その一言が
いつも我慢している姉がどうしても大学に通いたいと母に言い募っているのを見る。何度も何度も
母は呆れたように無理だからの一点張りである
確かに私を始めした人間が5人。
しかも、一番下は去年小学校に入学したばかり
切り詰めたいのはわかるが…
お金がかるのにと言って両親が喧嘩していたのも見た。もう少しお酒かタバコを控えるようにとお願いしていたが、父は応じなかったようだ
むしろ節約できないのは母のせいだと言っていたが
母も母でギリギリまでパートをして家事もしてといつ寝ているのだろうというぐらい頑張っているのに
何も考えられていないのは父なのかもしれない
そんなふうに思いながらうなだれている姉を見て、後悔したくないと思った
手のひらにあるのは作るのに成功した力石。姉だけはできると信じてくれて軽い教本のようなものを教えてくれたり何度も読むようだったらと古本屋で探してきてくれたりしていた。わからなかったらわかるようになるまで教本を呼んで調べてと繰り返す私をバカにしなかったのは長姉だけである
学問よりも感覚の私に一定の。力石だけを見れば一級の知識を理解できるようにしてくれた人だ
この恩をいつ返す
今だろう
いつも笑顔で私達下の姉弟のために頑張ってくれている姉。そんな姉がどうしてもと何度も願うことなら。叶える方法が自分の手のひらにあるのだから
ぐっとまだまだ作りが甘く安定していない力石を握りしめて。
姉のために力石を1年で売却できる品質と評価を作り上げる。と
魔力を固めて作る人工魔石。
私は力石とよぶが主流は人工とか言われている。天然ものより安価であるが、使いやすいので道具として生活の便利な商品の原動力として使われる
登録されたら何歳でも納品ができるものである
さっさとファーストと言われる最初の力石出はないのを登録。品質確認をして数個売却。
甘くてもある程度売ることはできる
登録したときになんとも言えない顔をしている職員さんに頭を下げて少々でも金額が付くものを。その足で品質を上げる講座を申し込む
必要経費である
ギルドの方にお願いして渋々確認を取ってもらった給食費とか学費の未払分。やはりというか遅れているのがややあるようで、それでも学を付けさせるためにと習い事をさせてくれようとしていた母には感謝しかない
私と姉たち3人分の学費やら給食費やらを力石の入金講座に変えてもらう手続きもする。それなら払うのは長男である末っ子の分だけで良いはずである。ある程度余裕ができるはずだ。大学の方は受験費用やら入学金やら色々とかかるらしくそれには驚いたが品質を上げて普通に取引が多いレベルにすればいいだけの話である
死ぬ物狂いというか目をそらさずにただただ力石に没頭するようになり周りとも距離ができたが、元々家族ぐるみの付き合いとかで知り合った人や町内会での関わりがある友人だけで。さほどという感じの人も多いので特に特に
お互い高学年にも慣れば色々とあるだろうと何も言わずに力石だけに集中して過ごしてく
母はなにか言いたげな顔をしているが何も言わずに見守ってくれている。それだけでありがたい。品質を上げると同時に優先して卸す契約を商人と結び安定したレートで換金できるようにするために聞き耳を立てた。古い人だと年齢を気にして取引してくれないだろうからと新規で目利きがしっかりしている人を探してどのような評価があるか調査し過ごす。多少評価が悪くても目利きがよく支払いがいい人でも良い
姉が学校を卒業するためだけにお互いに利用できればいい話である
声をかけたのは登り詰めるというものが人よりも強い人。話しかけるのも緊張して喉が渇き震えるが、なんでもないように見せかけつつ商業ギルドで、声を掛ける
提示するのは、力石職人としての登録書としてのドックタグ
足元を見られないように微笑んでお近づきの印にと安定して生成できる力石を。精製したものもありますがと優雅に?余裕があるようにと心がけつつ話をし、相棒だという人と一緒の場で示す。
手のひらで転がしつつ色々と見ている商人が雰囲気変わった。食らいつきそうなギラギラとした目で私を見て
「で、何が目的だ」と
乗ってきたな。
何食わぬ顔をしつつ内申緊張と嫌な汗だでて。上位のモンスターと対峙したような背中が震え上がり本能が逃げろと警鐘を鳴らす
が、気合を入れ恐怖を押さえつけて。ニッコリと微笑みを深めて契約を持ちかける
「この品質のものを月々4個。大体1個20万位で卸させて貰いませんかね~」表情を崩さずにぐっと腹に力を込めて対峙
顔を視線を合わせ真意を探るような。その目をそらさずに見つめ合う。
何時間も見つめ合って居たような感覚にとらわれるの実際は瞬きする間の数秒だろう
面白げに笑い。いいだろうと契約を交わす頃には喉が渇き口の中はカラカラである
定期に卸す商人を決め何度かおろして確定をして。お互いにいい取引だと認識した頃に最後だからと言い募っている姉の話に嘴を挟む
