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CLOVER ROOM

clover room case2

作者: fairy

cloverroom第2弾!

幸せになるために努力をする女の子の話


今回はcloverroomの案内人ナノも出てきます

case2 夢



「鳴海ぃ~

 新聞取ってきてー」


朝から母は元気に叫ぶ

「はぁ~い」


今日は日曜

学校はないが、私田村鳴海(たむらなるみ)18歳、高3の朝は早い

顔を洗って化粧も完璧

いつでも出掛けられる


ガサッ


新聞と郵便物を取って宛先を見て分けながら歩く



すると鳴海宛ての封筒が一通

裏には○☆レコード会社と書いてある



リビングのソファに腰掛け、中を急いで開ける



「鳴海姉ちゃぁん

 それ、なぁに?」


妹の亜海(あみ)は覗き込む


「ふっふっふっ」

「おねえちゃん?」



「やったぁぁぁ!」

ご飯を食べて、弁当を作り、急いで駅に向かう



駅に着くと、金髪の眼鏡をかけた男が待っていた

長谷川祐樹(はせがわゆうき)19歳、フリーター、鳴海の高校の先輩であり、彼氏である


走って祐樹の元へ行く


「お待たせっ祐樹っ

 じゃぁん!見て」


「鳴海、何?」


鳴海はニコニコしながら封筒を渡す



「これって…」

「内緒にしててごめんね(^_^;)

