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これがEランクの実力だ!

 歩いて五時間くらいのところにギルドはある。歩いて余裕な程の時間はないからジャックと一緒に走って一時間くらいかかった。


 私の村と比べてちょいデカい村の中心にギルドはあった。いや別にデカい教会みたいなのを想像してたわけじゃないけど、村の中にあっても違和感ないよねっていう木造一色のデザイン。


 扉の前に横一列に並んだところでジャックは私の両肩に手を置いた。


「いいか? 絶対何もするなよ? いいときも悪いときも、富めるときも貧しきときも、病めるときも健やかなるときも何もするなよ? そして死が二人をわかっても動くかどうか迷うくらい何もするな。わかったか?」


 珍しく本当に心配そうなジャックは、もう結婚でもするのかという台詞を詠唱し出した。


「うっす」

「ダメだこりゃ」


 ジャックは口を歪めながら扉を開けてくれた。地味に優しいというか礼儀正しいんだよなこの人。そしてヤバっという顔をしてから私の前に割り込んできた。レディーファーストの後に、私から入ったら絡まれる確率が上がることに気づいたんだと思う。ジャックが急に扉から手を離すもんだから扉が私に向かってくる。私がそれを慌てて払ったら、扉がどこが飛んでいったよ。


「こいつの登録を頼む」


 大きな声でジャックが言った。


 ジャックは冷静だった。受付からはまだ離れているが届くように出した声だろう。連れがいきなり扉を破壊するというハプニング、しかもただ外れるとかならまだしも、吹っ飛んでいった。普通の人間では対応できないが、ジャックは扉が吹っ飛んだことをなかったことにすることで誤魔化す判断に入った。この一瞬で? これがEランク冒険者の実力か!


「あの、とび」


 受付の女性、(なんか儚げで綺麗な人だなぁ、後で絶対この人とお茶しよ、もう決めた)が扉の件に触れようとした瞬間


「こいつのぉ! 登録をぉ! 頼む!」


 さっきより大きい声だ。あの山の中で意思疎通をとる時の声量を出している。この一瞬で? これがEランク冒険者の実力だ!


 そしてジャックが肩で風を切り、颯爽と受付前までむかい、私は小鴨よろしくその後ろをテトテトと着いていく。


「昨日十二になったんでな、資格は十分あるだろ?」

「はい、承知しました。ではここにお名前と出身をお願いします。後ほど魔力計測がありますのでしばらくお待ちください」

「はい、私はお姉さんのお名前が知りたいです」

「おい、話が散らかる。やめろ!」

「ジャックさん、次の依頼達成の時、扉の修理代引いときますね」


 サービス業の鏡スマイルのまま、ジャックを脅すお姉さんも、また良きかな。


 テーブルに座ろうとしたら、ジャックに止められ、私のことを肩車した。絡まれないだろうけど、何かジャックの大切なものを奪っている気がする。ほら、引いてんじゃん、一仕事終わってお酒あおってる冒険者の方々がざわついてんじゃん。


「でもあれだね、本当にそこそこ知られてる冒険者なんだねジャック」


 好奇の目の中に、明らかに羨望だったり嫉妬だったりした感情が混じっている。


「俺が唯一のEランクだからな、このギルドで」

「ふーん」

「ジャック、そのイカれ嬢ちゃんはお前の娘か?」


 唐突に会話に入ってきたのはジャックよりもデカい男だった。


「久しぶりだなジェラルド。コイツは違う。村のやつだよ」

「ジャック、知り合い?」

「まぁな、ジェラルドはこのギルドの所属じゃねぇ、都のギルド所属だランクはDだ」

「家二年ね」

「お前はランクと金を直結させすぎなんだよ」

「じゃあジェラルドは強いの?」

「あぁ、俺は強いよ。少なくともジャックと同じくらいはある。ジャックも冒険者一本に絞ってたらDランクにはなってるから、ランク程の差はない」

「ふーん」

「ジャック、もしかしてこのお嬢ちゃんに何も教えてない?」

「いや、こいつ信じようとしねぇんだよ。でも受付のサリーの言うことだったら聞く気がする」


 あのお姉さんはサリーさんというらしい。覚えておこう。


「セレンさーん」


 サリーさんの綺麗な声が、この低い声だらけのギルドの中に響く。


「はいはい、あなたのセレンですよ」

「ではこれから本登録を始めていきます。まずは魔力からです。こちらへどうぞ」


 サリーさんからのエグいスルーに傷つきながらも受付の中に入って奥の方の扉を開けると、机があって、その上にフワフワの、いやフワッフワの座布団のようなものがあって、その上にガラス玉が乗っている。


「ではこの魔力計に手を置いてください。殆どの人はひから……」

「目が、目が」


 置いた瞬間、閃光弾でも窓から投げられたのかと思う程の光が部屋を覆った。なんとか手を伸ばし、サリーさんの目を光から守ることには成功したが私の目は何も守れなかった。真っ白が私の眼前に広がっていく。もっと考えてくれ! 思ったよ? だってあんまりにも簡素なんだもん、たまにスーパーマーケットとかに来てる胡散臭い占い師と同じスタイルだなぁって思ってた。こんな光るんだったらなんかさ、サングラスみたいなんとかさ、カーテンである程度覆っておくとかさ、できたじゃん。


「セレンさん、あなた魔力持ちですよ! 私始めて見ました! 魔力持ちの人」

「それは、目が、良かった、目が、です」


 サリーさんのテンションは高いが、私はまだ床でゴロゴロしてる。


「取り敢えずCランクは確定ですね」

「酒池肉林?」

「Cランクです」

「あの、本当に申し訳ないんですけど、ランクの説明をお願いしても良いですか?」


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