ウィルフレド その4
私が出しているものは食べ物だと何度か訴えを繰り返すと、少しずつ食べてくれるようになった。
やはり食べ物だと分かりにくかったようだ。
まだ味や食感に慣れていないのか、全部は食べ切れていない。
これを捨ててしまうと、その部分は可食部ではないと思われてしまうかもしれない。
食べずに戻ってきたものはちゃんと食べてみせる。
……もしかすると私の分、と言うつもりなのだろうか。
私はもうほとんど食事の必要はないから、全部食べてもらって構わないのだが……。
だが、もしそういう気遣いで残してくれているのだとすれば、この子は優しい子なのだろう。
警戒しているはずの私に対して気遣いができるのは心根が優しい証拠だ。
なら、私もそれに応えねばなるまい。
次からは二皿用意しよう。
しっかりと食べて、どんどん元気になってもらわないといけない。
そう思っていた矢先、夜うなされて泣いていた。
やはり心細いのだろう。
見知らぬ土地に一人、しかも魔族にとってここは敵地だ。
そんなところで人族である私と一緒では、休まる気も休まらないか。
しかし、彼女を一人にするわけにはいかない。
優しい子ではあるが、魔族である以上野放しにするのは危険だ。
既に保護してしまっている私の責任は重く、何か問題を起こさせるわけにはいかない。
だから、この子には私に慣れてもらうしかない。
泣いている子の傍らに腰を下ろし、その頭を撫でる。
子育ての経験はないが、親が子にこうしている光景は見たことがある。
しばらく頭を撫でていたらいつの間にか嗚咽は消え、静かな寝息に変わっていた。