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子どもの頃から好きなあなたと  作者: もち雪
花残月のさよなら

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10/11

10:アルセス家の兄弟と、ルルカの悪役令嬢物語

 初めてフレットと会ったのは7歳の頃。


 その頃は、両親がライミュー病に深く関わる前で、その頃は母は社交界へ学ばせるべくお茶会などを多く行い、そして親しい友人とのお茶会にはルルカを連れて出向いていた。


 ルルカと同じ歳のフレットと、彼の弟のガロットは、彼らのお母様に連れられて、その日、ヘイゼルの屋敷へとやって来ていた。


 天気は快晴で、庭の花壇には、気の早い日輪草が一つ、二つ咲いている。


 その花々を眺められるようにと、白いパラソルの付いた白く丸い机が置かれていた。


 その前に座る、白いサマードレスを着て、黒髪を結い上げ、小さな白のリボンを付けたルルカと、金の髪、可愛らしい容姿で、天使の様なアルセス家の兄弟が座っている。


 兄は既にルーフェンの初等科へ寄宿生なかなか帰ってこず、日々、家庭教師に勉強を教わりと話すか、時々やってくる使用人の子どもたちと話すくらいだった彼女はとても気まずい雰囲気の中に飲まれていた。


 母親同士の話も、フレットの母親が話をリードしていたので――。


「女の子は聞き分けが良くていいわねぇー。うちのガロットなんて、フレットの別邸、暮らしさようしてたら、『お兄ちゃんと一緒がいい!?』癇癪と言っていいほど泣いて、大変だったのよ……」


「まぁ……そうなんですか? けれど、カサブランカも初等科であれば、一人暮らしの経験がないフレット様でも大丈夫ですわよ。伝統がありますから」


 そんな話をしながら母とアルセス婦人は、私たちの様子を優しげな眼差しで見ていた。


 けれど、彼らのお母様は、小さな私が彼らの持つ剣に興味をしめしたり、兄弟より「このケーキが食べたい!」と主張したりすると――。


「あらら」と、いう事はあった。

 何気ない、意味がないかもしれない『あらら』という言葉だったが、繰り返されると、言われる前に自然と手や行動が止まってしまう。


 けれど――。


「ねぇー、ふたりとも一緒に遊ぼうよ! 紅茶だけ飲むだなんて暇だよー」

「うるさいガロット、なんで俺たちの所へ来るんだ。お母様たちの所へ行っていろよ」


「ガロット様、美味しいお菓子があるのよ。持ってくる?」

「いらない」


 ルルカより2つ下のガロットは、すぐに座って居るだけに飽きる。

 その様子を見ても、二人のお母様は『あらら』という事は無かった。


 しかし、ガロットに対し、フレットは少しイライラする事はままあった。


 そして彼女は彼女で、何故、この兄弟のお守りをしなければならないの?

 そう心の中で思っていた。


 いつしか『あらら』は? と二人のお母様の眺めていたら、ルルカに対するそれが少しだけ減るようになった。


 だから、その日も『あらら』に注意しながら、遊んでいた。


「ルルカ、君の家、何か遊ぶものはないの? ボールと長い紐とかそういうもの」

「あるわ。でも……、『今日はお上品にしていましょうね』と、お母様に全て隠されてしまったわ」


「へー、ボールがあるんだ。お上品なお嬢様かと思ってたけど、ちょっといいかも?」

「ちょっといいかも? って何よ? 失礼ね」


 そこでガロットが立ち上がり、アルセル夫人のもとへ歩いて行った。

 そこで彼女は少し、ふぅ……と、ため息をつく。


「ハハハ」


 笑い声に気づくと、フレットが声を出して笑っていた。

 ――本当に失礼な兄弟だわ。


 でも、気付けば、彼の笑い声につられて一緒に笑っていた。

 だから、友だちになれるかも? 心の中でそう思った。


 ◇◇


 それから3日後、お母様とお父様が揃っている夕食時。


「ルルカ、以前あったフレット君と、婚約する事について考えてくれないか?」

「えっ!? 嫌よ」


「えっ……あぁ……」

「そうよね……」

 両親は顔を見合わせる。


「まだ前提だから、ゆっくり考えてくれないか?」

「そうよ。貴女の将来の事だからしっかり考えて決めてね」


 そう優しくお父様と、お母様に言われた。

 けれど、ふたりの顔はあまり楽し気でなく、もしかして二人を困らせてしまったかもしれない……。

 そう、その場だけ思ったりもした。


 しかし……。

 それから2年後、フレットはルルカの婚約者ではなく、いいなずけというものになっていた。


 それについては縁を結ぶ事について、家庭教師の先生に習っていたし、誕生日などのお祝い事にはふたりの家を行き来していたので、本で見る王子様やお姫様を思い描いてうっとりとした事もあった。


