エステル その3
食べません。
どんなにお腹が空いても、お腹が鳴っても食べません。
この程度の飢餓で音を上げたりしません。
魔物の行動のせいで狩りや採取が上手くいかず、一月以上何も食べられないなんてよくある事です。
目の前に出された食べ物がどんなに美味しそうでも、毒が入っているかもしれない物を食べるわけにはいきません。
食べ物を無駄にするなと言われそうですが、それは私が言いたいです。
せっかくの食べ物に毒を混ぜるなんて、なんということをするんですか!?
たとえ実りの大地に住んでるからって、その実りを粗末にするなんて。
私がいつまでも食べないので、おじいさんは回収していきます。
いつもはどこかに持っていってしまいました、今日は違いました。
「これは食べ物だよ」
…………。
分かってますよッ!?
毒が入ってないなら食べられるんです。
そう思っていると、おじいさんが一口食べます。
私の方をじっと見ている目からは、美味しいのかとうかもよく分かりません。
よく噛んで、飲み込みました。
…………あれ?
ということは、毒は入ってないのですか?
いえ、食べるときに毒の部分は除けているかもしれません。
きっとそうです。
え……、返して……くれるんですか?
えっと………何か入れた様子はないし……。
ちょ、ちょっとだけなら……食べても、大丈夫……ですよね?