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化け物が生まれた日

「ジャック、今日のノルマ終わったよー」


 木こり衆に入ってから二年が経過した。私も村を支える木こりとして、ジャックとツートップ張らせてもらってます。


「わかった。今日は上がって良いぞ。お前に渡したいものもあるしな」

「なになに?」

「後でわかる。今日はお前の成人記念日なんだ。ノルマやらないでも誰も怒んねえよ、ってかお前の年齢でこんな働いてるやついしな」

「フォアザ村の意識が強いもんで」


 村の一員として認められるためには、常にできることをしなければならない。自分一人の力なんて限られている。助けて、助けられてをできるようになってからそんな考えは強くなったと思う。


「良いことなんだろうけど、何か怖えんだよな……」

「じゃあ今日は上がるね。お疲れー」

「おう、ゆっくりしろよ」


 家に帰ると、お母さんの美味しいご飯が待っている。今日は私の十二歳の誕生日ということで猟師衆から鹿肉をもらったらしい。新鮮で、生でも食べれると言っていたが、焼いとくわねーとお母さんは猟師のことを信じていなかった。


 塩のみの単純な味付けだが、二年前とは一味違う。ローストだ。私は母にローストを授けた。ギリギリを攻める火入れ。中心温度、寝かせるタイミング。これをやると肉がいい感じになる。正直なところ、あんまりステーキと区別ついてないけど!


 フォークが簡単に沈み込む。開いてみると素晴らしい赤みが顔を覗かせ、薄っすら獣の、刺激臭のようなものがしている。スパイスは高い。なかなか買えるものではないのだ。お金を稼げるようになったら買ってみてもいいかもしれない。ただ、美味しいことに間違いはない。本当に野生なのかと思うほどに私の舌に馴染み、ほんの少しの圧力でほろっと噛み切れる。


「おいしいー!」


 この世界に来てからナンバーワンかもしれない。


「あなたがまだ成人前なことに少し驚いていたけど、それも今日で辞めなきゃね。今や木こり衆のジャックに肩を並べてるんでしょ? あんたのこと、ジャックも褒めてたよ、あんたの切り方は人間じゃないって」


 失礼なやつだ。私にゴリラと名前つけて村に広めたのまだ許してないからな!


 どこがゴリラなんじゃいとも思ったが、木を一撃で切る乙女は果たしてゴリラ程度で収まってくれる器なのかわからない。私をパッと見ても普通の女の子という感想しか出てこないだろう。目に見えて腕が太いとかはないし。結局よくわからない。冒険者ギルドに行ったら判明するのだろうか? 


 そんなこんなで、お母さんとの一家団欒、あなたが小さい頃はこうだったああだっただの、日本だったらまだまだちびっ子扱いの十二歳に対してバリバリに思い出話、急に日本じゃないことを思いだす。


 ノックが数回されて開けると、ジャックが居て、手にはとんでもない大きさの斧を担いでいた。私の身体よりデカいんだけど。いや多分余裕で振れるんだろうけどさ。ほら、これがお前の斧だとでも言わんばかりだ。剣とか持ちたいけど? 


「ほら、これが前の斧だ」


 言った。


「顔に出てるから言っておくが、お前は天才的な斧使いだ。剣だの盾だの弓だの持ちたそうにしてるが、絶対斧だ」

「わかった。ありがとう」


 剣っていくらで買えるんだろ、私、お金って三シードくらいしか持ってないけど買えるかな?


「わかった。お前絶対剣買うだろ。まぁいい、明日で気付くだろ」


 ジャックには何でもお見通しらしい。私の演技を見抜くなんて大したものだ。


「明日着いてきてくれんの?」

「冒険者ギルドなんて奇人変人の巣窟なんだぞ、十二歳の女なんて速攻で言い寄られる。まぁお前は負けないだろうけどよ」


 半年くらい経った時、ジャックはなんか急に優しくなった気がする。確か、斧を思いっきり振ったらソニックブームが起こって、破裂音が山に響いた後くらいからだったと思う。お母さんはジャックはあんたのこと娘みたいに思ってるのよ、とか言ってたけど多分違う。私を監視してると思う。だって、一年くらいして衝撃波で木を切れるようになったあたりからは教えるときにずっと十メートルくらい離れてたし……。


「えっ? 私が人を、その、やりかねないと思ってる? 私じゃなくて相手側の心配してない?」

「してない」

「えっ?」


 この斧軽いな、片手で振れそう。ちょっと振ってみよっ! 


 ズバン


 いけないいけない、夜なのにこんな大きい音出しちゃった。


「あぁ、心配してる。だってお前ガンギまってんのわかってる? そんで冒険者ってのは常識がねぇ。最悪のシナジーが生まれるに決まってんだろうがよ!」

「大丈夫だよ、ジャックがEなんでしょ? だったらみんな別にこれくらいの音出せるよ」

「出せねぇよ。凡人が頑張っんてもEはなれねぇ。何回言ったら理解してくれんだ」

「こんなに細いよ?」


 二年前とさほど変わらない二の腕、今だってポンポンお手玉にできるくらい細い。


「だからヤベェんだ! あれだあれ、暗殺者みたいなもんだ。何もしてないですよーって顔して裏に実力隠すだろ? 同じだ」

「わかったわかった。何もしないよ。絡まれても殴るだけにしとくよ」

「多分死ぬぞ? 郊外の冒険者って多分普通に死ぬぞ? お前のパンチ、多分身体が吹っ飛ぶ前に抉るだろ。多分俺も完全復活はしないぞ? 一生残る傷になるぞ?」

「わかった、デコピンくらいにしとく」

「多分死ぬぞ? デコにお前の指がめり込むか、お前だったらそのまま頭蓋切れる気がする」

「そっか……」


 私はどうやら二年の間に化け物になってしまったようです。自覚あったけど……。


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