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一戦交えていただけないだろうか

「嬢ちゃんな、これだけは覚えておいて欲しい。俺とジャックは冒険者の中でも上位1パーセントの実力だ。Eランク以上だからね。サリーに聞いただろ? ある程度のランクの話は。で、嬢ちゃんはそんな俺らより確実に強い。底が見えない。俺は何度かBランク冒険者を見たことがあるが、人間とは思えなかった。それでも、何か得体はわかるんだ。戦いようっていうのかな、どれだけ耐えれるか。でも、嬢ちゃんは本当にわからないんだ。最早怖さすら感じるよ」

「私は朝に硬いパンを硬いなって思いながら食べてますよ?」

「それはまぁ、相当硬いパンなんだろう。俺とかの歯だったらもっていかれるような」

「お母さんもガシガシ食べてますよ」

「じゃあお母様も相当やるんじゃないだろうか」

「ジェラルド、そいつの言い回しには付き合わない方がいい。頭がおかしくなる」

「いや、お前は単純すぎる。嬢ちゃんを見習うべきだ」

「そうだそうだ、可愛くなれ! ジャック!」

「うるせえ」

 ジャックの拳骨をヒラっとかわす。ジャックも避けられるのが前提だったから、体制を崩すことはなかった。

「なぁ、今の見えたか?」

「見えるわけねぇだろ」

「ジャックさんの腕が消えたと思ったら、あのめちゃくちゃ可愛い女の子も消えて、平然と笑ってるぞ」

「あの女の子の方も気になってきた」

 会話がある程度終わったのに、ここから帰ろうとしない私を見て何か思うところがあったのか、ジャックは

「帰るぞ」

 と言って私を持ち上げて肩車をしようとした。

「サリーさんとお茶のお約束がありまして、夜まで待っててと言われてるのです」

 伸ばしてきた腕を払うと、ジャックは納得した顔をしてまた座った。

「待っててやるよ、お前を放っておいたら面倒なことになるのはわかりきってるし、記念すべきお前の夢の一つ目も見ておきたいしな」

「依頼でも行ってきたら?」

「サリーがなんも言わねえってことは、Eランクご指名のやつは来てねぇんだよ」

「じゃあ、誰でも受けられるやつ受けたら」

「仕事ってのは分け合うものなんだ。できるやつにやらせてたら、いつかそいつがいなくなった時に全てが終わる。木こりの仕事もそうだろ? 俺とお前で全部やれば、一時間で仕事は終わるがやらない。他のやつらにも仕事を与えるべきなんだ」

「そういうものか」

「そういうもんだ」

 確かに私の前世でもそうだった。エースと呼ばれる人はいたけれど、その人だけに任せきることはなくなるべく満遍なく仕事が振られていた。

「そう言えばさ、第二次巨人侵攻って何?」

「聞いちまったか、俺がEランクになるきっかけのクエストを」

 そこからは長々と、長々と語られる。夜が近くなり、ギルドに居た冒険者たちが一人、また一人と背中をこちらに向けて扉を開けていく。ジェラルドさんも「またね」と言って帰ってしまった。

 ザックリ、本当にザックリと話すと、巨人は空に居て、(なんかその巨人がどんな奴らかとか強さに着いて結構語られたけどまぁ端折る。なんか五メートルの人型モンスターのことを巨人というらしいで、強さはジャックが一対一でなら負けないくらい)そんでそいつらはそこからロープみたいな木を一人一人垂らして攻めてくる。で、それを切り落としまくったことによって侵攻の足止め、木が無くなったために一つの木に巨人が密集し、戦略的有利を得るのに一役買ったということらしい。あとは我らがお貴族様が殲滅、ヤッタネ。

 ジャックの話が終わったころ、扉がない入り口から静かに一人、とんでもない威圧感を持った黒い鎧が入ってきた。傷一つないその鎧を、装飾品の類だとは思えなかったのは、鎧があまりも自然に動いていたからだ。鉄同士があたる高い音は聞こえず、安定した重心が実感させる百戦錬磨。間違いなくこの人がBランク冒険者だろう。真っ直ぐに受付へと向かい、サリーさんから何か説明を受けている。

 お仕事するサリーさん可愛いな。指さされたな、あー、来た来た、Bランク冒険者さんが来ましたよと。

 相対すると、威圧感という言葉が現実にあったことを教えられた気分になる。真っ直ぐとこちらを見据え、鎧の奥にある目は見えなくてもわかるほどに私を映している。ってあれ? この人女の人じゃない? なんというか雰囲気わかる。でもまぁ、私もね、誰でも彼でも尻尾を振るような女じゃないですよ。

「君がセレンか?」

 低めの声はクールな印象で、所作の一つ一つに私との生まれの違いを見せつけてくる。

「いかにもセレンです。ごきげんよう」

 私の精一杯の礼儀に、ジャックが緩んだ口元を抑えた。コンニャロー。後で覚えてろよー。

「一戦交えていただけないだろうか」

 鎧の中の目はどこか私に期待をしているような、そんな視線の種類に変化している。

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