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無題

両手にすっぽり入るほどの小包が届く

年に2回。

子どもたちから届く小包の中身は力石だ。家内安全を願われて作られたもだ。その他に効果が込められていない力石が一つ。

力石に効果を乗せる加工は自分でもできるので、何かあったときに効果を載せて自衛をするようにという意味と生活困窮した場合に売って生活費にという2つの意味が含まれている。

一応子供として親を見る義理は果たしているという意思表示だろう。

妻も自分も世間一般的な人のように馬車馬の如く生活のために仕事をしたくないと常日頃思っていて。住居が有って食べていける程度の収入があればいいと思っていたが、自分の親族が大手企業を運営しているということで割と注目されることも多くそれもストレスになっていた。

田舎暮らしをしたい

力石をのんびり加工しながら生計を立てたいと常に公言していたこともあり。手切れ金を貰う代わりに優秀な跡取りの長男とスペアの次男。偶然に生まれた長女を親族に売り渡して田舎に引っ越した。

気ままに生活したいと田舎に引っ越したが、よそ者だと言われ。町内会に積極的に関わったが、うまくいかず。何かあれば都会から来たのだから金があるだろう。物があるだろうと金銭を要求されるようになり田舎から逃げ帰った。

逃げ帰ったが、親族に助けを求めることは子どもたちを売り渡したときに禁じられていたので、忙しくなさそうなところに就職して力石を加工して生活していた

移住してすぐに逃げ帰ったので、資産もさほど減ることもなく。移住と言ってもお試し移住の期間内であったためにお咎めもなかった

色々とあり親族に何かあれば親族に頼ろうと思うこともあったが。何かあると牽制が入りそれもできずに暮らしてきた

縁を切るということはこういうことかと実感しながらもそれでも夫婦なんとか寄り添って生活している

 子どもたちから力石が送られてくるようになったのは自分が定年退職した頃だ。

生活困窮を理由によってこられたくないと言う考えだろう

最低ランクであったとしても力石が送られてくるとは思っても見なかったし。家内安全などつけられているものまで送られてくるとは思わなかった。

「あなたどうしたの?」じっと手の中の小包を見ていたら妻に声をかけられたのでなんでもないと答えて家の中に入り今までかけていた家内安全の力石を新しいものとする。一年立つと使い切るように設計されているのか。すでに効果は消えかかっている

設定がうまいのか力石を生成するのがうまいのか。うまい具合になるように力石を見つけてくるのかはわからない。そもそも子どもたちがその手で作っているわけではなく誰かに外注してという可能性だってあるのだ

彼らからしたらすでに縁を切っている状況の親であるが、生活保護を申し出たら国から支援できないのかと連絡が来ることがあるという。そういう連絡すらメンドだと思われているのだろう

それと力石を送られてくるようになってから昔から家で使っていた弁護士の家のものと会計士の家のものが来て生活をチェックすると言うことで家計簿を見せろと来たことがある

何でも長男がしてくれたらしく。無駄だと言って使っていないサービスなどはすべて切り捨てられて生活が楽になった

高齢者の後見人というものが有ってという説明を受けて後見人として彼らを指名して家庭裁判所に申請をして認められた

認知症になってからでは遅いということで、そういうサービスを使う人が多いということらしい

力石を持っているのがどういう経緯かしらないが、知れ渡ってほしい。譲ってという人やそれを利用してという人間も増えてくるので。何かあっても困るし

詐欺に利用されても困るとして月に数回交番の人が生活相談としてよってもらうことになった

何度か力石を譲ってほしいという人がで始めてきたのでホッとしたのは事実である

今後自分が認知症になって妻が生活を送れなくなったら困るし。何かあったときの蓄えとして力石を取っておいているのである

もともとの貯金もあるが、それでも福祉施設に入居したら。何か有って入院したらと考えると一応持っておいたほうが良いものである

われが我がとお金に群がるのが滑稽に見えて子どもたちを捨ててでも距離を置いたものなのに

年を取ってそのありがたみがわかるというのは滑稽である。ありすぎるのはだめであるが

多少。

人に迷惑をかけないで生活をする程度には蓄えは必要なんだと今更思う。

そしてその蓄えを融通してくれているのは捨てた子どもたちと家の人達である

自分たちがどんなに世間知らずで馬鹿だったのかというのがよく分かる

所有するのは最低限で良いと言っていたが、生活するうえでのマンションはローンを組んで所有しているし今まで好き勝手暮らしていた

今更困ったからとすがるのは、大分情けないことなんだろうと窓越しの空を見上げながら思っていると

「あなた。わたしたちは間違っていたのかしら?でも、あの生活は心地よいものでした。好きな人と好きなように過ごせて世間知らずでありましたけど腹のさぐりあいなどせずに生活できて。わたしたちには合わない環境でしたから。子どもたちはどうなんでしょうか?長男のあの子はあっていそうだし次男は長男を支えてくれているでしょうね。偶然に生まれた長女だって幸せに暮らしていると思うわ」そう言って思案げに空を見つめていた私に微笑みかけてくれる妻

「君にも迷惑をかけたね」

「あなたについていくと決めたのは私です。でも、子どもたちはしなくてもいい苦労だと思ったので一族におまかせしたんです」そう微笑んでいる

「それにあなたは知らないと思いますが。私は時折パートのお金を出してあの子達にプレゼントを送っていたんですよ。あの家ではゴミのようなものかもしれなかったけど。私の自己満足であったんですけどね」そう微笑んでいる妻に驚いて

「長女の養子縁組をした家は、一族であの子達に近い。側近として使える家のところに養子に出しましたから、一応交流もあったと思います。今は連盟で贈り物が届くということは一応連絡を取り合う仲であるという証拠でしょ」私の手を取り大丈夫ですよと微笑む妻に

「それなら良いのだけれども」と微笑み返す

幸せだと思うし。

今の幸せを手放したくないと思っている私は人でなしで親として失格なんだろうと思うが

子どもたちに迷惑をかけないように

頂いた力石はギリギリまで使わずに使うときは加工して元手をわからないようにして流通しようと思うっている

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