 ◇◇


 そしてリスレイと私が出会う日がやって来た。

 フレットの屋敷へお茶会に招かれ行くと、ガロットの婚約者候補だと言うリスレイがいた。


 可愛らしい茶色の髪の小さな女の子は、海外で作られたというドレスと着て、お姫様が使う様なバックを持っていた。


「「ごきげんよ」」

「「こんにちは」」

 つまらなそうなアルセスの姉弟とカーテシーをする女の子二人。


「ねぇーリスレイなんかない?」

「じゃー子ども部屋へ、行きましょう」

「「わぁーい」」


 はしゃぐ(わたくし)に、リスレイは言った。


「ごめんね。あなたの事知らないから」

「リスレイ、ルルカも入れてやれよ」


 見つめ合うふたりの前で、フレットは言ってくれた。

 その時は、ガロットはもう慣れ親しんだ屋敷だったんだろう。


 子どもたちについていたメイドに追われながら、もう向かってしまった後だった。


「ちっ、じゃあ母さんにガロットの事、任されれいるから」


 フレットも彼の家のメイドの後を追う。

 そのすぐ後を、リスレイの小さな背中が追っていた。

 そして私はその場に残される。


 そんな事が、リスレイの家では何度も続いた。

 フレットの家では――。


(わたくし)、フレット様の隣りに座るわ」


 そう、リスレイが言った時、みんな微笑ましそうに見ていた。

 もちろん「あらあら」も無かった。


「まぁ、そうなのリスレイ」

 長い髪をおろした、リスレイのお母様の声。


「まぁ、子どものいう事ですものね」

「えっ、ええ……」


 アルセス夫人と母の会話。

 だから、その後、うちは二つの家に侮られる事となってしまう。


 けれど、うちのバックにはやはり、去年の冬に亡くなった貴族の重鎮だったジョフ ハルバード様が居たお陰で、見せかけ上は平和に暮らせていけていた。


 それから何かある事に、フレットに、リスレイがついて来たとしても。


 ◇◇◇◇


 そして離れた領地に住む。


 フレットとルルカ、カサブランカという学園生活の中で距離が近くなったのはリスレイの居ない一年生の時だけ。


 リスレイが入学して来た途端に、私たちの中は仲良し仮初めの三人家族に戻ってしまった。


 ――その関係に疲れたな……と、思っていたけど、悲しかったのだろうか? 彼に抗議はしたけれど彼の前で、リスレイの様に泣く事はなかった。


 幼馴染である事や、将来の家族である事を理由に、望む答えはえられなかった。そして……フレットの頼む仕事に打ち込み出していたような気がする。


 思えば、ふたりの別れは、誰もが納得する結果だったのかもしれない。


 ◇◇◇


 そしてフレットが、他の女性と婚約してしまっても、ルルカの毎日は相変わらずだった。


 あれから一週間ほど経ち、彼の事をフレット様と呼び、挨拶程度の会話を交わ程度には、彼女の心は落ち着いていた。


 剣術部の部室へ向かう事も、フレットから頼みを頼まれる事も今はもうない。


 フレットが、今はリスレイと婚約者同士となり、校内を仲良さげに歩いていても、その場に自分がいないので気が楽で、一人で歩く楽しみも知っていたから、楽しくもあった。


 けれど、彼女との婚約が成立しなかった事は、誰の目にも明らかで、時折、ルルカを見つけ、生徒が何かを囁き合う事はあった。


 今日の様にゆっくり起きた朝は、いつもより生徒の数が多いから特にかもしれない。


 彼女は歩いている煉瓦(れんが)の道を見た。


 この道で、噂される内容はきっと変わらないだろう。

 2年の男爵令嬢の真実の愛が、3年の伯爵令嬢に勝ったと言う感じかしら?


 なら、それで完結、逆に吹っ切れて、良かったかもしれない。


 続く


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