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子どもの頃から好きなあなたと  作者: もち雪
第二章 早苗月のはじめまして

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15/24

15:変わり者の同好会員たち 2/2

「入会届は、紅茶を飲んだからにしましょうか。この紅茶の葉も、ここで作れた物で、年々、学生が作ったと思えない味わいに近づいているわよ」


「はい、いただきます」

「部長、ルルカ様にビーカーは……、(部長も一応、ヘイゼル領の工房を、就職希望先の一つに入れているんでしょう?)」


 二年の彼は、ルルカがいるからだろう。セロッティーへの言葉を、途中から小声で囁いた。


「うーん、ルルカ、自己紹介がまだだったわね。こっちが栽培を担当してる二年のフロート」

「「宜しくお願いします」」


「この子が一年のミルティー、美容関係について研究するらしいわ」

「よろしくー」

「宜しくお願いします」


「そして私が、王国錬金術師に受からなきゃ世界がおかしい。セロッティー! 改めて、宜しく。だから、フロート、私は王国錬金術師にしかなる気がないのよ?」


「落ちたらどうするんですか?」

「仮説として考えるなら、個人の工房を借りようかしら? って思っているわ。 うちの実家は太いからね」


「あの……(わたくし)はエルウィン様の代理で、品物を届けに来た三年のルルカです。えっと……改めて宜しくお願いします」


 自己紹介も終わり、やっとルルカは落ち着く事ができた。

 ビーカーを手に取り、その深みのあるオレンジに近い、紅茶の色を眺めた。


「紅茶が無くなれば遠慮せずに、どうぞ」

 ミルティーは、少しぶっきらぼうな言い方をしたが、笑う彼女は、猫のような魅力がある。


「ありがとうございます。ミルティー様」

「すみません。化粧品のモデルとかきょ……」


「ミルティー、それについてはまだ、早いわ」

「はぁーい……」 


 セロッティー部長は静かな口調で、彼女の言葉を遮った。


 そんな二人の様子を眺めているルルカの前に、フロートによって、寮で貸し出されるのティーカップが運ばれてくる。


 そして彼は、私の対面の席に座って居た、セロッティーの後ろへと立った。


 ――えっ? 


 驚くルルカは、先ほどまでフロートが座っていた、セロッティーの隣りの席と、今のフロートを交互で見比べる。


 耳にかけるタイプの眼鏡を付けた二人の、怪しい行動に目を疑う。


「先輩たち、何やってるんですか? 紅茶が冷めますよ」


 ミルティーが目をぱちくりさせながら、ルルカの隣りへと座る。

 そんな彼女の顔を見て、少しだけ肩の力を抜くことができた。


「今から、新しい会員の貴女たちに説明するわ。よく聞いて……くださいね。カサブランカ、この学園では裕福層からの寄付を募っているの。うちの同好会では、国で最大の農園を持つ、ノア家、つまり……エルウィンの実家から種なり、肥料なりを寄付されているわ」


「あー、それなのにここに居る、ルルカ先輩から、先輩たちの悪行をバレる事を恐れていると……そういう事ですね!」


「それについてや、フロートの就職活動面で、ノア家のスカウトを期待してる部分があるらしいわ! 追加としてお茶会を忙しいと言って、絶対断るエルウィンを呼び寄せ、私たちのこの研究意欲を伝えるチャンスをものにしたいのよ!」


 セロッティーはこぶしを握り、熱弁を振るうその後ろで、「うっ、僕の事は今はいいんで」「言い方! 言い方あるでしょう?」と、フロートは慌てふためいていた。


「はぁーなるほどー。さすが部長! ……悪だくみでも、それは素晴らしい方の悪だくみです! 発色の為に染料になる植物の種や、苗も欲しいですよねー」


 錬金術師同好会のメンバーはちょっとした、お祭り状態だった。


「いえ、いえ、(わたくし)は届けものを頼まれただけで、そんな……」

「そうなのー? 良かったー」


 冷静にルルカは、部長の話を否定しようとする。

 それに対し、セロッティーはやや平坦な口調でそう答えた。


「って事は無いのよ! そう思っているのはルルカ、貴方だけよ。()()、浮いた噂の一つも無かった公爵令息の彼が、親戚でもない女生徒を使い寄越せば、口が重い人物でもない限りどうしても、人の噂に登ってしまう。そうね……私は秘密は話さないわ。交渉材料にするけど」


「部長、無闇に、ノア家を敵に回そうとするのは辞めて下さい……、それに危険な薬品を扱う錬金術師に不適切と、ルルカ様から報告されたら、夢も希望もなくなりますよ!?」


「それにあたしと、ホログラスさんは、話しちゃう系なので秘密になりせんよ?」


「……就職した時、企業秘密は漏らさないようにね」

「もちろんです。夢のためには我慢します」


 ルルカは下に置いていた、エルウィンから預かった袋を持ちテーブルをまわると、部長たちの前にさしだす。


「これ、預かってきた。苗と種です」


「今の少しの話しだけで、僕らは無害で、影響は無いって判断されちゃいましたね……」


 フロートはセロッティーに呟くと、彼女の前へと進み出てくる。


「ルルカ様、うちの部長がすみません……。活動自体はちゃんとしてるので、入会についてはお決めになってないなら、どうぞよろしくお願いします。では、こちらの中身を確認させてください」


 フロートは頭を下げ、袋を受け取ると隣の机で、袋の中を確認していく。

 種の袋を机の上に出し、種の種類がわかるように置いて、控えの紙で確認しているようだ。


「はい。確かに。ありがとうございます。こちら、受け取りのお礼書は、前年度の活動報告書ともに、後日、エルウィン様にお届けということで大丈夫ですか?」


「それについては聞いていないので、必要であれば(わたくし)が取りにまいります。そして同好会の入会届についてはまだしばらく考えたいので……」


「そうね。この年に彼と関わる事になるなら、やることは多そうね。でも……急ぎなさい! 急がないと、人数不足で、うちが解散する事になるわよ!」


「はぁ……」

「部長、強引な勧誘は……。ルルカ様、お気になさらないでくださいね」


 今、いる人数が三人、ホログラスは剣術部の彼だろうか?

 人数確保の為にいたとしても、同好会の存続の為には後、一名足りなかった。


 幽霊部員については、今どれくらいの頻度で通えば認められるのか……。


 それにしてもクレセントオーブ、きっとフロート様が育てているのだろうけど、彼の腕を腐らせてしまうのはとても勿体ないと思える。


「でも、やはり……すぐには難しい事のなので……」


「なら、たまには遊びいらっしゃい、お茶を飲むだけでもいいわ」

「それなら、お邪魔させてください」


「ふふふ、来るなら学校と寮の間の門が、開いた朝早い時間がオススメよ!」

「部長……」


 フロートは、セロッティーを咎める様に言葉を漏らす。


「何かあるんですか?」

「それは秘密、欲しいものは自分の足で、掴みにいかなくっちゃね!」


「そうですね……。目が覚めるのは早いので、今度来てみます」


 ルルカは静かに、セロッティーに言葉を返したのだった。


 続く



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