眠る猫は夢をみる
生涯を共にすると約束した友達がいた。
名は犬飼双葉。
犬飼家の次女で他の兄妹と比べると、物静かであまり人間味の薄い女性だった。
学校と呼ばれる場所に嫌々ながら通い、時には顔を埋めながら親に反抗していた。
彼女は大きくなってから、弱音を吐かなくなった。
周りに合わせて成長したなんて言われていたが、ふたりっきりのときはいつだって昔のまま。
顔を埋めて泣いている。
そんな彼女のことが愛しかった。
けど、成長するということは、寿命も近づいていく。
気づけば足は動かないし、目もよく見えない。
「……いやだよぉ。死なないでよぉ」
『んなー(泣かないで)』
「死んじゃやだよぉ……」
ぼやけた視界の先で雨が降る。
冷たいのは嫌だな。
「なんで、なんでいなくなっちゃうの」
『んなー(ここにいるよ)』
「なんで、なんで……」
いつまでも一緒にいたかった。
『んなー(ごめん。いっしょにいれなくて)』
『んなー(ごめん。あそべなくて)』
『んなー(ごめん。きまぐれで)』
雨の後はいつも温かいタオルに包まれる。
あったかい。
なんだか眠くなって……きた。