに準ずる物に携わる者たちが、暴利を貪っている』という噂だ。」


 王は、論ずる価値もないと言いたげに、口に出す。


 ヘイゼルの血を引くアッシュ自身も、似たような言葉を投げ掛けられた事は、一度や二度ではなかった。


 しかしまさか、それが理由で、故郷の国へと呼び戻されたわけではないだろう。


「その噂をどうするべきと、お考えなのでしょうか?」


「つい先日、このルーフェンの街の個人の錬金術師の工房が、酔っぱらいに襲われた。噂によって、燻っていた炎が、引火するにもあまりにも早すぎと、ノアが言うのだ」


「公爵様がですか?」

「そうだ。あやつはこの機に乗じて、新鋭貴族を一人、見せしめに断頭台へと上げたいらしい。で、やるのか? やらないのか?」


「全ては、王のご意志のままに」

「うむ、では下がれ」


 王は満足げに、彼に退場を促した。


 ルルカの兄は立ち上がり、出入り口へ早足で退場していく。


 扉の内側の騎士が扉を開けた時、扉の横に待機していた青年が、アッシュの後へと続いていく。


 そして案内の騎士に続きふたたび、待機室へと通される。


「馬車の用意を致します。しばしこちらでお待ちください」

 そう、騎士は言うと、部屋から出て言った。


「もう駄目だ……妹が結婚してしまう……」


 豪華絢爛の部屋の中で、今まで知的で黒髪の、整った顔の男性が、まるで牢屋に入れられた様な悲観的な声をあげる。


「えっ……あぁ……現段階の調査では、エルウィンは噂通りの方なので、そこは笑顔で祝福をお願いします。彼は公爵家の生まれで、フレットとは違うのですから……いくらアッシュ様が功績を上げても、婚約の約束はなされてしまうでしょう。才色兼備ですからね……、彼は」


 騎士が出ていった途端、気落ちしたように背を丸め、ソファへと座り込むアッシュに向かって、助手のトニーは、やや呆れたように彼に声を掛けた。


「だが、ノア公爵の『この機に乗じて』は、浮いた噂の無かったエルウィンに、初孫ができるって喜びようだぞ!? たぶん。妹が嫌がっても、無理やりって事も!? あぁ……」


「エルウィンに初孫って……」

 トニーは呆れた様に、妹が絡まなければ、優秀な若き貴族をいたわしそうに見る。


 彼の全ての活動の源が、リスレイとの婚約を自分が断らなければ、妹の不幸は始まらなかった。という事であり、それはウイークポイントで、あり得た。


「アッシュ様、今回の依頼、大部分がわかっている前提で話されていましたが、今回の噂の影を色濃く形づくったのは、やはり男爵であるペイジ家の輸入産業の安価の薬品と薬品素材なのは確実です。


 主流となってまいりました薬草の輸入、もしくは現地で人件費を安価でおさめた、加工済みの薬品素材。


 新薬を作り出す苦労を知らない値段……。


 国内のどこの錬金術師の工房でも、同じ価格では太刀打ちする事はできません。


 しかし魔物はどこにでも現れます。輸送の際の警護、損害費用の面を考えると……あまり黒字は見込めないと、推測するのですが……」


「わかっている。相手を潰したいのは、ノア家の当主だけではないらしいって事だな。新鋭貴族の大物風情が、大海を知らずして意気がるから、頭を叩かれる事になる。引き続き調査してくれ、何なら情報ギルドを使ってもいい。今度は怪しい男たちに、逃げられてくれるなよ」


「わかりました……」

「はぁー、久しぶりに妹に会える……」


 彼はやっと、爽快な笑顔を見せた。


「会えませんよ。表向きは、まだ海外にいるのですから、さーこのフード付きローブを、頭からかぶり、高名な錬金術師のふりでもしてください。よく、ご存知でしょう?」


 そう言ってトニーは、アッシュへとそれを投げて寄越すのだった。


 ◇◇◇ 


 引き出しが多く付けられた机の前で、フレットは座っていた。


 机の前には、初夏の季節に行われた剣術の団体戦と個人戦の結果を、途中まで清書したものが置いてある。試合結果の記録を付けるなら、試合の合間にフレットも時間にとらわれず、書く事ができるだろうと、任されたものだった。


 けれど、彼のペンが進まないのは、ある噂について気になったからだ。

 その噂は、冒険者ギルドの酒場を発端に広がり始め、彼の父親の治めるアルセスの領地でも、知られる噂となってしまった。


 一般市民には、手が届かないとまではいかないまでも、高価である薬が国の保護まで受けているという噂だった。


 それを聞いて「何を、馬鹿な……」

 そう言うと、家に長年出入りしている男がこう言った。


「だが、フレット様、国産の薬が高いと言う噂も、錬金術師たちが国に守られている噂も、どれも証拠まで出て、全てが本当の事でした。錬金術師や、大規模な農地を御持ちの貴族様もいらっしゃいますが、そこで働く者の多くはただの民です。作っている物の違いだけで、分け隔てられる事に黙って耐える事などはできません」


 彼は耐えきれないという様に、口に出した。

 彼らの多くは学校へ行かず、教会で学ぶ者も多い。


 教会は生きるすべは教えてくれるが、学べば酷な事も多くあり、平等を守る事も難しい世の中で、全ての薬剤を他国だよりにする事が、どれだけ危険か、国の医学の分野を守る重要性の意味も知らなかったのだ。


 そして彼は違和感と、危険を察知する。


 彼らが知らない事実を、誰が言って回っているのか?


 国の医学の衰退を、誰が望んでいるのだろうか?


 その何者かの策略が、大規模な薬草農家を束ねるノア家、そしてエルウィンをも巻き込む事になるかも知れない。


 しかし問題はその何者かの狙いが、我が国の錬金術なら……いつか、ルルカを守る兄不在の時を狙い、その魔の手は彼女に伸びるかもしない。


 そう考えると……。


 だが、それは日和見な考えだろう。


 この噂を流しそうな人物に、彼は心当たりがあった。


 噂の発端が男爵であるドスカレッド ペイジ、将来の義理の父なら……災いの全てが、フレットとリスレイの婚約を発端として起こりうる、不吉な未来をフレットは次々と連想する。


 どの未来の道も先がなく。大口を開けアルセル家もろとも、光の届かない暗闇へ引きずり込まれ終わる。 そう思えてくるのだった……。


 続く


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