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第5話 トロールどもの引率!

 ダンジョンの次のエリアは、複雑に入り組んだ迷路だった。

 壁には無数の矢が刺さった跡、足元には罠。

 どう見ても安全ではない。


「これ……進めるのか?」


 アルトが険しい顔を見せるが、ぜってーなんも考えてねえ。


「壁を壊して一直線に進めばいいだろ!」


 そんな脳筋の発想が役に立った試しはねえ。


 リリーはスマホを操作して叫ぶ。


「ラッキーな方向は……あれ、バッテリーが切れた!」

「お前、充電のことも考えとけよ!」


 その瞬間、迷路の奥で壁が振動し始めた。


「動く壁……!? どうすんだよこれ!」


 壁がゆっくりと動き始め、ルートが次々と変わる。

 迷路の構造自体が刻一刻と変化しているのだ。

 アルトが焦る中、リリーが呟いた。


「これ、ラッキーアイテムって言ってましたよね……あぁ、画面がうつんない!」

「バッテリー切れつっただろ! あぁもう! とにかく慎重に行くしかない!」


 俺が声を張るも、全員が勝手な行動を取り始める。


 アルトは、ショートカットできると勘違いし進むが、足元のスイッチを踏む音が響く。

 次の瞬間、天井から無数の矢が降り注ぐ。


「うわっ!? いや、これは計算通りだ!」


 計算崩壊してんだろ!


 ジークは、自信満々に魔法を放つ。


「愚かな罠め……我が魔法で吹き飛ばしてやる!」


 爆発の衝撃で隣の仕掛けが作動し、毒ガスが発生。


「ぐえっ……く、苦しい! まさか我の読みが外れた!?」


 基本外れっぱなしだよ!


 リリーはスマホ無しの影響で方向感覚を失い、足元の床が崩れる。


「わあああ! スマホがああああ!」


 お前が落ちたことは気にしないのか!?


 バルクは壁を拳で殴りつける。

 見事に崩れたが、その瓦礫が彼の頭上に降り注ぐ。


「ぐっ、筋肉が……ちょっと動けない……」


 筋肉の信頼度低すぎるだろ!


「全員、何やってんだ!」


 俺はトロールどもの悲鳴を聞きながら、全速力で駆け回った。

 それぞれを救出して並んで正座させる。


「お前ら、もう勝手に動くな!」


 彼らは珍しく黙り込んだ。


「……ここからは俺の指示に従え!」


 俺は一つずつ罠を確認しながら、安全なルートを進んだ。


「アルト、罠がありそうな場所に矢を放て。外したらお前の夕飯抜きな」

「……ち、ちゃんとやるよ!」


「リリー、俺が指示する時だけヒールを頼む」

「はい! あ、でもスマホ拾った後でいいですか?」

「さっっっさと拾え!」


「ジーク、魔法は必要な時だけ使え。それ以外は動くな」

「む……我を封じるとは」

「魔法にもタイミングがあるんだよ!」


「バルクは盾を持って前を進め。敵が出たらそいつらを止めろ」

「了解だ! 筋肉を信じろ!」

「だから盾持てって!」


 迷路を抜けた俺たちはようやく一息ついた。

 全員がボロボロだが、何とか生き延びたのは奇跡かもしれない。


「リーダーの指示通りにやったら、結構上手くいったな」


 アルトが不承不承ながら認め、リリーも頷く。


「カイリさん、やっぱりリーダーですね!」

「我が魔法も、リーダーの指示があってこそかもな」

「筋肉がぱぅわーで活きていた!」


 俺は少しだけ肩の荷が下りた気がした。

 俺が指示を出せば、うまくいくことはわかった。


 だが、その安心感も長続きしなかった。


「よーし、充電も完了!」


 リリーはいつのまにかモバイルバッテリーをスマホに接続していた。


「お前、戦闘中にそれを使っとけよ! いや使うなって! あれどっちだ!?」


 一方、バルクは壁を見上げながら拳を鳴らしている。


「次の壁も壊して進もう!」

「壊すな! お前の筋肉が原因で迷路に埋もれるぞ!」


「次の罠は、我が魔法で封じてみせる……今度はもっと派手に」

「派手にする必要ねえから! いい加減に加減を覚えろ! 何度目だ!」


 アルトは離れでぼやく。


「もう放っておこうぜ。どうせ俺が一番まともだしな」

「さっきも言ってたな!? 俺の次にまともかもな!?」


 俺は頭を抱えながら、次のエリアに向かって歩き出した。


「……やっぱりお前ら全員ポンコツだよ!」


 地獄は、まだまだ続く――。

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