 密かにデモテ送ってたんだ」


中を見た祐樹は体を奮わせ、鳴海に抱きついた


「鳴海、やった!」


「早くスタジオ行ってみんなに知らせなきゃ」



祐樹は地元では結構名が知れた4人組のバンド『OLIVE』のヴォーカル

祐樹が高校生の時に結成され、私はファン1号だったが、祐樹と付き合うようになってから鳴海は『OLIVE』のマネージャー的な事を担当していた


そして、先ほどの封筒は以前デモテープを送った会社の一つから

内容はもちろん、一度会って話をしたい、ライブも見にいきたいという好感的な手紙だった


その日はみんなテンションがあがり、練習どころじゃなく、祐樹の家でパーティになった





翌日

一足早く家をでて、ある人に電話をした


トゥルルルル




「あっもしもし

 田村鳴海です」


「おはょうございます

 手紙は届きましたか?」

「はい、ありがとうございました」

「いえ、私達はきっかけを与えたにすぎません、ここからはあなた方次第ですょ」





「わかってます

 私が一番『OLIVE』を有名にしたいですから

 約束もちゃんと覚えてます」





1週間位前に学校の帰り道スタジオに向かう途中の公園でネックレスを拾った

持ち主はすぐ近くで這いずり回っていた女性のだとすぐにわかった

その女性はお礼にと、少し話をすることになった





「あなたには人一倍強い思いがありますね」



『OLIVE』の事だとすぐにわかった

でもなぜそんな事を…


「私の仕事は幸せ案内人です」

それが彼女との出会いであり、私の一歩でもあった



彼女通称ナノはcloverroomという会社の事務局員で、幸せを本当に願う人を案内する仕事らしい


まぁ…うさん臭い

もちろんいつもなら気にせず行くだろうか、『OLIVE』がなかなかデビューできない事が気になっていた鳴海はお金はかからないというので話をしてしまった


ナノは『OLIVE』のデビューとなるきっかけを与えるだけだが、本当に実力があればすぐにでもデビューできるだろうと言う

きっかけさえあれば、デビューできるのは鳴海にはわかっていた


「でも一つだけ約束してください」


ナノは真剣に話す


「デビューが決まったら彼と別れなさい」


「…何で…ですか?」

「二兎を追うものは一兎も得ずという言葉があるように何の代償もなしに幸せは二つとして得ることはできないんです」


彼女はちゃんと考えがあって話をしているとわかったがすぐには返事ができなかった


ナノは鳴海に紙を渡し

「連絡待ってます」


と言い残し、去っていった


祐樹と別れるのかいつくるかわからないデビューの話を永遠と待つのか、考えながらスタジオに向かっていた



「鳴海、今日遅かったな」

「ごめんね、ハラ先に捕まってさぁ

 はい、差し入れ」

「ハラ先に捕まると長いもんなぁ、気をつけろよ」祐樹達は学校の話に花を咲かせながら鳴海が持ってきたたこ焼を食べながら休憩に入っていた


15分程経って練習が再開された

祐樹は鳴海が好きな曲を歌ってくれた

鳴海は涙が出そうになった

『OLIVE』をデビューさせたい、でも祐樹と別れるのは辛い…




ふと机の上の雑誌が目に入る

鳴海は一つの光が見えた気がした


トイレと言ってスタジオを出て、ナノに連絡をする



「私の願い、叶えてください」



その日から秘密のプロジェクトが始まったんだ




学校の授業中

ブブブ…

携帯のバイブが鳴る


祐樹からのメールだった



『明日のライブに○☆レコードの人来ることになった\(≧∇≦)/さっきリハで気になるとこあって学校終わったら速攻来れる?』


『了解('◇')ゞ 』


返信

鳴海は『OLIVE』の飲食の準備だけでなく照明調整やチケットの販売などの仕事もリーダーのドラム担当あっくんとやっていた


明日のライブは気合いを入れてのぞまないと

「鳴海~明日のライブ楽しみにしてるよ~」

「ありがとぉ」


学校の生徒は皆『OLIVE』を応援してくれてファンクラブもある



ライブ当日

私は学校を休んで、朝から本番の準備をしていた


今日○☆レコード会社の人が来る

気に入ってもらえれば『OLIVE』の曲は日本中に響き渡る

私の夢が叶う


と同時に祐樹との別れも待っている

そう思うといてもたってもいられなくて忙しなく動くしかなかった




♪君に出会って

    僕は変わった

 愛する喜び

   僕は初めて知る



この曲は『sea』

鳴海あてに書かれた曲

『sea』には『彼女』のsheと『鳴海』の海という意味が入ってる

この曲は一番ラストに流れる

私は楽屋のTVの前で泣きながら祐樹に出会った頃を思いだしていた



初めて夜遊びをした高1の夏休み

1人で弾き語りをする人に目がいった

それが祐樹


周りには人はいない

でも鳴海には心地のいい歌声で聞き入ってしまった

嬉しかったのか祐樹から話かけてきた


普段はバンドで歌っていることや好きなバンドの話とか…

夏休み中何度か聞きにいっていた

祐樹が同じ高校の先輩だと知ったのは夏休み明けの始業式


正直驚いた

1人で歌っている時の祐樹は眼鏡をかけてラフな格好

結構真面目クンなイメージだったから


でも高校生の祐樹はギャル男系のグループの1人で眼鏡はしていなかった

そのギャップに驚いて笑いそうになった

その時にはもう完全に祐樹にハマっていたんだろう



バンドのメンバーが変わって新しく『OLIVE』と名付けられた

バンドの手伝いをするようになってから鳴海と祐樹が付き合うのは時間の問題だった



練習日じゃないのに祐樹に呼び出され『sea』を歌ってくれた


「これ鳴海の歌

 俺毎日鳴海の事しか考えてなくてさぁ

 一曲出来ちゃったよ」



家族以外に幸せを初めてもらえた気がした



ガチャ


「おつかれぇ」


精一杯の笑顔で言う



4人が入ってきて少し経ってからスーツをきた男の人がやってきた


「私、○☆レコード会社の谷村と申します」


あっくんに名刺を渡して鳴海をチラッと見た


「大切な話をしたいのでメンバー以外の方は席を外して戴けますか?」


「鳴海は『OLIVE』のメンバーです」

祐樹が立ち上がった



「何を担当されてるんですか?

 なぜ舞台にいなかったのです?」

胸にグサッときた


「祐樹、いいよ

 楽器もできないただの女子高生ですから」

谷村を睨む


「いや、でも…」

「大丈夫」


会釈をして出ていった


扉に寄り掛かり

『絶対あきらめない』




その日の夜、祐樹から電話があった



黙って帰ったこと、打ち上げに来なかったことを少し怒っていた



「で、好印象だったの?」


レコード会社の人のことを聞くと、今までのがなかったかのように嬉しそうに話だした


やけに気に入ってもらえたらしく、異例の早さで

デビューは一週間後になったらしい





電話を切ると

涙かあふれでた


早すぎ…


ナノと話をし、決心した時に嫌ってほど泣いたはずなのに…




止まらない



「大丈夫…大丈夫…」



言い聞かせながら気持ちを落ち着かせた





そしてあっという間にデビュー前日



その間はほとんど会えなかった

学校でメールを打つ


『お疲れ様☆いよいよ明日だね(^∪^*)

今夜少し会えない?

