ウィルフレド その3
――何も食べない。
食べ物で釣ろうとして、はや十日が過ぎた。
用意した食べ物には一切手を付けない。
一日中腹を鳴らしているのに。
魔族の生命力なのだろうか。
これだけの時間飲まず食わずでも生きている。
回復している様子はないが、さらに弱った様子もない。
一度外に出た一件以降、逃げ出そうとはしないし、私に極端に怯えることもなくなったが、やはり私の身振り手振りには警戒するように目で追ってくる。
しかし、このままでは一向に元気にならないだろう。
もしかすると、これが食べ物という認識がないのかもしれない。
この子が暮らしてきた環境では、こんな物を食べることがなかった可能性がある。
…………。
まぁ、確かにこれもしっかりとした食事とは言い難い。
気軽に人里に近付けない身では、森の野草や木の実、果実くらいしか採れない。
狩りは得意ではないし、何より危険だ。
食べ物がこれくらいしかない以上、これを食べてもらうしかない。
幸い、味は悪くはないのだ。
なるべくエグ味の少ない野草と、酸味の強い木の実に、熟れた果実。
こちらが少し食べて、食べられるものだと訴えかけよう。