ねえ。そう声を掛けるのに心臓が踊るように鼓動し不自然ではないように
声が上ずったり早口にならないように穏やかにと自分に言い聞かせつつ
「お金がないからお姉ちゃんを学校に行かせられないの?だったらお金は心配ないよ」すっと姉に差し出したのは契約書の写し
「お姉ちゃんが馬鹿にしないで教えてくれたから。生成・精製もできるようになったし売却もできるようになった。学校に聞いたら学費寮費って生活する場所の使用料でこのくらいだった言ってたし。寮?ってところに入る条件には合格してるから。申請したら良いって。あとは入学できたら勉強頑張って決まった成績を落とさなければ大丈夫だって。担任の先生も言ってたし。私に読み書きを教えられるお姉ちゃんは先生に向いてるって。頑張ってみたいって言うならできるはずだって」伝えたいことを姉に伝えやる気を問えば契約書を見つめて震えている。迷惑だった?と問えば首を横に振り
ありがとうって。頑張りたいって泣き出してしまった
我慢することが多い姉が。泣きながら嬉しいって言ってくれたことが嬉しくて緊張が途切れて膝が笑う
お金が工面できて本人もやる気がある。それを聞いてホッとしている母
自分には学がないからと常に言ってできるだけ子どもたちには学問に触れさせて手に職をつけさせようと頑張っていたのだ。ホッとするだろうよ
それから頑張って勉強して大学進学した姉。生活費は返還不要の奨学金と町の返済ありの奨学金で賄うことにしたようで足りなければバイトするらしい。嬉々として準備を進める姉を見てよかったと思っている。お姉ちゃんなんだからといって色々と我慢していたこともあるだろう
大学進学して好きなことをしてみたいという気持ちもあるだろう。
父は金銭面で疑問に思わないみたいだ。母も何も言わないでいる
どのくらい生活費にかかってどのくらい学費がかかるか。自分の給与と妻の給与を合わせて足りるとかそういう話を聞きたくないのだろう。結婚するまでは祖母が。結婚してからは母が金銭的なことを管理している。折に触れて母が話をして協力してもらおうとしているが、父はそれが煩わしく感じるらしく。支払いができるならいいのではないかと思っているそうな。
まあ、父的には中学卒業したら働けばいいじゃないかとちょっと時代遅れなことを考えているらしく母が今は高校を卒業しないと働き口がない。昔みたいに中卒を雇用してくれるところなどない。一度人事の人に聞いてみればいいといっていた。
聞いたのか知らない。祖母も子供を大学に行かせるお金があるなら小遣いをくれといっていたらしいが
「お姉ちゃんは自分で借金をして大学に行くんです。うちからはお金は一切出ていませんし。ほかの子供がいるので教育費でかつかつなんです。おばあちゃんの年金から食費くらい出してもらってもいいんですが?」と言ったら押し黙っていた。嫁の癖にと後で文句を言っていたらしいが・・・・
ほかの姉二人も同じように自分たちで生活費は出すがというパターンで学費は私が持った
姉たちは色々と世話になっているので。下の弟は世話になっているというか率先して人のことを馬鹿にしてくるので、そういうことは一切するつもりもなく
むしろ入学と3年目がかぶるので力石の品質を上げて扱える力石の種類を増やして売却額を上げてと自助努力というか品質改善とかそういうのが忙しかった。常にギルドの講習を受けて家では精製も生成もできないので、放課後や休みの日はほぼギルドにこもって作っている。同時に作れたら・同時に精製できたらいいのにと考えて書類を読みやり方を自分なりに確立していったのもこの時である
頑張って頑張って頑張って。時々休んでまた頑張ってと改良と改善。技術更新などを繰り返していく日々。やっと2歳上の姉が大学を卒業したとほっとしたときには自分は22歳。
ほっと一息つけるような気がした。
あの時、頑張ろうと決めたことは形になっているかどうかわからないが。それでも後悔したくないと思って決めた道である。そのために必要だと思うことはひとつづつやってきたつもりである。だからだろう同時に生成・精製もできるようになったし。日々ちょっとずつの重ね掛けの精製もむらなくできるようになり濁りがないきれいな力石ができるようになった。持ち運びしやすいサイズのまま品質は高く使い勝手がいい力石ができるようになったのも姉のためという心の支えがあったからだ
自分だけならまあいいっかと手放していただろうが・・・・
そう考えると
あの時。あのタイミングで頑張ろうと一念発起して頑張ったから今があるのかもしれない
友達など誰もいないだろうし親しい人といえばギルド関係者とか力石を卸している関係者だけでそれ以上もそれ以外もない狭い成果であるが。それでも私は幸せだと笑っていられるからそれでよかったのだろうと思っている