あの公園で待ってるょ』



『オッケィ(*^▽゜)』



夜、初めてデートした公園で鳴海は待っていた


少し経って

祐樹がやってきた


「明日デビューイベントあるんでしょ?」


他愛もない話をして気持ち落ち着かせようと思った



「そうそう

 渋谷のセンター街で……………」

嬉しそうに祐樹は話す

鳴海も笑顔で聞く

でもやっぱり目が潤んでくるのを感じる








「そしたらさぁ」

「祐樹」

「ん?」





「別れよう」









「…なに?」

「祐樹、私と別れて」

「嫌だ…なんで?」



「ごめん…」

「いゃ、理由は?」

「ごめん」



祐樹の涙を初めて見た



泣かないで



ずっと応援してるから



一生の別れじゃない




また会いにくるから




それまで



それまで

『OLIVE』を




守って





鳴海は思わず祐樹にキスをした



「えっ鳴海?」



「祐樹、目つむって」

祐樹は何かを悟ったのか静かに目をつむる



「明日ちゃんと見てるから

 また……

 会いに行くから」



そう言い残し鳴海は静かにその場から消えた



祐樹は1人公園で座っていた



どういう意味だろうか


何で泣きそうに話すの


鳴海がわからない



でも

また会いに行くって言った鳴海を信じようと思い、祐樹は立ち上がって明日に向かって歩きだした







『OLIVE』デビューライブイベントが始まる



テレビをジャックし、盛大に行われた



その日は鳴海の卒業式でもあった



「今日終わったら長谷川先輩達見に行くしょ?」

「当たり前だよ!楽しみだねぇ」


周りの皆は騒いでいた

祐樹の事だから合わせてこの日にお願いしたんだろうなとか思ったりした



散々泣いたはずなのに


涙がこぼれる


『sea』を胸のなかで歌いながら卒業式に紛れて泣いた





ライブ会場では

祐樹がMCをしていた


「ありがとうございました

 俺達『OLIVE』は色んな人に支えられ、ここまでくる事ができました…」



祐樹は鳴海へのメッセージも用意していたが、胸のなかに閉まった


「中学や高校、大学とか卒業した皆はこれから未来に向かって歩き出す

 俺達『OLIVE』もこれから新しい一歩を踏み出します」




「卒業おめでとう~」





鳴海は卒業式が終わり、空港のテレビでその様子を見ていた






デビューした『OLIVE』はすぐに人気になり、初登場オリコン1位となった









それから、3年の月日が経つ



『OLIVE』はCDも売れ、ライブなども満員となるほど人気は続いていた




祐樹はその間

女優さんや同じ歌手の子と付き合ったりもしていた

しかし長くは続かず、毎日『sea』を歌いながら過ごしていた



ある日

事務所に『OLIVE』が呼び出される




祐樹は新曲の打ち合わせかなぁ…とか思いながら軽い気持ちで車を走らせていた




「おはょうございまぁす」


「祐樹君、おはよう

 髪黒くしたの?」


「うん、結構いっしょ?」



事務所の子と話しながら谷村さんの元へ向かう


もう皆来てなんだか楽しそうに話していた

そのなかに見覚えのある人が目に入る



チャリン




祐樹は思わず車の鍵を落としてしまう




メンバーの真ん中にいたスーツ姿の女性は祐樹に気付いて笑顔を見せた




「祐樹!」




「鳴……海?」



鳴海はイギリスの大学に進学して今年帰ってきた


もちろんちゃんとした『OLIVE』のマネージャーとなるために

以前雑誌で芸能人のマネージャー特集をやっていて、決心したらしい



そして、今日新入社員として入社し、谷村も覚えていたのか『OLIVE』のマネージャーに抜擢された

というのはのちに聞かされた話




何でいるのとか今までどうしてたのとかそんな事よりも先に体が動く



周りなんか目に入らず鳴海を抱き締め、キスをする




「また会いにきたよ」


「待ちくたびれた

 毎日考えすぎて鳴海の曲沢山できちゃったよ」





end


cloverroomというのはちゃんと支部があって実在し、そこには案内人たるものがいるみたいです



死者や死に近い者が願うと担当の支部に行けて、生きてる人間はそれぞれ近くの支部に足が向くって感じでしょう



第3弾は小さな思いです

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